自交労働者No.960、2022年4月15日

コロナ危機を乗り越え、かちとれ賃金増

要求獲得へたたかいを展開

自交総連2022年春闘

タクシー規制緩和20年抗議の宣伝行動=4月1日、宮城・仙台駅前(左写真)/4・1タクシー労働者怒りの行動=4月1日、大阪・近畿運輸局前(右写真)
タクシー規制緩和20年抗議の宣伝行動=4月1日、宮城・仙台駅前(左写真)
4・1タクシー労働者怒りの行動=4月1日、大阪・近畿運輸局前(右写真)

 4月に入り自交総連の22春闘は、いよいよ本番となりました。自交総連は、闘争方針に基づき、統一行動、省庁交渉などを各地で実施し、要求獲得にむけたたたかいを展開しています。

賃上げ5000円

 自交総連は、『コロナ危機を乗り越え、かちとれ賃金増、さらなる規制緩和阻止 22春闘』をスローガンとし、要求提出や宣伝行動、省庁交渉を各地でとりくんでいます。
 鹿児島の鶴丸交通労組は、労働条件変更なしの最低賃金の支払いをかちとり、新たに組合員が7人加入しました。
 神奈川の箱根登山ハイヤー支部では、未払い割増賃金問題を団交で解決。他労組から17人が入りました。
 東北の福自交労組馬陵分会では、A型賃金でノースライドプラス5000円の賃上げをかちとりました(昨年11月運賃値上げ)。

4・1に抗議の宣伝を実施

 大阪地連は4月1日、「4・1タクシー労働者怒りの行動」を行いました。
 運輸局、労働局、厚生労働省に向けて宣伝行動を実施し、チラシやポケットティッシュを手渡しました。その後は、市内主要駅で宣伝行動を行いました。
 また東北地連も4月1日に、「タクシー規制緩和20年抗議の宣伝行動」を仙台駅前で実施しました。
 ライドシェア導入、変動運賃制の危険性を訴え、20年前のタクシー規制緩和を忘れてはいけないと強調しました。

「頼もしい仲間増えた」

賛同受け、他労組から17人が加入

神奈川・箱根登山ハイヤー支部

臨時大会で突き上げをする箱根登山ハイヤー支部の仲間=3月28日、神奈川・小田原市民交流センター
臨時大会で突き上げをする箱根登山ハイヤー支部の仲間=3月28日、神奈川・小田原市民交流センター

 神奈川地本の箱根登山ハイヤー支部は3月28日、小田原市民交流センターで臨時大会を開催しました。
 支部では、不当な配置転換などまともな扱いをされず、労働争議に発展したことがありましたが、2年前に全面勝利で解決。今春闘では、未払い割増賃金問題などを解決したことに賛同を受け、社内の他労組から17人が新たに加入するなど成果をかちとっています。
 臨時大会では、冨松委員長が「組合員が安心して働ける職場環境の構築に全力で立ち向かいたい」とあいさつし、これからも組織拡大に向け奮闘していくことを確認しました。

那賀支部長のコメント

 組合を結成してから正しいことを訴え続けて、会社とは良好な関係になれた気がしています。でも仲間が定年だったり、諸事情で減っていく一方で、私たちの思いがなかなか伝わらず、最後には一人になってしまうかもと不安な日もありました。
 今回私たちに賛同してくれる頼もしい仲間が増えました。コロナの影響で売上が伸びず給与は安定していませんが、今まで色々な困難を乗り越えてきたし、新しく入った仲間と立ち向かえると思うと心強いです。逆境に負けずがんばって行きますので、今後もよろしくお願いします。

