自交労働者No.938、2020年4月15日

新型コロナ禍、タクシー・バスの営収激減

労働者の生活保障を

活用できる制度を使って賃金・雇用を守る

運転席と後部席をビニールシートで遮断し営業する東京の仲間
運転席と後部席をビニールシートで遮断し営業する東京の仲間

  新型コロナウイルスの感染が広がり、政府の緊急事態宣言も発出されました。タクシー・バス産業には重大な影響が出ています。
 自交総連の地連・地本からの報告によると、福岡の甘木観光労組ではバスの貸切がすべて予約キャンセルになり、会社の存続が危うくなっています。タクシーもほとんどの地方で売上げが前年比で20〜50%減少する状態になっており、神奈川では3月に入り横浜エリア2割減、横須賀や湘南エリア2〜3割減、箱根エリア4割減となっています。
 歩合給は大幅に下がって、最低賃金に抵触するところも多発しています。(※全タク連の緊急調査結果


緊急の対応

グリーンキャブの休業計画

  この状態を打開するため、会社に計画的な休業を実施させ、休業した労働者には休業手当を支払うことで最低限の賃金補償をさせることができます。休業手当を払った会社には雇用調整助成金が出ます。休ませた車両は、期間限定休車措置を利用して、保険料や車検・点検費用等を抑えられます。タクシーの場合、営業している車両の営収を回復させることにもなります。
 東京地連では3月26日に東京タクシー協会に緊急要請を行い、休業を実施することを申し入れました。事態の緊急性にかんがみ、東京では大手・準大手企業から計画休車を実施する準備をすすめています。
 グリーンキャブ労組(城政利委員長)では、企業内3労組で会社と交渉して休業計画の合意をしました。グリーンキャブは東京だけでなく地方のグループ(横浜、仙台他は別対応)でも実施するとしています。(※新型コロナウイルス緊急情報はこちら)。


 ※新型コロナウイルスによる危機突破、道運法改悪阻止闘争の前進についての闘争方針「2020年春闘 今後のたたかい方」はこちらに掲載されています。

バス・タクシー労働者への支援を

武田良介議員(共)が質問

参議院国土交通委員会

質問する武田参院議員=3月10日、東京・国会議事堂
質問する武田参院議員=3月10日、東京・国会議事堂

  自交総連の3・5中央行動で、国交省・厚労省交渉に同席した日本共産党の武田良介参院議員は、交渉で出された労働者の声もふまえて、3月10日の参議院国土交通委員会で質問に立ち、新型コロナウィルス感染拡大に関して、バス・タクシーの営業が困難になり、労働者の賃金も大幅に下がっているとして、強力な国の支援措置が必要だと迫りました。赤羽国交大臣は、よく検討して、対応を考えていかなければいけない状況であれば適切に対応したい、と答えました。
 武田議員は、雇用調整助成金の要件を緩和したということだが、ただでさえ低い賃金で働いていて、その上歩合率も低下して賃金が下がるタクシー労働者の生活を、その賃金の6割の現行の休業手当で守れると考えているのかと質問。バス・タクシーの労働者に対する抜本的な支援策の強化や、コロナで休業を余儀なくされたような場合に、事業主を通さずに労働者に直接支給させる支援制度も必要ではないかと主張しました。
 赤羽国交大臣は、現行、国土交通省のなかではそうした仕組みはない。そうしたことが必要なのかどうか、よく検討して、対応を考えていかなければいけない状況であれば適切に対応したいと答えました。(さらなる詳細

地域公共交通法案 審議入り

衆議院本会議

高橋千鶴子議員(共)が代表質問

質問する高橋衆院議員=3月24日、東京・国会議事堂(衆議院TVより)
質問する武田参院議員=3月10日、東京・国会議事堂

  自家用有償旅客運送の拡大を含む地域公共交通活性化法等の改定法案は3月24日、衆議院本会議で主旨説明・代表質問が行われ、審議入りしました。衆議院国土交通委員会に付託され4月以降に委員会審議となります。
 代表質問で日本共産党の高橋千鶴子衆院議員は、自家用有償運送の拡大がライドシェア解禁へ道をひらくのではないかと質し、赤羽国土交通大臣は、ライドシェアとは異なる、ライドシェアは認めないとの立場を堅持する、と答えました。
 高橋議員は、路線バス、鉄道が次々廃止され、交通空白地の面積が日本全体の3割にも及んでおり、地域公共交通の充実が求められていると指摘。乗合タクシーやデマンドタクシーなど、地域交通の確保を図ろうとする青森県弘前市のとりくみなどを紹介し、「こうした自治体のとりくみを全国で広げ、国として積極的に支援すべきだ」と主張しました。議員は、補助金の総額が305億円から20年度予算案では204億円に減らされていることを指摘して、国が乗合タクシー・コミュニティーバスなどの赤字の半分を補填することになっている補助金がどうなっているかと質問。赤羽一嘉国土交通大臣は、62億円の要望に対して30億円しか補助していないと答弁であきらかにしました。
 高橋議員は、自治体の要望に応える予算をただちに確保し、抜本拡充をはかるべきだ、として、地域住民の足を守るため、「『移動の権利』を交通基本法に明記し、それに基づく施策に踏み出すべきだ」と主張しました。
 法案が自家用有償旅客運送を拡大しようとしていることについて高橋議員は、事実上のライドシェア解禁につながるのではないか、ライドシェアは認めないという国交省の立場は変わっていないのかと質しました。
 赤羽国交大臣は、自家用有償旅客運送はライドシェアとは異なるとしたうえで、ライドシェアは安全確保の問題があるため認めるわけにはいかないとの考えは変わっていない、法案はライドシェア解禁にはつながらない、と答えました。

