自交労働者No.951、2021年6月15日

「運賃認可制度の乱暴な破壊」

7月に本部顧問弁護団としての見解出す

ダイナミック・プライシング導入反対

顧問弁護団会議=5月11日、東京・自交総連会議室
顧問弁護団会議=5月11日、東京・自交総連会議室

 自交総連は5月11日、顧問弁護団会議を開催し、タクシー運賃へのダイナミック・プライシング(変動運賃制度)導入について法律上の問題点などを議論しました。
 話し合いの中で、ダイナミック・プライシングは運賃認可制度の乱暴な破壊であり、旅客への不当な差別にあたると確認。今年の7月をめどに本部顧問弁護団としての見解を取りまとめることを決めました。

2割増・1割引

 ダイナミック・プライシングをめぐっては、国土交通省の秡川(はらいかわ)直也自動車局長が5月28日の定例会見で、運賃の上下変動幅について、「2割増・1割引」を想定していることを明かし、「タクシーは公共交通機関だと法律で位置づけられている。べらぼうに、ものすごい高い値段とか、めちゃめちゃな安売りはどうなのか。適正なレンジ(範囲)と、それを超えるレンジがある。今年度の検証で明らかにしていければ」と述べました。
 一方、ウーバー・ジャパンは、6月1日の報道陣を対象とした都内での勉強会で、国交省が考えているとされる上2割増し、下1割引きでは効果がない、もっと大きな変動幅とするのが望ましいと主張しています。(詳細は来月)

検討進めると答申

 規制改革推進会議は6月1日、書面議決で「規制改革推進に関する答申」を議決し菅総理大臣に提出しました。これを受けて政府は近く「規制改革実施計画」を閣議決定することになります。
 答申では、「タクシーの利便性向上」の項目で、@ソフトメーターの導入、A変動運賃制度の検討、BIT点呼の拡大の3点を記述しました。変動運賃制度(ダイナミック・プライシング)については21年に検討開始、結論を得次第速やかに措置するとしています。

性急にすすめようということではない

武田参議院議員(共)の質問に大臣答弁

武田参議院議員
武田参議院議員

 5月11日、参議院国土交通委員会で、日本共産党の武田良介参議院議員がタクシーのダイナミック・プライシングについて質問しました。
 武田議員は、障がい者の声も紹介してタクシーを使わざるを得ない人が困るのではないか、規制緩和をどんどん進めようとしているのではないかと追及。国交省は利用者からの要望がないことを認め、赤羽(あかば)国土交通大臣は、そんなに性急に事をすすめようということではない、まずは実証実験をやってみようということだと答えました。質疑の要旨は次のとおりです。

利用者からの要望はない

 武田良介参議院議員(日本共産党) ダイナミック・プライシングを利用者の側から導入してほしいという要望があったのか。
 秡川直也国土交通省自動車局長 やってほしいという利用者の声はないが、従来から、もっと安い運賃でとか、もっと利用しやすくならないか、という声が寄せられている。
 武田議員 利用者からの要望はないということだ。事業者にもいろいろな考えがあり、利用者からも要望がないもとで、ダイナミック・プライシングをして需要は増えるのか?
 秡川局長 もう少し安ければ乗るのに、という潜在的な利用者のニーズはあるのではないか。今年度は実証実験を実車で一度やってみるという年になる。そのうえで、効果があるのかないのか、利用者、運転者、事業者の声もふまえて、制度設計をしていきたい。
 武田議員 運賃が上がると、障がい者やお年寄りなど普段からタクシーを使わざるを得ない人が一番困るのではないか。全視協の視覚障がい者の方は、悪天候や災害時に運賃が上がると他に代替手段のないものは大変困ると言っている。
 赤羽一嘉国土交通大臣 そんなに性急に事をすすめようということではないから、いま言われた声が世の中で沸き起こっている認識はない。そんなに心配しなくても、安全を損なわないというのがタクシーの大前提だ。
 国交省の立場は、あくまで公共交通として考えるということだ。公共交通機関が一物一価でないと混乱を起こすという懸念もあるし、東京と地方ではタクシーの状況が全く違う。地方ではタクシーは公共交通そのものだし、ダイナミック・プライシングを神戸(大臣の地元)でやってもどうかな…、という声もある。都心部で他の交通手段もたくさんあるところで、やってもいいかなということで実証実験をすることになった。そんなに性急にご心配いただかなくても、安全を大前提に実証実験をやっていきたいと考えている。
 武田議員 これは導入するのに法改正も必要ないとされている。だから、国会でも議論してきたわけでもないので、これから十分議論をしていかなければならない問題だ。タクシー業界では、コロナで雇調金特例の延長などを求めているが、ダイナミック・プライシングをやって応援してほしいということではない。

