運賃改定時のスライド賃下げ許さない
第45回中央委員会
第45回中央委員会=1月31日、東京・全労連会館 |
自交総連は1月31日、東京・全労連会館で、第45回中央委員会をリモート併用で開催し、「コロナ危機と物価高騰に立ち向かい、食える賃金を保障しろ 23春闘」をスローガンとする春闘方針を決定。12地方から33人が出席しました。
中央委員会には、日本共産党と全労連、交運共闘よりメッセージが寄せられました。
庭和田委員長あいさつ
庭和田委員長 |
全国の皆さんおはようございます。
これほど本当に「かつてない」という時期はないのではないかと感じています。
3年に及ぶコロナ、ロシアの侵略戦争による原油高、物価高騰、そして何よりもこの厳しいときに、岸田政権は市民・国民・労働者に目を向けず、まったく違った政策をすすめています。
特に私が頭にくることは、軍拡に5年で43兆円もの金を使うということです。これはさらなる消費税増税に繋がるうえに、戦争に加担させられる日本に変えようとしているということが、非常に危機的だと思っています。
職場に目を向けると、東京をはじめ全国で運賃改定の要請が行われています。自交産業はコロナ禍でどんどん労働者が去っています。賃金が上がらなくなったことで、東京では約1万人、大阪でも数千人も減っているのです。その結果、何が起こったのかといえば、ちょっと稼働が戻ってきたら、日車営収がどんどん上がるという現象です。
しかし、私たちタクシー運転者にとっては当たり前のことだと思っています。それが需要と供給のバランスですし、そこに運賃改定が重なれば、労働者にきちんと賃金が払えることになります。
要するに運賃改定が行われた際に、その前後で、タクシー運転者に負担させる手数料のような仕組みを変えさせることができれば、労働者が直接手にする賃金を増やすことが可能になるのです。
自交総連としてこの23春闘は、特に運賃改定、その前後のスライド賃下げを許さない、そして運転者の手数料等の撤廃ができるかどうかがつよく問われていると私は思います。
こうした是正に向けた闘いの先頭に立ってがんばっていくことを申し述べて、主催者を代表してのあいさつとしたいと思います。本当にがんばっていきましょう。
署名は公共交通の在り方を問うもの
ZOOM使用で8地方10人が発言
第45回中央委員会 質疑討論
改定見越した賃下げに対処
1 京屋さん |
1 埼玉・京屋良一さん 埼玉県は19年に運賃改定が行われましたが、コロナ第1波の直撃によりその実感を感じられないまま今に至ります。今年末にはまた運賃が改定されると予想していますが、経営者の中ではそれをすでに見越して賃下げしているところが出てきています。
こうした動きに対して、埼玉地連では石野委員長を先頭に、また本部の仲間、全国の仲間とともに労働条件改悪阻止に向かってまい進していきたいです。
プラスアルファの運賃改定
2 月村さん |
2 東京・月村隆浩さん 運賃改定にあたり東京地連では、ノースライドだけではなく、乗務員負担の撤廃、累進歩合廃止などのプラスアルファの獲得が必要だとして、改定趣旨である労働条件改善に反するような事態が発生した場合には闘争も辞さないことを確認してきました。
最新の報道では昨年12月の営業収入はコロナ前の水準近くまで回復しています。しかし賃下げを実施もしくは提案した会社も見受けられ、これらに対して地連では当該組合とともに関東運輸局に告発状を提出し、抗議行動を予定しています。
状況改善のためにご尽力を
3 山本さん |
3 神奈川・山本尚二さん 富士見交通は2年前にやっと支部を立ち上げることができましたが、会社側は団体交渉に社長が出席せず、交渉が形骸化されています。会社は労働三法を無視するような経営を続けています。
とにかく法律違反の数が多すぎて、第二労働組合をつくった上で36協定外の賃金協定などを労基に提出してるからこれで正しいんだ、というような論法ですべて終えられてしまっています。組合活動に対しては妨害を繰り返し、労働組合の存続も危うい状態になっております。この富士見交通の悲惨な状況を改善するために、どのようにたたかっていくのが良いか訴えたいということで、まずはこの場をお借りして全国の皆さま方に現状を申し上げております。
皆さんのご尽力をいただいて大きな組織になった箱根支部をめざし、今春闘もがんばっていきたいです。
ノースラ貫くにはどうすべきか
4 松下さん |
4 静岡・松下靖史さん 20年の前回の運賃改定では、私が在籍する浜松タクシー株式会社は組合に対してスライド賃下げを迫ってきました。コロナ禍により需要が激減したことで棚上げとなりましたが、今度運賃改定が実施されたらスライド賃下げを行うと会社が考えていることは間違いないと思います。ノースライドを貫き通し、なおかつこれから賃金体系の改善を求めていくにはどうすればいいのか本部の助言を仰ぎたいと思います。
全国個人タクシー労働組合を
5 秋山さん |
5 東京・秋山芳晴さん まずはじめに20年の運動方針に入れていただいたインボイスについてお礼申し上げます。これからも一層インボイスに反対していきたいと思います。 組織拡大については、全国個人タクシー組織をつくっていただければ拡大に繋がっていくと思います。楽しく稼げて労働運動に従事できることを踏まえて、これからの業界の夢としてご一考いただければと思います。
コロナ感染時の対応を決定
6 松永さん |
