自交労働者No.950、2021年5月15日

「こんなの入ったら客がいなくなる」

チラシを配布して制度を説明

変動制運賃反対宣伝行動


世論化し導入阻止を

宣伝カーから訴える月村議長(右)=4月12日、東京・新宿駅前
宣伝カーから訴える月村議長(右)=4月12日、東京・新宿駅前

 【東京】東京地連は第5波統一行動(4月12〜15日)を設定し、各ブロックは主要駅で宣伝行動にとりくみ、ダイナミック・プライシング(変動制運賃)反対を訴えました。
 今回、浮上してきた変動制運賃について乗務員用、利用者用の配布チラシをそれぞれ作成し、いかに使い勝手が悪く利用価値がないかを周知して理解をしてもらうことで世論化し、導入を阻止することにつなげていく宣伝行動です。
 宣伝初日の4月12日は、西部ブロックが新宿駅、荻窪駅、吉祥寺駅で4組合15人の参加でとりくみました。
 宣伝カーから訴えた月村議長は、「変動制運賃は、利用者にとっても、乗務員、事業者にもメリットがない。この制度は利用者からの要望で導入しようとするものではなく、内閣府の後押しで国交省で実証実験を行うとしている。また、変動制運賃はウーバーなどが実施している運賃制度であり、ライドシェアにつながる危険性がある」と訴えました。
 配布されたチラシをみた乗務員は「詳細がよくわからないが営収につながるとは思えない」「利用者からのクレームが多くなるのでは」などと不安視する声がありました。
 一方、チラシを受け取った利用者からは、「総体的に運賃が安くなればいいが何とも言えない」「利用したい時に高くなるのはいただけない」などの感想が聞かれました。
 変動制運賃を導入させることは、労働条件改善にはならず、乗務員の疲弊につながるとして自交総連は3月に反対声明を発表しています。

急がないと大変なことに

ダイナミック・プライシングの危険性について説明=5月6日、宮城・仙台駅前
ダイナミック・プライシングの危険性について説明=5月6日、宮城・仙台駅前

 【東北】東北地連は5月6日、仙台駅でダイナミック・プライシング反対の宣伝行動を実施し、地連役員など4人が参加しました。
 チラシを配布しながらダイナミック・プライシングについて話をすると、ほとんどのドライバーは知りませんでした。はじめは「導入してもいいのでは」といっていたドライバーも、説明を聞くなかで、「こんなの入ったら客がいなくなる」「トラブルのもとになるから駄目だ」と、変わっていきました。
 参加した役員は、「急いで宣伝しないと大変なことになる。話せばわかるのだから急がないと」と感想を語っていました。
 新型コロナで大変な中でも、引き続き宣伝を強化します。

使用者側は休息期間の延長に後ろ向き

実態調査結果を報告

改善基準見直し専門委員会

自動車運転者労働時間等専門委員会=4月23日、東京・三田共同会議所
自動車運転者労働時間等専門委員会=4月23日、東京・三田共同会議所

  自動車運転者の労働時間等の改善のための基準(改善基準告示)見直しのための厚労省・労働政策審議会労働条件分科会自動車運転者労働時間等専門委員会(専門委員会)第5回会議が4月23日にひらかれました。自交総連の菊池書記長が傍聴しました。
 専門委員会では、この間実施してきた自動車運転者・事業者に対する労働時間等の実態調査の概要と各国の労働時間規制の調査結果が報告され、改善基準告示見直しの具体的な規制時間について労使双方の委員から意見が出されたうえで、今後、タクシー・バス・トラックそれぞれの作業部会を設置して論議をすすめることが決まりました。
 報告された実態調査では、労働者が適切と思う1日の拘束時間についてハイタク90・7%、バス97・4%と圧倒的多数が13時間以下と答えている一方、事業者はバスで60・0%が13時間超と答えるなど、労使の見方の違いが浮き彫りになりました。
 各国の調査では、EU各国はEU規則で1日の拘束時間13時間、休息期間11時間であること、例外規定は天候や渋滞など不可抗力の場合にのみ設けられていることなどが報告されました。