コロナ患者を移送する運転者は
医療従事者としワクチン優先接種

 赤羽国土交通大臣は新型コロナの軽症患者を病院に搬送しているタクシーについて、「救急車のような機能を果たしており、運転者を感染リスクからしっかり守る必要がある」と述べ、タクシー運転者に対するワクチンの優先接種を促進する考えを示しました。
 5月18日、公明党竹内譲衆議院議員、19日立憲民主党の城井崇衆議院議員の質問に答えました。
 質疑の中で、赤羽大臣は、「一部自治体でタクシー会社に軽症コロナ患者の病院搬送を委託している例があり、こうした業務に従事する運転者に限り、医療従事者等と位置づけたうえで優先接種を行っていると承知しており、厚生労働省からも確認答弁があった。こうした事例を各自治体に周知することで新型コロナ対応への貢献を後押ししたい」と強調しました。

使用者側は賃金下がると時短に難色

ハイタク作業部会で議論始まる

改善基準見直し専門委員会

ハイヤー・タクシー作業部会、右手奥が両角部会長=5月26日、東京労働委員会会館
ハイヤー・タクシー作業部会、右手奥が両角部会長=5月26日、東京労働委員会会館

 自動車運転者の労働時間等の改善のための基準(改善基準告示)見直しのための厚労省・労働政策審議会労働条件分科会自動車運転者労働時間等専門委員会(専門委員会)は、分野別に検討をすすめるため、5月26日にハイヤー・タクシー作業部会の第1回会合をひらきました。自交総連の菊池書記長が傍聴しました。

表

 作業部会は、公益・労働者・使用者代表各2人の6人で構成され、両角道代慶応大学院教授が部会長に選出されました。左記のスケジュール案が示されました。
 作業部会では、前回の専門委員会での意見を踏まえて、労使双方から意見が述べられました。使用者側は、賃金が下がるとして、休息期間11時間、拘束時間の短縮に難色を示しています。

歩合給で生産性向上は並大抵でない

 労働者側…休息期間は11時間が必要で、これは、生活時間を確保するためにも必要だ。
 年間拘束時間は3300時間、1か月では275時間とすべき。
 使用者側…都市部では日勤で拘束13時間を守っている。休息期間が8時間未満になることはほとんどない。しかし、最大拘束時間に幅がないと給与が確保できない。歩合給で労働時間を短くして生産性を上げるのは並大抵でない。短くすれば2、3割が倒産しかねない。拘束時間内で目一杯やるということでなく、一定の枠があれば意欲のある人は稼げる。月288時間なら12時間拘束で24日乗務できる。それを3か月平均でみれば繁忙期にも対応できる。

