最賃と雇用を守るとりくみを
第44回定期大会
新型コロナ感染症対策として規模を縮小し、ZOOMでのリモート併用開催=10月14日、東京・全労連会館 |
自交総連は10月13〜14日、東京・全労連会館で、「コロナ危機に立ちむかい、白タク合法化阻止、組織の強化拡大」をスローガンに第44回定期大会を開催、21年度運動方針を決定しました。
討論では7地方9人が発言、厳しい労働実態や、コロナ禍での組織拡大のとりくみについて語られました。
城委員長あいさつ(抜粋)
政府の新型コロナへの対応の遅さは、国民に生活破綻や不安を与え、事業者には廃業倒産という事態を引き起こしてきました。
厳しい経済状況の中、雇用調整助成金の助成率が変更され、休業を選択せず通常稼働とする事業者が増えています。そのことで供給過剰となり運収が確保できなくなるのではないかと心配している方も多いと思います。最低賃金の確実な支給と雇用を守らせるとりくみも強化しなければなりません。
一方で、コロナ禍を機に働き方の形態や業態の変革など、新たな規制緩和を求める勢力もいます。雇用を失った人たちに仕事を与えるという名目でライドシェア解禁が繋げられる可能性もあります。
彼らが進めるダイナミック・プライシングは、障がい者や高齢者など本当に利用したい人が必要な時にタクシーを利用できず、利用者利便、公共性を損ない却って客離れが生じることになります。
政治はタクシーの規制緩和など様々な面で影響をおよぼします。総選挙を機に、国民が大きく声をあげることが政治を変えていく力となるでしょう。
新任役員と退任役員
壇上で新任あいさつする城中央執行委員長(一番左) |
大会では役員改選が行われ、新役員を選出しました。任期は1年です。
今期で退任となった4人の役員からのメッセージを紹介します。
沼倉喜久雄中央執行委員・私は95年9月に39才で福島地連初代書記長また自交総連中央執行委員として26年余り全国の仲間と共に活動ができ、それなりに役割を果たせたと思います。感謝とお礼を申し上げます。ありがとうございました。
林悦夫中央執行委員・今期で退任いたします。新型コロナ感染症がタクシー産業に大きな打撃をもたらし、窮地にあるなかで今後の自交総連の運動が産業の維持と労働者の雇用と生活を守ることに繋がります。今後も東京地連にて奮闘していきますのでよろしくお願いします。
森長達也中央執行委員・自交総連の旗が京都から消えないようにと動いたこの6年です。不十分な者が中執に席を置きご迷惑をおかけしました。今後も関西地連京都の一員として活動を続けます。またお目にかかることを心から楽しみにいたしております。
本間昭会計監査・08年、会計監査に就任し、諸先輩方の的確なご指導のおかげで、なんとかやり遂げることができました。心より感謝申し上げます。さて、私が会計監査を務めた12年間は組織減少が続き、監査では執行部が少ない予算の中、運営に知恵を絞っている様子がはっきりとわかりました。大きな力となれないことを歯がゆく感じていましたが、これからは一組合員として組織拡大に力を注いでいきたいと思います。ありがとうございました。
組織力をつけなければ要求実現しない
7地方9人が発言、ZOOMも使用
大会討論
会場と全国の仲間がZOOMでつながる |
組織化には実利実益が重要
吉根さん |
@北海道・吉根清三さん 北海道では長期争議のたたかいを継続中で、東交通労組のオール歩合給の未払いについて、構成を変え第二次訴訟を新たに進めている。昨年12月に個人加盟した札幌の千歳交通の労働者6人は、未払い賃金600万円をかちとり、それをみた他の仲間も自交総連に入りたいと言っている。組織化にはやはり実利実益が重要だ。
また、最賃を支払わせることと最賃を引き上げることが、タクシー労働者の社会的水準の労働条件獲得の何よりの近道だ。力を注いでいく必要がある。
インボイス問題への協力を
秋山さん |
A東京・秋山芳晴さん 23年から開始予定の消費税のインボイス制度問題をぜひ運動方針に入れてほしい。これは明らかな増税だが、大手3社の協同組合はこの問題について一切触れていない。
個人タクシー事業者の中では、どこも守ってくれない、もし自交総連が守ってくれるなら組織はもっと拡大するという意見がある。