休息期間11時間を

  審議では、規制時間見直しについて労使の委員が次のとおり意見を述べました。意見のなかで出てくる年間3300時間、時間外労働規制960時間というのは下の(注)参照。
 ハイタク労働者側…拘束時間は年間3300時間以下、休息期間は11時間(日勤)が必要。隔日勤務の休息期間は24時間。車庫待ち・駅待ち特例の概念を明確化、累進歩合禁止を厳格化すべき。休息期間11時間は働き方改革のキモであり必要。
 ハイタク使用者側…自動車運転者に適用される時間外労働960時間というのは反映したいが、乗務員不足が深刻で労働時間を短くして稼げなくなれば人が来なくなる。日勤で拘束1日12時間×24乗務で1か月288時間というのを考えている。繁忙期、曜日による差があるので4か月平均でできないか。隔日勤務は262時間の現状維持、月に4回1時間延長できるようにしてほしい。休息期間11時間にすると1日13時間しか働けず、稼げない。24時間から確実に11時間引かれてしまうと困る。累進歩合は積算歩合に切り替えるようにしている。
 バス労働者側…休息期間11時間、年間拘束時間3300時間以下。休息期間の中抜き特例の廃止、定義の明確化が必要。連続運転時間は2時間に。年960時間の時間外労働規制は過労死ラインだから守る必要がある。
 バス使用者側…具体的数字はまだない。年間3300時間という話があるが、960時間の時間外労働規制には休日労働が入っていない(休日労働を入れたらもっと長くできるという意味)ので、繁忙期の特例、延長特例が必要だ。バスは現行が4週での規制だが1か月単位でもできるように選択制にしてほしい。休息期間の延長は乗客サービスの低下につながるので議論が必要。休息期間の分割特例は残してほしい。

自交総連の要求

自交総連の要求

  自交総連は、今回の議論が始まる以前から上表のとおり要求、意見を提出しています。今後、専門委員会に再度、意見を提出していく予定です。(詳細


注1.
 年間3300時間というのは、労基法の原則である1日8時間(週40時間)労働を1か月平均に換算した173時間に、1か月平均22日勤務で1日1時間の休憩22時間を加え、自動車運転者に適用される時間外労働の上限960時間を足したもの。
   (173時間+22時間)×12か月+960時間=3300時間
    173時間≒40÷7×365÷12=173.8(端数切捨て)
     22時間≒5÷7×365÷12=21.7(端数切上げ)
 年3300時間を12か月で割ると1か月275時間になり、これが今後、1か月の拘束時間を議論する際のひとつの目安になってくる。

注2.
 時間外労働の上限960時間というのは、働き方改革で時間外労働の上限は年720時間となったが、自動車運転者への適用は5年間猶予され、2024年から年間960時間の特例が適用されることになったもの。

変動運賃ではタクシーに乗れない

タクシーへの要望も受け取る

全視協と懇談

全視協と懇談=4月14日、東京・同協議会本部
全視協と懇談=4月14日、東京・同協議会本部

  自交総連は4月14日、全日本視覚障害者協議会(全視協)と同協議会本部で懇談し、タクシーへのダイナミック・プライシング(変動運賃)導入について視覚障がい者の立場からの意見を聞きました。全視協の山城完治代表理事、藤田喜子総務担当理事、楠田房雄理事、自交総連の舞弓義隆副委員長、菊池和彦書記長が参加しました。
 懇談では、自交総連からダイナミック・プライシング導入計画の概要を説明し、全視協の側から、「視覚障がい者はタクシーをよく利用している。乗り換えなしで目的地まで直接行けるので、便利で、頼りにしている」「しかし、運賃の負担はいまでも大きい」という状況が述べられ、それがダイナミック・プライシングで突然運賃が高くなったら、「もうタクシーに乗れなくなる」「運賃がいくらかわからなければ、手持ちのお金で足りるか心配で乗れない」「お金が足りなくなって途中で降りなければならなくなる」などの意見が出され、「現在、自治体が発行している福祉タクシー券はどうなるのか。運賃が高くなった時には、本来の額面よりちょっとしか使えなくなってしまうのではないか」などの心配も出されました。
 また、規制緩和やライドシェアとの関係についての質問が出され、「ライドシェアは、盲導犬をトランクに入れたとか、アメリカで裁判になったのを知っている」「暴行事件が多くて、女性の障がい者は怖くて乗れない」との感想が出されました。
 タクシーを重要な公共交通機関と考え、国が運賃への補助をするべきだという点では意見が一致し、「今すぐでも障がい者の1割引分は国が負担すべきではないか」との意見もあり、鉄道駅のホームドア設置の促進なども含めて、公共交通機関を障がい者にとって安全で利用しやすいものにする必要性を確認しあいました。(意見・要望まとめ

賃金底上げ求める運動を

第92回中央メーデー

(第92回メーデーYouTube映像配信より)
(第92回メーデーYouTube映像配信より)

 全労連などでつくる中央メーデー実行委員会は5月1日、代々木公園野外ステージで第92回中央メーデーを開催。集会の様子はネット配信され、各地のメーデーの様子も中継されました。
 小畑雅子実行委員長は、「世界の最賃15ドルを求める流れに連帯し、賃金底上げを求める運動を強化しよう」と呼びかけ、各団体の代表が決意表明。最後に、第92回メーデー宣言が採択されました。

国民投票法案への警戒表明

5・3憲法集会

(5・3憲法集会YouTube映像配信より)
(5・3憲法集会YouTube映像配信より)

 5・3憲法集会実行委員会は5月3日、国会議事堂正門前で「5・3憲法大行動2021」をひらきました。
 新型コロナウイルスの感染が広がり、昨年と同様、国会正門前での集会がネット配信されました。
 登壇者の多くはコロナ禍の中で命を軽視する菅政権を批判し、国民投票法案の採決を狙う動きについて強く警戒するように訴えました。

5月以降の雇調金特例措置は?

