自交労働者No.970、2023年3月15日

協議運賃制度の創設について警鐘

 自交総連は3月2日、23春闘で自交労働者の労働条件改善をめざし、コロナ危機と物価高騰に立ち向かい、食える賃金の保障、変動運賃制度反対、運賃改定のノースライド獲得、白タク合法化阻止などを掲げて、3・2中央行動を実施しました。請願提出行動には交運共闘の仲間も駆けつけ、全体で約300人が参加しました。

3年ぶりに人を集めての中央行動を実施=3月2日、東京・霞が関周辺

 10時30分から決起行動を開始。国土交通省前で庭和田中央執行委員長は主催者あいさつで、急浮上した鉄道・タクシーにおける協議運賃制度の創設「地域公共交通の活性化及び再生に関する法律等の一部を改正する法律案」に警鐘を鳴らしました。タクシー業界は危機的状況にあるとし、規制緩和を推進する勢力に押されているのではタクシーは地方から先につぶれていってしまうと強調しました。続いて、全労連の清岡副議長、交運共闘の門田幹事、日本共産党の岩渕参院議員が連帯あいさつしました。
参加人数
 参加者一人ひとりが請願書を国交省の係官に手渡しする中、東京の堀井中執、静岡の市村中執、福岡の内田常執がそれぞれの地方の実情を交えながら力強く決意表明しました。3年ぶりにプラカードを掲げたシュプレヒコールをあげた後、厚生労働省にも署名提出を行いました。
 12時からは、日比谷野外音楽堂での全労連・国民春闘共闘主催の中央総決起集会に参加し、デモ行進を実施しました。
 自交総連の代表は、13時から「タクシー労働者に食える賃金を保障しろ! 労働者の生活保障、地域公共交通維持を求める請願書」署名について協力を求める国会議員要請行動にとりくみました。
 その後、中央行動で提出した個人請願書の内容について国交省・厚労省と交渉を行いました。

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生活保障と地域公共交通の維持を

タクシーの協議運賃の創設問題も説明

国会議員に「食える賃金」署名への協力を要請

 3月2日の中央行動では、代表が国土交通委員を中心に衆参37人の議員へ要請(陳情)を行いました。
 要請の趣旨は、@請願書への賛同、A国会での審議を通じて、タクシー労働者の生活保障と地域公共交通の維持が図られる政策実現への協力、B請願書を提出する際の紹介議員になることへの承諾、というものに加え、緊急にタクシーにおける協議運賃制度の創設問題の説明も行いました。
 今回の行動で要請に行けなかった国土交通委員には、請願書と資料を後日郵送しました。

中執メンバーを中心に衆参の議員会館を訪問した
中執メンバーを中心に衆参の議員会館を訪問した

 以下、要請の報告を紹介します。

 共産・志位和夫衆院議員(秘書) 国土交通委員会に関わっている関係で国交省からのレクを先日受けたと語り、秘書はレクでは鉄道がメインでタクシーの届出運賃の創設は問題があるという認識はなかった。まともな地域公共交通を守ることと自交労働者のくらしを改善することに対して今後も協力していくことを確認した。
 立憲・小宮山泰子衆院議員(秘書) 紹介議員になってほしい旨を伝えたところ感触は良く、また(署名を)持ってきてくださいということだった。今国会の5月ごろに署名を提出することを伝えて、協力を要請した。
 共産・宮本徹衆院議員 議員本人が手厚く話を聞いてくれた。署名の紹介議員になってくれる了解も得た。
 共産・高橋千鶴子衆院議員 高橋議員本人が対応してくれたが時間がなく、5分程度の対応だった。 議員の方から「写真を撮りましょう」となった。趣旨説明をして、タクシーの実態もすでに承知されていた。
 共産・吉良よし子参院議員(秘書) 説明の内容をよく聞いてくれた。



オンラインでも

3月10日には、代表がタクシーにおける協議運賃の創設に関する国交省とのレクチャーを実施しました(→詳細)。
 地域公共交通を守るためには、「食える賃金」署名活動と合わせてタクシーの協議運賃の問題にもとりくんでいかなければなりません。
 また、自交総連はオンライン版の「食える賃金」署名を開始しました。今後も5月の署名提出行動をめざし、組合員のみならず広範な人々に呼びかけを行います。

国土交通省、厚生労働省と交渉

国交省の係官へ要請書を渡す庭和田委員長(写真右)=3月2日、東京・参議員会館
国交省の係官へ要請書を渡す庭和田委員長(写真右)=3月2日、東京・参議員会館




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地域公共交通の維持広範な人々へ呼びかけ

「食える賃金」署名にとりくみます

2023春闘

「食える賃金」署名運動の内容

 自交総連はこの23春闘で、住民の自由な移動を保障する持続可能な地域公共交通をめざして、「タクシー労働者の生活保障と地域公共交通維持を求める請願書」に全力でとりくんでいます。
 「食える賃金」署名は、23年4月末までに右表のような運動を行い、組合員・家族・知人のみならず、未加盟・未組織のタクシー労働者、タクシー利用者など広範な人々を対象に呼びかけて、署名を集めていきます。  また、署名の輪をさらに拡げるために、3月1日からオンラインバージョンの署名も開始しました。
 このオンライン署名は、Change.orgのシステムを利用したもので、賛同するとメールアドレスに、拡散と寄付のお願いが届きます。スマホやパソコンから、以下のサイトにアクセスして、氏名とメールアドレスを入力すれば賛同できます。

 【地域公共交通の危機打開 タクシー労働者に食える賃金の保障を!】働いていても生活ができないと、タクシー労働者の離職が止まりません!