この問題をたたき台にして自交総連の組織拡大をやれるチャンスだと思う。全国の仲間へたたかいへの協力をお願いしたい。
組合費の集金方法知りたい
横田さん |
B高知・横田春吉さん 高知でとりくんでいる全労連の最重点計画について報告する。
今現在、県労連と一緒にチームを組んでどのように拡大していくか、共済制度の内容など協議している。
その中で課題に挙がっているのが個人加盟で拡大した場合などの組合費の集金についてだ。とくに福岡地連に聞きたいが、どのような方法で組合費を集めているのか参考までに教えてもらいたい。
新しい大会運営の検討を
松永さん |
C長崎・松永利秋さん 3点お願いがある。(1)本部にもっとYouTubeなどを活用してほしい、(2)ダイナミック・プライシングの実証実験の内容を具体的に説明してほしい、(3)オンラインの定期大会なのだから全国から質問や意見を集めるなど新しいやり方を検討してほしい
コロナはピンチでチャンス
安武さん |
D福岡・安武博子さん 19年から7つの組合・分会ができ、組織が倍化した。これは全労連組織拡大計画で行った宣伝の効果で、今でも続いており、当時配ったチラシをもって相談に来る人がいる。
福岡地連では、個人からの相談を重視した拡大のため相談カードの配布も行っており、大会までに3分会10人の仲間が増え、さらに相談の話が来ている。
コロナはピンチだが組織拡大のチャンスでもある。組織力をつけなければ要求は実現しない。本部には具体的な対策と費用をかけた抜本的な組織拡大策を検討してもらいたい。
公共性ない運賃制度に反対
岸田さん |
E東京・岸田正勝さん コロナ禍で運転者の収入が底をついている中、国交省はダイナミック・プライシングの実証実験を10月から開始した。この制度は安易すぎる考えであり、労働者としても賃金が上がると思えず、利用者に負担を迫る荒業だ。タクシーの公共性を失いかねない運賃制度には断固として反対し、利用者へさらに訴えていきたい。
タク運転者の地位向上を
松下さん |
F静岡・松下靖史さん 静岡もコロナの影響で運転者の営収はいまだかつてなく低くなり、会社の経営も危うい状況が続いている。 10月以降も売り上げは戻らず、低賃金で離職する人もおり、高齢化も加速している。コロナ前に戻れるような政策に期待したい。タクシー運転者の地位向上、優位な条件をかちとるため、すべての運転者が一丸となっていかなければならない。
最賃獲得のために意思統一
杉原さん |
G鹿児島・杉原良二さん 鹿児島も大変厳しい。昨年から感染が拡大し、今年の9月の運転者ひとり当たりの1日の売り上げは1万円を切り、到底生活できる状況ではない。離職者も多数出ている。
そうした中で、鹿児島地連は状況を打破するため意思統一をはかり、九州ブロックの皆さんの力添えを受けながら、会社に対して最賃を払えという要求を出す準備をしている。
コロナ禍でどうやって拡大
松永さん |
H長崎・松永利秋さん (2度目の発言)質問になるが、福岡地連がこのコロナ禍でどのようにしてこれだけ組織拡大できたのかを具体的に聞きたい。
実利実益にこだわり運動を
坪倉さん |
I東京・坪倉秀樹さん 東京地連は秋季年末闘争において、労働条件改善へむけて、たたかった。コロナ禍において、事業者や行政には雇調金と特定休車の延長・活用を求め、東タク協には特別区・武三地区の運賃改定申請を要請した。
また、ダイナミック・プライシング導入阻止のため、月2回の未組織宣伝行動で利用者へ訴えたり、7月には106人参加の宣伝・デモ行動を実施した。
経済状況の悪化により、地連への労働相談の電話はかつてなく増加している。個人加盟労働組合の存在を全都に示し、受け入れる準備づくりが急務だ。
東京地連は仲間との総対話を基本線として実利実益にこだわって運動する決意である。
実利ある運動で組織拡大を
教訓として全国でもとりくんで
執行部答弁
菊池書記長 |
9人から発言がありました。
東京・個タク労組の秋山さんから、消費税のインボイス制度反対を方針に入れてほしいと意見がありました。同制度は個人事業者をつぶしかねない制度です。方針に補強して反対にとりくみます。
