自交労働者No.972、2023年5月15日

協議運賃、変動運賃に反対

 自交総連は4月、「食える賃金署名」のとりくみと併せて、協議運賃制度、ダイナミック・プライシング(変動運賃制度)、白タク合法化阻止にむけた世論の喚起、組織強化・拡大をめざし、各地で宣伝行動を実施しました。

交通弱者の切り捨て許さぬ

大阪地連、怒りの行動実施

怒りの行動にとりくむ大阪の仲間たち=4月18日、大阪・近畿運輸局前
怒りの行動にとりくむ大阪の仲間たち=4月18日、大阪・近畿運輸局前

 【関西】大阪地連は4月18日、タクシーへの規制緩和を強行した行政に対する「怒りの行動」を実施。近畿運輸局前で抗議・宣伝行動にとりくみ、国交省、厚労省に対して「ダイナミック・プライシング(変動運賃)、協議運賃反対」などと横断幕でアピールし、是正を求めました。
 組合員らは、出勤途上の市民や合同庁舎に勤める労働者に、変動運賃や協議運賃の問題点を指摘するビラを配り、支援を呼びかけました。
 宣伝カーから福井委員長は、受益者負担と称して未だ乗務員負担を課している事業者がいることを告発し、運賃改定と同時に業界から乗務員負担を一掃するよう近畿運輸局の指導を強く求めました。
 松原副委員長は、協議運賃について、「国交大臣は都市部で準特定地域指定(新規参入などの規制)が解除されれば、その地域は都市部ではないという詭弁を弄しているが、指定が解除となれば協議運賃の適用が可能となり、またもや運賃競争が起こってタクシーの安心・安全が脅かされる」と指摘し、「国がやるべきことは、地域公共交通としてのタクシー、バスを持続的に維持できるよう十分な補助金を出し利用者の利便性を高めることだ」と語気を強めました。
 庭和田書記長は24年4月から実施される「改正」改善基準告示について、「勤務間インターバル9時間が3年も放置され、交通運輸職場の過労死や重大事故が今後も後を絶たない。犠牲者を出さない制度づくりが急務。少なくとも国交省が運用面で歯止めをかけるべきだ」などと訴えました。


神奈川・静岡・山梨で訴え

関東ブロック、キャラバン宣伝

宣伝カーから訴えかける市村副議長=4月12日、静岡・静岡駅前
宣伝カーから訴えかける市村副議長=4月12日、静岡・静岡駅前

 関東ブロックは4月12日〜13日に神奈川・静岡・山梨で宣伝行動を実施しました。
 行動には、石野議長や市村副議長、堀井副議長、冨松事務局長を中心に東京地連や神奈川地本、静岡地連の仲間が参加しました。
 2日間で、横浜駅、新杉田駅、掛川駅、浜松駅、静岡駅、甲府駅をキャラバンし、「食える賃金」署名や自交労働者新聞、ビラ入りティッシュなどの配布を行いました。
 宣伝カーの上から弁士が、全国のタクシー乗務員がコロナ禍も伴って生活できない賃金しか得られていない現状や、全国一律1500円の最低賃金をめざすこと、国交省がこの夏にも見直すタクシー乗務員証の提示義務の話題、各地で実施予定の運賃改定や、協議運賃制度・変動運賃制度の仕組みと危険性などを訴えました。