最賃支払う約束させ7人加入

学習決起集会、宣伝を実施

鹿児島 全労連組織拡大重点計画

組織拡大にとりくむ=3月27日、鹿児島・鹿児島中央駅前
組織拡大にとりくむ=3月27日、鹿児島・鹿児島中央駅前

 自交総連鹿児島地連は鹿児島県労連とともに全労連組織拡大重点計画に登録して拡大をすすめています。3月27日、鹿児島市内で学習決起集会をひらき、宣伝も実施しました。
 決起集会には、県労連に参加する公務・民間の労働組合と地連の仲間30人が集まり、自交総連本部菊池書記長と福岡地連内田書記長が講師となり、タクシー労働者の現状と組織拡大の展望、実際に組合員を増やしてきた経験を語りました。
 県労連福丸議長は、タクシーの厳しい現状を理解して県労連の力を合わせて拡大をすすめようと呼びかけ、県国公の西村議長は、国土交通省の仲間もいるので相談があれば手伝いたいと述べました。
 集会後、参加者は鹿児島中央駅前のタクシープールで宣伝にとりくみ、学習会で学んだ最低賃金や運転者負担の問題などを話題に労働者と対話しました。


 鹿児島地連の鶴丸交通労組では、昨年12月にオール歩合給制賃金について団体交渉を行い、会社から「最低賃金を支払う」との回答をかちとっています。
 また労働時間の実態を把握するために対象者のリストを調べた上で最賃の支払いをし、労働条件を変更しないと確約させました。
 この成果により組合には4月までの時点で新たに7人が加入し、組織拡大への足がかりとなっています。

11時間は努力規定に

バス・タク作業部会で報告案を了承

改善基準告示

雨の中で行われたハイタク作業部会前の宣伝=3月18日、千代田区・厚生労働省前
雨の中で行われたハイタク作業部会前の宣伝=3月18日、千代田区・厚生労働省前

 改善基準告示改正を審議する労政審の第6回バス作業部会が3月16日、同ハイタク作業部会が18日に開かれ、両作業部会とも、1日の休息期間は現行より1時間延ばしただけの9時間とし、11時間は努力義務規定する内容の報告案を了承しました。
 ハイタク作業部会では、労働側委員が「11時間以上の休息期間を与えるよう努めること」の「努めること」を外して義務化することを提案しましたが、使用者側は応じず、厚労省事務局も原案通りとすることで押し切りました。
 タクシー隔日勤務の休息期間は、現行の20時間を2時間伸ばして22時間とし、24時間を努力義務規定としました。これと引き換えのような形で、2暦日の拘束時間は、現行の21時間を、2回平均して21時間を超えなければ1回当たり22時間まで延長できることとされました。
 両作業部会の前には、厚労省前で東京地連の仲間が参加して宣伝行動を行い、16日には全労連・黒澤事務局長、18日には同前田副議長、国交労組後藤書記長がかけつけ、あいさつしました。
 3月28日には労政審の第8回専門委員会がひらかれ、ハイタク・バスの報告を了承して専門委員会としての「中間とりまとめ」を確認しました。
 専門委員会の直前にも、厚労省前で全労連・全労協とともに宣伝行動を行い、東京地連の仲間が参加しました。

世論の喚起を

専門委員会の様子(リモートで傍聴)=3月28日、千代田区・厚生労働省内会議室
専門委員会の様子(リモートで傍聴)=3月28日、千代田区・厚生労働省内会議室

 改善基準改正は、最終的に秋以降年内に決定して公布され、24年4月から適用・施行される予定になっています。それまでに、ハイタク・バス以上に使用者側が時短に難色を示しているトラックでの審議があります。
 ハイタク・バスに関しては、審議のなかで出されていた、11時間は努力義務であっても、「基本」という言葉を入れた意味などの論点もふまえて、実効性を確保するとりくみが必要です。
 この間に厚労省が作成する関連通達についても、累進歩合禁止の徹底、割増賃金や有給休暇手当の適正な支払いなど、その書きぶりが今後に大きく影響してきます。
 ひきつづき自動車運転者の長時間労働の危険性を訴え、実効ある労働時間短縮、休息期間11時間を実質的に確保することなどで世論を喚起していくことが大切です。