北海道の吉根さんが、実利実益がないと組織化は難く、最賃引き上げが重要との発言がありました。鹿児島の杉原さんからも、組織拡大のため最賃を払わせる意思統一をしたと報告がありました。実際に賃金が増える実利ある運動をつよめましょう。
東京の岸田さん、坪倉さんから、ダイナミック・プライシング反対、コロナとのたたかいで力強い発言がありました。東京地連がデモなど全国の先頭に立って奮闘していることが伝わりました。
組織強化拡大について、高知の横田さんが全労連重点計画に登録をめざしている、静岡の松下さんから弱っている組合の機能を取り戻す、との発言がありました。長崎の松永さんからはネット活用で提案があり、福岡で拡大が前進したのはなぜかと質問がありました。
その答えは福岡の安武さんの発言の中にあります。重点計画に登録して宣伝・対話をつよめ、その効果でいまでも相談がたくさんくる。一人で入ってきた人はグループをつくり、組合ができたら、団交して徹底してたたたかい成果を出すと報告されました。大切な教訓として全国でもとりくんでいきたいと思います。
大会宣言
2021年10月14日 自交総連第44回定期大会
自交総連第44回定期大会は、世界中で新型コロナウイルス感染が拡大し、自交労働運動も重大な局面に直面するなか、『コロナ危機に立ちむかい、白タク合法化阻止、組織の強化拡大』をスローガンとする2021年度運動方針を採択した。
自交労働者は、コロナ危機により、大惨事に見舞われている。タクシー・観光バス事業は壊滅的な打撃をうけ、多くの車は停まり、自交労働者の賃金は激減、日々感染の危険に脅かされている。今後も倒産や企業譲渡、失業・雇用不安が深刻化する気配をみせている。菅内閣は有効なコロナ対策を行わず、国民に痛みのみを押しつけ、危機に便乗して新たな規制緩和を進めようとし、国民の支持を失い、政権を投げださざるを得なくなった。首相が変わっても、自公政治を引き継ぐ限り政治は変わらない。
タクシーについては、コロナから生活と雇用を守るたたかいを重点的に行い、白タク合法化とダイナミック・プライシング阻止を掲げて、規制緩和から規制強化への流れをつくり、安心・安全な輸送の確立をめざし奮闘する。
観光バスでも、雇用を守る運動を重視し、公正な取引ルールの確立、運賃ダンピングなどの法違反の是正や過労運転の防止措置、労働条件改善にむけての環境整備などにとりくむ。
自教労働者の健康確保、要求実現、労働条件改善にとりくむ。
衆議院議員総選挙が目前に迫っている。自公政権を打ち破り、労働者の命を守り、経済の健全な発展、平和に貢献する日本をめざすたたかいに立ち上がらなければならない。衆議院選挙で、市民と野党の共闘で政権交代を実現しようではないか。
これ以上の組織の後退はない。いま未組織労働者は、労働組合の力を必要としている。コロナ禍による日常的な相談、労働組合存立の原点である労働者の利益擁護運動を実行して組織の拡大をめざす。われわれに必要なのは数の力である。実増に転じることを絶対不可欠の命題として、この一年をたたかう。全組合員が総力をあげて、組織強化拡大にむけて奮闘することを宣言する。
ライドシェア推進の維新に警戒
総選挙の結果(談話) 書記長 菊池和彦
10月31日投開票の衆議院選挙で、自民は改選時より15議席減らしましたが、3増の公明と合わせて与党の圧倒的多数を維持しました。
野党共闘で臨んだ立憲民主は14減、共産2減、れいわ3増、社民増減なしとなり、維新が4倍近い41議席を獲得しました。
自交総連は、自交労働者の命と生活を守るためには政権交代が必要だと訴えてきましたが、残念な結果となりました。
しかし、野党が共闘した小選挙区では62の選挙区で勝利、接戦に持ち込んだところも多く、共闘の成果が発揮されています。
巨大権力の自公に対抗するためには、野党は共闘をすすめる以外にありません。共闘の意義が有権者に十分に伝わらなかった点を反省したうえで、共闘の深化が必要です。
維新の伸長は危険な兆候です。維新は選挙政策で「ライドシェアや民泊普及の障壁となる規制を撤廃し、シェアリングエコノミーを強力に推進します」としていました。ライドシェア解禁を政府に迫るおそれがあります。自公と合わせ3分の2以上となったことから憲法改悪の動きも出てきそうです。