特に業況が厳しい企業は6月末まで特例を継続

 厚生労働省は4月30日に6月末までの雇用調整助成金、休業支援金の特例措置等についての方針を発表しました。
 5、6月については、特に業況が厳しい企業(タクシーはほとんど該当)、営業時間の短縮等に協力する企業については現行の特例を継続するとしました。
 それ以外については特例措置を4月で縮減しており、雇調金の1日1人当たりの上限が1万5000円から1万3500円に、助成率が10/10から9/10になっています。
 「特に業況が厳しい企業」とは、「生産指標が最近3か月の月平均で前(々)年同期比30%以上減少の全国の事業主」となっているので、タクシー・観光バスはほとんどが該当すると思われます。
 また、「緊急事態宣言」「まん延防止等重点措置」が実施された地域の飲食店等の特定業種(タクシーは含まれない)については、5、6月に特例が適用されます(左上参照)。 以上は予定なので、情勢の変化で変わることがあります。厚労省は7月以降については、雇用情勢が大きく悪化しない限り、さらに縮減するとしています。
 コロナ感染が拡大しているのに特例を縮減するのは不当で、世論で縮減措置を止め、コロナが終息するまで特例の継続を求めていく必要があります。

表

(※1)生産指標が最近3か月の月平均で前(々)年同期比30%以上減少の全国の事業主
(※2)@まん延防止等重点措置の対象区域において都道府県知事による要請等を受けて、Aまん延防止等重点措置を実施すべき期間を通じ、B要請等の対象となる施設(要請等対象施設)の全てにおいて、C営業時間の変更、収容率・人数上限の制限、飲食物提供又はカラオケ設備利用の自粛に協力する事業主


1億6300万円の雇調金を不正受給か

 雇調金の特例措置に関して、埼玉県の西武ハイヤーが従業員への休業手当を上回る給付を受けていたというニュースが報じられました(4月19日読売新聞)。
 報道によると、西武ハイヤーの労使協定では、休業手当を「基本給の全額か直近3か月の平均賃金の6割のいずれか高い方」と定めており、これに基づき従業員は休業手当を受け取っていましたが、会社は平均賃金の10割分の雇調金を受給し、その差額1億6300万円を特別利益として処理したとしています。
 国からの支給額よりも従業員が受け取る支給額が低くなっている例は全国で報告されています。会社が制度をよく理解していない場合もありますので、こちらも学習して粘り強く交渉し、不正があれば改善させなければなりません。

依然として苦しい実態

タクシー・貸切バス、4月以降も厳しい見通し

新型コロナウイルスの影響調査(国交省、全タク連)

表

 国交省の新型コロナウイルスの関係業界への影響調査の最新の状況を紹介します。
 タクシーへの影響をみていくと、235の事業者への調査では、3月は前月から若干改善しており、輸送人員は45%減から39%減とやや回復しています。
 貸切バスへの影響では、3月の車両の実働率は20%で、19年同月比で54%も減少しており、非常に厳しい状況が継続しています。4月以降も、厳しい状況が続くと思われます。

タク営業収入は35%減

表

 全タク連が実施した、新型コロナウイルスのタクシー営業収入への影響のサンプル調査の最新結果が発表されました(上表)。
 それによれば、3月の全国のタクシー営業収入は、19年同月比で35%減と2月からやや持ち直しています。
 しかし、ほとんどの地方で雇用調整助成金の特例対象となる30%以上の減少となっており、依然として苦しい実態が窺えます。

4月以降はさらに悪化

 これらの調査の4・5月の見通しは、緊急事態宣言が発令される前に算出されたものです。全国各地で宣言に準じる「まん延防止等重点措置」の適用を検討する動きが相次ぐ中、さらなる悪化が予想されます。

ハイタクの走行キロ当たり事故は増加

19年事業用自動車の交通事故発生状況まとまる

 国土交通省が調べている事業用自動車の重大事故発生状況の2019年度分が公表されました。車両故障を除いた事故件数、乗務員に起因する事故件数とも前年より減少していますが、ハイタクは走行キロが減っているため走行1億キロ当たりの乗務員起因事故は前年より増えています。
 運転者の健康状態に起因する事故は、バス、トラックは前年より減りましたが、ハイタクは増えています。

表
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