アプリ使用による賃下げ見直せ

運転者や通行人へ呼びかけ

2・1宣伝行動

 自交総連の東北地連と東京地連は2月1日、それぞれ宣伝行動にとりくみました(写真)。東北地連は仙台駅前で、東京地連は日本交通本社前でタクシー運転者や通行人に呼びかけ、本部のビラを配布しました。
 この行動は2002年2月1日にタクシー規制緩和(道路運送法改悪)が実施されたのを忘れず、安全で乗りやすいタクシーの実現、運転者の労働条件の改善を求めて毎年実施しているものです。

写真


 【東京】東京地連は事業者団体の会長会社である日本交通本社前で宣伝行動を実施し、タクシー事業者に社会的公約を厳守させ、公共交通機関として同一地域・同一賃金、料金の確立と配車アプリ業者への規制緩和を訴えました。
 主催者代表のコ永委員長は、「東タク協の川鍋会長に対し、運賃改定において東京地連と事前担保協定となる確認書を締結しなかったことに遺憾の意を表明する。また、アプリ配車を待つために偽装回送で駅づけや流しをしない不適切営業が増え、タクシーが捕まらない問題となっている」と訴えました。
 続いて、本部の城書記長、東京地評の矢吹議長、各ブロック代表が事業者団体の会長としてのあり方や資質などを問う訴えを行いました。
 日本交通労組の吉永委員長は、「日本交通川鍋会長は東タク協会長でもあるので業界全体をまとめる立場だ。アプリ使用でお客様も混乱をきたすし、乗務員は迎車料金部分で賃下げとなったため、収入に大きな影響が出ている。業界の将来を考え、見直しを要請する」と呼びかけました。
 最後に参加者73人でシュプレヒコールをあげて、決意を固めました。

仙台のバス・タク運行「参考になった」

林常執が運賃改定の動向を報告

交運共闘第34回総会を開催

交運共闘第34回総会を開催=2月24日、東京・浅草セントラルホテル
交運共闘第34回総会を開催=2月24日、東京・浅草セントラルホテル

 交運共闘は2月24日、第34回総会をリモート併用で開催し、新年度運動方針を決定しました。
 光部事務局長は、11月に実施した仙台の交通事情視察について、地方では人口の減少・高齢化などが深刻化する中で、労働組合の役割を包括的な視点で深化させ、住民や観光客等の要望と合致するバス・タクシー運行を実現した例は大変参考になったと報告。
 質疑討論では、自交総連の林常執が運賃改定の動向を報告しました。国交労組からは、人員削減の結果技術の継承がされず、監査もマニュアル的となっており、体制拡充が必要と発言がありました。
 総会では、議長に城書記長、事務局長に検数労連・光部書記長が再任され、幹事に徳永副委員長が信任されました。

各地で開催 中央委員会・春闘討論集会

写真

 ◎ 東京春闘討論集会(写真左上)=2月7〜8日、群馬・磯部ガーデン
 ◎ 静岡学習会(写真右上)=2月23日、静岡・地連事務所
 ◎ 東北第5回中央委員会(写真左下)=2月24日、宮城・福室市民センター
 ◎ 埼玉第61回中央委員会(写真右下)=2月17日、埼玉・ウエスタ川越

運賃改定とタクシー運転者

【1】ノースライドとスライド賃下げ

泣き落としには屈さない 合意なければ不利益変更

 ここでは、運賃改定時に労働条件改善が実現するには会社へ何を求めるべきかを全3回の連載で解説します。


 自交総連にとってタクシーの運賃改定時のスライド賃下げを認めるか認めないかは、歴史的にとても重要な闘いです。
 まず、「ノースライド」と「スライド賃下げ」を理解する必要があります。
 運賃改定時に足切り額や歩合率を変更することを「スライド賃下げ」といい、逆にスライド賃下げをさせないことを「ノースライド」といいます。
 歩合給を基本とするタクシー運転者は、運賃が値上げされた際に賃率の変更がなければ、増収分が配分され、確実に賃金が増加することになります(図表@)。
ノースライド
 しかし、タクシー事業者が、この値上げの増収分を「不労所得」としてスライド賃下げを行い、運転者に渡さないようにすることが業界的に慣習となっていた時代がありました。
 そして、「そもそも運賃値上げは、経費の増加が理由であり、経費の大部分は運転者人件費なのだからスライド賃下げはおかしい」と異議をとなえたのが当時の自交総連でした。

現行の賃金計算方式を変更させない

 図表のとおり、会社側が一方的に賃率や足切の引き上げ、営収の読み替え、手当類の引き下げ、それらの組み合わせを行うことは、労働条件の不利益変更に当たります。
 事業者は運賃改定の増収分を横取りしようと様々なやり方を提案・強行してきます。経営不振などを理由とした泣き落としに屈して不当な協定を結ばず、現行の賃金計算方式を一切変更させないことが重要です。(次号『【2】増収になる前提条件』予定)