運賃改定も考え賃下げなしの時短に

 労働者側…使用者が拘束13時間を守っているというのなら休息期間11時間にできるはず。賃金を歩合給にしているのは使用者だ。過去の改善基準告示の改正の時には運賃改定をしてきた。タクシーの運賃は原価と適正利潤で決まるから、時短分は運賃改定も考えてもらいたい。
 使用者側…タクシーは原価の3/4が人件費で急激な生産性向上は望めない。運賃改定は東京で20年もしていない。簡単でない。拘束時間は柔軟性のある決め方にしてほしい。10分オーバーでも取り締まられるときつい。1年を3分割して平均でみるとかにしてほしい。隔日勤務で拘束21時間を20時間にして試算すると、残業が減って月3万2000円、年32万円減収になる。
 休息期間11時間というのはどこから来ているのか? いま8時間が原則だが、11時間を原則にすると地方で車庫待ちとか、早番と遅番が変わるときとか、守れないところもある。3時間も延ばすのは、ちょっと認められないという話になる。
 労働者側…タクシー労働者は90年代から賃金は低く、一昨年でも月20万円台だ。公共性のある仕事として、適正な賃金と労働時間の削減を主張している。
 車庫待ち等の特例は原則が決まってから議論したらいい。早番・遅番転換するときは間に公休が入るので問題はない。
 使用者側…隔勤でいま20時間の休息期間で疲労回復しない人が24時間で回復するか。20時間で十分ではないか。隔日勤務でも、過労死が少なく、疲労がたまらないのは、休憩時間が自由にとれるからだ。いまの3時間を2時間にしたら休憩が自由にとれなくなるので反対。
 労働者側…隔勤の拘束時間が短いのは、それだけ過酷な勤務だからだ。タクシーの平均年齢が高くなっているのは労働時間の割に賃金が悪いからで、もっと魅力をつくらなければならない。若い人が入ってくるように労働時間も考えていかなければいけない。
 使用者側…我々も労働時間は短い方がいいと思っている。短くしたいが給料が下がってしまう。運賃値上げは難しい。休息期間は現状を維持したい。

表

非常に苦しい実態

4月の営収状況 3月から反転し低下

新型コロナウイルスの影響調査(国交省、全タク連)

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 国交省のコロナ影響調査、全タク連の全国サンプル調査の4月分を紹介します。
 4月の輸送人員は19年比40・8%減となっており、5月は51・6%減、6月は48・0%減と半数近くまで輸送人員が減少する見込みとなっています。

タク営業収入は35%減

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 全タク連が実施した、新型コロナウイルスのタクシー営業収入への影響のサンプル調査の最新結果でも、4月の営収状況は3月から反転し低下しています。
 3月の全国のタクシー営業収入は、19年同月比で65・2%ですが、4月は61・1%となっています。
 引き続き、ほとんどの地方で雇用調整助成金の特例対象となる30%以上の減少となっており、特に京都では4月の営収が41・4%と非常に苦しい実態が窺えます。
 緊急事態宣言は6月20日まで延長されましたが、それが終了した後も感染に警戒が求められる地方ではまん延防止等重点措置が継続すると思われます。
 この先も、6月末までとされている雇調金の特例措置を含めた政府の支援策を求めていく必要があります。

21年全労連わくわく講座 開講中!

コロナ禍の今、スキマ時間を活用して学習しませんか

  全労連初級教育制度である、わくわく講座について紹介します。

 わくわく講座は、主に新しく役員になった人、役員になってほしい人、組合加入3年目の人を主な対象とした教育学習です。
 具体的な学習方法は、まず専用のテキストを使い、1か月で1章の読了をめどに、10か月で全5章を独習します。また、インターネット上の受講生サポートシステムを活用しパソコンやスマホから、テキストの閲覧、任意のチェックテスト、学習促進用のビデオ講座の視聴や質問、意見などを問い合わせることができます。
 基本はこのテキストによる独習ですが、地方組織、職場単位で、「労働学校(スクーリング)」を開催できれば、集団学習による理論的な問題や活動上の悩みなどを直接話し合う場を持つこととなり、学習の理解を深めることができます。
 修了者には、全労連議長名の修了証を交付し、記念品(クオカード1000円)が贈呈されます。
 コロナ禍の今、スキマ時間を活用して学習し、全労連運動への理解を深めるのはいかがでしょうか。

申し込みは本部へ

 申し込みは所属する組合を通じて、地連・地本もしくは地方組織から自交総連本部へお願いします。
 講座内容の詳細については、全労連へお問い合わせください。


 ★キャンペーンとして1単組、地域組織などで10人以上の申し込みで1人の受講料が3000円から2000円になります。
 ★各地方(地域労連含む)で開校式・閉校式・スクーリングなどの集団学習の機会や「お花見」「暑気払い」「クリスマス会」など楽しい企画(「1わくわく」)を学習と組み合わせて実施すると、1わくわくにつき1回限りですが5万円の補助が出ます。