6 長崎・松永利秋さん 会社と交渉していたコロナ感染時の対応について、濃厚接触者は特別休暇、感染した時には傷病手当扱いにすることで落ち着きました。自交総連本部も感染症に対しての規則をつくった方がいいと私は思っています。
労働条件改善と政治闘争を
7 吉根さん |
7 北海道・吉根清三さん タクシー労働者は本当にまともに働いた労働の対価がほとんどのところで払われていない状況です。
北海道は今度の選挙でタクシーに乗っていただくような一般国民の所得が上がるような政治に変えてかなければならない、と今年の春闘でも全力ですすめていく決意です。職場の中で労働条件を改善し、使用者の理不尽とたたかうことと合わせて、政治闘争の強化をやらなければならないと思っています。
総括討論
署名目標は2000名
8 齊藤さん |
8 東北・齋藤哲也さん 昨年末に東北地連は、「食える賃金」署名は、労働条件改善を訴えることにより、公共交通の在り方そのものを社会的に問う署名だと考え、署名数の目標を2000名分とすることを決定しました。全組合員が自分以外の人から署名を集めること、さらには東北の各駅前で、タクシーで働く仲間や利用者から署名を集めることを計画しています。
次に、地連は、11月に東北運輸局交渉を実施しました。この交渉では、改めて運賃値上げが労働条件改善のためのものであることを確認。また運輸局に対し、緊急事態に対処できる需給調整の検討をつよく要請しました。
23春闘を、全国の仲間と奮闘することを表明し、東北地連を代表しての発言とします。
ピンチをチャンスに
9 坪倉さん |
9 東京・坪倉秀樹さん 東京地連は、運賃改定に向け、賃金・労働条件改善、ノースライドプラスアルファの獲得に力点を置いて運動構築しました。
秋闘では、加盟組合へ「改定の増収分は確実に労働条件改善に充当すること」とした確認書を発出。これに基づいて労使協議が行われ、12月末時点で16組合がノースライドを確認済みですが、賃金支給率引き下げを提案する事業者も複数報告されています。地連は当該組合と共闘して関東運輸局に実態を告発する運動を実施し、実行を食い止めています。
今後は、駅頭でアンケートを実施し、加盟組合以外の会社からも広く合理化提案がされていないか聴取していき、ピンチをチャンスに変えるべく組織拡大に奮闘する決意です。
二重三重の闘争体制を
10 松原さん |
10 関西・松原伸一さん 運賃改定・増収・ノースライドの実現は、実質的な賃上げに結びつくものであり、今春闘のもっとも大きな運動の柱です。経営側は、アプリ配車手数料を運転者に負担させるなど取り分を増やそうとしますから、大阪で運賃改定が実施された際には、二重三重の闘争体制を確立し、つよい姿勢で交渉に臨む必要があります。
春には統一地方選挙が行われます。政党支持の自由を保障した上で、労働組合がとりくむことのできる運動に最大限の力を発揮し、維新政治を退場させなければなりません。
また、賃上げ要求とともに、バス事業が安心・安全を担保できる産業にするためにも、引き続き行政に働きかけていく必要があると感じています。
運動前進と政治転換を
運賃改定について多く発言
執行部答弁
城書記長 |
執行部を代表して答弁に立った城書記長は、全国的に運賃改定がすすんでいることから、労働条件改善につなげる決意と組織拡大へのとりくみに関する発言に対し、以下の答弁を行いました。
運賃改定は、労働条件を改善する機会ととらえ、運賃改定に前後して賃下げを求めてくる事業者には、厳しく対応すること。国会の質疑では「労働者の合意を得ず一方的に就業規則を変更して労働条件を不利益に変更できない」と厚生労働省が答弁し、国土交通省交渉でも「趣旨を逸脱した事業者は指導する」との回答を得ている。先行実施された東京の運動で改定趣旨を守らせることが重要であり、本部も共に奮闘していく。
最低賃金放棄の承諾書を取っている件はしっかり支払わせ、最低賃金を発生させないためにも、最低賃金以上の固定給を確立することが必要。要求実現のためには、国民に目を向けた政治に転換することの重要性を強調し、運動の前進とともに政治も変えよう。
プラットフォーム事業の労働者性を解説
11地方20人の弁護士が参加
第45回弁護士交流会
第45回弁護士交流会=1月30日、東京・全労連会館 |
自交総連第45回弁護士交流会が1月30日、WEB会議形式で行われ、11地方20人の弁護士が参加、自交総連からは13人が傍聴しました。
会議では、基調報告として、ウーバーイーツで働く人の労働者性(菅俊治弁護士、東京法律事務所)が行われました。菅弁護士は、昨年11月に東京都労働委員会が示した飲食宅配サービスのウーバーイーツの配送員は労働組合法上の労働者であるという判断について当該事件の労働側弁護団の一員として解説。「フリーランス」保護の観点で立憲民主党に行ったヒアリングや、デジタル・プラットフォームと労働者性を巡る各国の判例をもとに、スマートフォンの専用アプリで飲食店と配送員と客を結び付けるプラットフォーム事業をめぐる国内の動きを説明し、法律上どういった問題があるのかを報告しました。
特別報告として、@割増賃金が歩合給から引かれる賃金の問題、ハイタクユニオン(齋藤耕弁護士、北海道タクシー労働者支援弁護団)、Aバス運転者の手待ち時間の労働性(長沼拓弁護士、一番町法律事務所)、B運転者負担を会社の不当利得として返還請求している事件、日本自交労組(新宅正雄弁護士、代々木総合法律事務所)が報告され、意見交換がされました。