最高裁で逆転勝利判決

歩合給から残業代を差し引くのは違法

国際自動車事件

  タクシー労働者の賃金の違法性が争われていた国際自動車の裁判で3月30日、最高裁は3つの裁判について判決を出し(趣旨は3件とも同じ)、同社の賃金支払い方法は、割増賃金が支払われたことにはならないと労働者側勝利の逆転判決を出しました。この賃金支払い方法を適法としていた高裁判決を破棄し、高裁に差し戻しました。  国際自動車の賃金は、売上に対応する歩合を計算基礎として「割増金」を算出し、これを割増賃金(残業代等)として給与に入れるものの、それと同額を歩合給から引き去って給与の合計額を出す仕組みでした。いくら残業しても支給総額は一切変わりません(提訴時、現在は変更されている)。

事件の概要

  この賃金について、労働者が原告となり未払い残業代を支払えという同趣旨の7件の裁判が起こされています。先行した裁判で、15年に労働者側が地裁、高裁で勝訴したものの、17年に最高裁が審理を高裁に差し戻していました。
 差し戻し審で東京高裁は18年、通常の賃金の決め方は労使の合意で自由に決められるから、残業代と同額を歩合給から差し引くのは違法ではないとして、残業代は支払われていることになるという判決を出しました。
 この高裁判決は、名目だけの残業代を合法とするもので、これまで同様の賃金を違法としてきた多くの判決をひっくり返し、労基法の意義をも否定するもので、経営者に悪用される懸念が高まりました。その前後に同趣旨の判決が相次ぎ、前記の差し戻し審の上告を含め3件が今回、最高裁で判断されたものです。

判決の特徴

  今回の最高裁判決は、(残業)手当が時間外労働に対する対価として支払われているかどうかは、手当の名称や算定方法だけでなく、労基法37条の趣旨を踏まえて、賃金体系全体における位置づけにも留意して検討しなければならないと判示。同社の「割増金」について、「揚高(売上)を得るに当たり生ずる割増賃金を経費とみたうえで、その全額をタクシー乗務員に負担させているに等しい」とし、「労基法37条の趣旨に沿うものとはいい難い」としています。
 本件のような、見せかけだけの残業代は、タクシー業界にかなり多くみられるもので、このような賃金を最高裁が明確に否定したことは画期的なことです。今後のタクシーの賃金のあり方にも大きな影響を与えます。残業をすれば割増賃金が支払われ、その分賃金が増えるという、当たり前の、労基法に基づいた適切な残業代の支払いを求めていくたたかいの法的根拠になります。

年収格差は197万円

タク年収、3万6300円増加

タクシー労働者労働条件比較

  19年のタクシー労働者と他産業労働者の労働条件比較がまとまりました。  タクシー労働者の平均年収は307万7100円、前年より3万6300円増えました。産業計男性労働者の年収も3万5200円増えて505万1400円になっていますので、格差は197万4300円で少し縮まりました。
 地方ごとにみると、タクシーで年収400万円台となったのは東京、神奈川、静岡、大阪。300万円台が18府県、200万円台が25道県でした。  この統計は、各地方でサンプルを選んでまとめているものです。サンプル数が少ないため極端な数値の変動が出ることがあります。今回、静岡の年収が111万円、高知も85万円も増えて高額になっていますが、特定のサンプルをとったためだと考えられます。(全国平均は単純平均で出しています。業界紙等で報道される数値と異なります)

→統計表


新加盟のなかま 

(849)東京・丸井自動車労働組合
親睦会ではたたかえない

  東京の滑ロ井自動車で働く仲間が3月10日、丸井自動車労働組合(山盛成人委員長、40人)を結成しました。
 大和グループに属する丸井自動車は、大和自動車の子会社として事業承継していくとの通知を2月28日、親睦会代表の山盛氏に通知。地連個人加盟労組の組合員の山盛氏は、親睦会としての交渉ではたたかえない、と労働組合を立ち上げる必要性を仲間に訴え、結成に至りました。