運動をつよめ、政治にあきらめずに来夏の参議院選挙での巻き返しをめざしましょう。
労働時間を短縮し、賃金増を
使用者側は休息期間11時間に反発
改善基準告示改正 専門委員会
バス・タク・トラックの委員全員が入った専門委員会=10月29日、東京・三田共用会議所 |
労政審労働条件分科会自動車運転者労働時間等専門委員会の第6回会議が10月29日にひらかれました。自交総連の菊池書記長が傍聴しました。
専門委員会では、事務局(厚労省)が、バス、タクシーで提案した「見直しの方向性」を説明し、意見が交わされました。トラックは、アンケートを取り直している関係で審議が遅れて、まだ改正案は出されていません。とくに休息期間11時間についての意見は次のとおりです。
「受け入れ難しい」
バス使用者側…休息期間11時間は受け入れ難しい。朝5時に出る人は前日18時に退勤していないといけないので、夕方から夜間の減便は避けられず、社会的影響が大きい。運転者をもっと採用すればいいかというと、コロナで影響を受け赤字になり、採用もできない。欠勤者を埋める勤務変更も難しくなり、運行管理者の過労をまねく。
タク使用者側…実態は休息期間8時間未満というのはほとんどない。過労死労災もタクシーは少ない。労災認定基準検討会の審議から11時間ということが入ってきたのを否定する気はないが、例外的に超える場合もあることを理解してほしい。
バス労働者側…11時間は評価する。産業に魅力がないから労働者が入ってこない。若い人が入ってくるためにも長時間労働を是正しないといけない。
タク労働者側…実態はほとんど13時間拘束が守られているので、休息期間を11時間にしても問題はない。例外規定が週3回もあるというのは議論しないといけない。
休息期間11時間を
改善基準告示改正は年度末までに結論を出す予定ですが、現時点では、事務局が提案した休息期間11時間という点が最大の焦点になっています。
休息期間の現行8時間から11時間への延長は、労働者の健康を維持し、自動車の安全を守るために最低限必要な規制です。バス・タクシーとも使用者側は、経営が苦しい、運転者不足で採用も増やせないと主張しますが、運転者不足を解消するためにも、労働時間を短縮して賃金を増やし、魅力のある産業にすることが必要で、異常な長時間労働を続けたままでは人は集まりません。
経営が苦しいから労働時間短縮はできないという使用者の「わがまま」は世論に訴え、社会的に包囲して許さないことが必要です。
業界で需給調整し営収増を
タクシー労働者組織化総がかり行動にとりくむ
関西地連
【関西】京都地連は10月1日、京都地方労働組合総評議会(京都総評)と協力して「タクシー労働者組織化総がかり行動」にとりくみ、京都駅前などで宣伝を行いました。
京都駅烏丸口で宣伝のマイクを握った京都総評・梶川議長は「コロナ禍の中で、最賃そのものがきちんと支払われているのか問われている。同時に経営者が安定して支払うことができる環境づくりは、政治がやらなければならない」とし、「まともに暮らせる賃金水準を実現するために、いまの誤った政治に対して声を上げよう。力を合わせよう」と呼びかけました。
また、関西地連・庭和田書記長(大阪地連書記長)は、「雇用調整助成金を活用しながら需給調整して1台当たりの営業収入を上げる、これを業界全体でやれば最賃違反は起こりにくくなる。しかし、それをせず働かせるだけ働かせて、コロナ禍の犠牲をタクシー労働者にすべて押しつけている」と事業者を批判。10月から実証実験が始まるダイナミック・プライシング(変動運賃制)についても反対を訴えました。
東北、静岡、大分、高知で大会開催
東北第4回大会(左上)=10月3日、宮城・南光台市民センター
静岡第44回大会(右上)=10月4日、静岡・浜松・西塚区画整理記念館
大分第60回大会(右下)=10月7日、大分・地連事務所会議室
高知第40回大会(左下)=10月25日、高知・高知城ホール会議室
情報電子版 記事紹介
準特定地域は23増えて151地域解除特定地域と準特定地域 10・1公示→21年42号