協議運賃制度を廃案にせよ

参議院前座り込み行動を実施

抗議の座り込みを行う仲間たち=4月17日、東京・参議院議員会館前
抗議の座り込みを行う仲間たち=4月17日、東京・参議院議員会館前

 自交総連は4月17日、参議院会館前で東京地連、神奈川地本と交運共闘の仲間とともに「協議運賃制度で不当な競争と利用者の公平性を破壊するな」「参議院国土交通委員会は協議運賃制度を廃案にしろ」と横断幕を掲げて、座り込み行動を行いました。
 コ永副委員長(東京地連委員長)は、「タクシーの運賃という根幹に関わる問題でありながら『協議運賃制度の創設』が一括法案として盛り込まれ、まともな審議すらされていない」と憤り、抗議しました。
 つづいて冨松常任執行委員(神奈川地本委員長)が、「協議運賃制度の導入は、タクシー事業をより疲弊させる。国は協議運賃制度の導入を止めて、公的補助金等でタクシーを守るべきだ」と強調し、東京地連の各副委員長が国会議事堂に向けて訴えました。
 交運共闘の国土交通労組後藤書記長は、国土交通行政のあり方にも疑問を呈し「国民の自由な移動を担保するには、運送を担う労働者の労働条件改善もセットで安心・安全を確保する闘いをともに強めていこう」と連帯の挨拶をしました。
 緊急の抗議行動でしたが、東京地連から53人、神奈川地本4人、常執3人、そして交運共闘の仲間が9人、計69人が参加しました。

地域公共交通にふさわしくない

新たな「運賃制度」導入の動き



ダイナミック・プライシング導入へ

ダイナミック・プライシング導入反対デモを行う東京の仲間=21年7月10日、東京・新宿駅周辺
ダイナミック・プライシング導入反対デモを行う東京の仲間=21年7月10日、東京・新宿駅周辺

 国土交通省は3月31日、ダイナミック・プライシング(変動運賃制度)の導入を発表しました。パブリックコメントの結果を踏まえて、速やかに制度施行するとしています。
 公表されたまとめでは、配車アプリ等を通じ、需給に応じて柔軟に変動する運賃であり、かつ変動の平均額が総括原価により設定された運賃幅に収まる水準となるような方法により算定される制度として、『事前確定型』の変動運賃を制度化するとしています。
 導入条件として、@配車アプリによるサービス提供であること、A個別の認可申請であること、B事業者へ3か月毎に実績を求めること(総括原価により設定された運賃幅に収まる水準ではない場合には認可取り消し)などがあげられており、変動幅は5割増・5割引きの範囲内(上下5割)で設定します。
 これをうけて自交総連は4月26日、同省が募集しているパブリックコメントへ意見を提出しました。
 さらに27日には、「ダイナミック・プライシング導入に反対する声明」を発表しました(声明文)。
 自交総連は、ダイナミック・プライシングが高齢者や障がい者等の交通弱者の利便・安全性にも悪影響を及ぼし、タクシーの公共性を著しく損なうとともに、タクシー運転者の労働条件を悪化させるものとして、国交省の拙速な行政手法と制度導入に断固反対を表明します。



ライドシェアを導入せよと高まる声

 3月29日、政府主催の「新しい資本主義実現会議」で、自家用車ライドシェアの導入が提起されていたことがわかりました。
 会議の委員であるソフトバンク系のZホールディングスの川邊健太郎会長により提起されたもので、タクシーを念頭に「一部の業界のためだけに、都市部も含めて数千万人が足止めを食らっている」と主張しました。
 また、4月25日の参議院国土交通委員会では日本維新の会の石井苗子議員と国土交通省の間で自家用車ライドシェア関連の質疑が行われました。
 国交省の斉藤鉄夫大臣は、交通不便地域の住民、来訪者の移動の確保について、「まずはタクシーやデマンド交通を活用してもらう」と強調した上で、「それでも不十分な地域では、自家用有償旅客運送制度を組み合わせて交通サービスを確保していく」と述べました。
 それに対して石井議員は、「(自家用有償旅客運送制度が)ライドシェアと何が違うのか。自家用車を使って、有償で、二種運転免許ではない。日本でも、ライドシェアという形でこういうものがあると広く利用してもらえばいい。もっと自由度の高い利用方法を考えているのか」と質し、「タクシーを優先してという考え方はわかるが、呼んでも『今予約いっぱいです』とか、タクシーはあるが運転者がいないという状態なら、この活用を地域限定でやって欲しい。マッチングのシステムについて色々なAIを活用して」と国交省へ求めました。
 こうした財界・政界で高まっているライドシェア導入を求める動きに注意が必要です