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9時間で十分な睡眠がとれるのか

武田良介参院議員が休息期間について追及

国 会 質 疑

質問する武田良介参院議員=3月8日、参議院国土交通委員会
質問する武田良介参院議員=3月8日、参議院国土交通委員会

 改善基準告示改正の問題で、日本共産党の武田良介参議院議員が3月8日、国土交通委員会で質問しました。
 武田議員は、国交省が運輸規則で睡眠不足の運転者を乗務させてはならないと定め、その指導マニュアルでは6〜7時間の睡眠が必要としていることを答弁させ、休息期間9時間で十分な睡眠がとれるのかと追及しました。
 国交大臣は、個人によって休息期間の過ごし方が異なるなどと逃げましたが、武田議員は、運転者の健康、交通安全は休息期間9時間では守れない、11時間にすべきだと重ねてつよく求め、大臣は、運転者が十分な睡眠を確保する観点からも効果的かつ実効性のある基準に見直されることが重要である、と答えました。

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タク年収249万円、格差は247万円に

コロナ前から50万円以上も減少

タクシー労働者労働条件比較

最賃

 2021年のタクシー労働者と他産業労働者の労働条件比較がまとまりました。
 タクシー労働者の平均年収は248万5700円、前年より21万4000円減りました。一方で産業計男性労働者の年収は1万9200円増えて495万4200円になっていますので、格差は246万8500円でこれまででもっとも拡がりました。
 この調査は毎年6月分の賃金をもとに集計されているものです。コロナ禍により営収の減少が著しく、タクシー労働者の賃金は大幅減となっています。下表の推移をみると、コロナ前の19年から50万円以上も減っており、特に生活が苦しい実態がうかがえます。
 1時間当たりの賃金(一時金を含む)は、タクシーが1205円、産業計が2282円で、格差は1077円(53%)でした。6府県で1時間当たりの賃金が1000円を割っています(青森、山形、京都、徳島、鹿児島、沖縄)。
 ※全国平均は単純平均で出しています。業界紙等で報道される数値(加重平均)と異なります。

→統計表

22年7月投票 参議院選挙特集2

自交労働者と政治との関わり

誰が労働者の味方か慎重に見極めよう

 7月に行われる参議院選挙を前に、自交労働者と政治との関わりを考えます。

国の支援はなし

図1

 20年から広がった新型コロナ感染症はタクシーに深刻な打撃を与えつづけています。
 営業収入は、多い時には6割以上減り、現在でも4割減です。歩合給である賃金はそれと比例して減少し、全国平均で試算しても月15万円程度になってしまいました(図1)。
図2
 各地で、所定内賃金の時間額が最低賃金額とほとんど変わらない水準となり、最低賃金法違反の人が続出しています(図2)。
 生活できないのでタクシーをやめる人も急増しています。
 これだけひどい状態なのに、政府の支援はほとんどありません。同じエッセンシャルワーカーである医療・介護の労働者に払われた給付金や賃上げのための支援金もタクシー・バスにはありません。減収の補てんもありません。
 五輪や受験生の輸送では協力を求められたのに、ワクチンの優先接種やPCR検査もありません。
 これが日本の政治の現実です。

政治が予算を決める

 自民党・公明党の政権のもとでも、国民と野党の要求で雇用調整助成金や休業支援金の改善ができました。
 選挙で参議院の構成を変え、国民の意識が現れれば、もっとたくさんの要求が実現します。
 22年度予算では、コロナ対策予備費5兆円に対して防衛費は5・4兆円です。こうした税金の使い方を決めるのが国会ですから、国民の選択が大切です。

消費税減税は?

 コロナで困窮しているところへ、物価高騰が追い打ちをかけています。家計支出は増える一方で、実質的な賃下げと同じです。
 コロナ対策として英、仏、独、韓国など世界60か国以上が消費税を減税していますが、日本では岸田政権がかたくなに拒否し、インボイス制度の導入は強行しようとしています。
 これも決めるのは選挙に現れた国民の意思です。選挙に行かなければ、現状のままでいいと表明したことになってしまいます。誰が労働者の味方なのか、慎重に見極めましょう。