タクシー協議運賃運用での歯止めを

 4月21日、参議院本会議において「地域公共交通の活性化及び再生に関する法律等の一部を改正する法律案」が、日本共産党、れいわ新選組を除く賛成多数で成立しました。
 20日の参議院国土交通委員会で、日本共産党の田村智子議員は「タクシーにおける協議運賃制度では、下限割れ運賃が起こり得ると審議の中で明らかとなった。規制緩和による価格競争が乗客の安全や労働者の賃金に深刻な影響を与えた反省こそ必要」と発言し、協議運賃制度の削除を求める修正案を提出しましたが、賛同する会派はれいわ新選組のみで他の会派が反対し否決されました。
 同法案には参議院国土交通委員会において附帯決議が付されました(下記)。
 参議院国土交通委員会の審議は大半が鉄道に関するもので、新たな運賃競争が懸念されるタクシーの協議運賃制度の議論は深まらず法案が可決されてしまいました。今後は、どれだけ運用面で歯止めを掛けられるかが焦点となります。
 自交総連は4月12日にすでにタクシーの「協議運賃制度」創設に反対する声明を発表しています(声明文)。
 声明では、安心・安全を破壊するさらなる規制緩和の推進やタクシーの運賃制度を安易に変えることを批判。国・国交省の責務は道路運送法で厳格な安全規制をかけることであり、バス・タクシーを再生する環境整備を早急に行うよう求めています。

附帯決議

自交総連も各地で奮闘

働くものの団結で生活と権利を守ろう

第94回中央メーデー

メーデー

 働くものの団結で生活と権利を守り、平和と民主主義、中立の日本をめざそう――5月1日、全国でメーデー集会が行われ、自交総連の仲間も各地で奮闘しました。
 東京・代々木公園では、第94回中央メーデーが開催され、全体で約1万5000人が集まりました。自交総連からは244人が参加しました。
 集会では、小畑実行委員長(全労連議長)が主催者あいさつし、日比谷メーデーからの連帯あいさつ、日本共産党の志位委員長の来賓あいさつ、安保関連法制に反対する学者の会の浅倉さんの激励あいさつが行われた後、各組織による一言決意表明が会場に響きわたりました。
 最後にはメーデー宣言が参加者の拍手によって採択され、集会は団結がんばろうで締めくくられました。
 集会の後は参加者が3つに分かれてデモを行いました。

あらたな戦前にさせない

自交総連から26人が参加

5・3憲法集会

憲法集会に参加する自交総連の仲間たち=5月3日、東京・臨海広域防災公園
憲法集会に参加する自交総連の仲間たち=5月3日、東京・臨海広域防災公園

 東京臨海広域防災公園で5月3日、「あらたな戦前にさせない!守ろう平和といのちとくらし23憲法大集会」が開催され、新型コロナ流行以降で最大規模の2万5000人が参加。自交総連からコ永副委員長、城書記長と東京地連からは15組合24人、合計で26人が参加しました。
 実行委員会共同代表高田健氏はあいさつで、岸田首相が任期中に改憲をめざすと公言したことに対して「全国でたたかい、阻止しよう」と呼びかけ、「やるべきは平和の準備です」と強調。参加した4野党の代表は、「あらたな戦前にさせない」とアピールしました。集会後、参加者は陸海空港湾20労組の仲間と「改憲大軍拡NO!」と書かれたプラカードを掲げてパレードを行いました。

ライドシェアの危険性を強調

城書記長が問題点を説明

全視協オンライン交流会「タクシー2」

全視協オンライン交流会に城書記長が参加=4月29日、ZOOM会議
全視協オンライン交流会に城書記長が参加=4月29日、ZOOM会議

 4月29日、全視協(全日本視覚障害者協議会)のオンライン交流会「タクシー2」が開催され、城書記長が参加しました。
 変動運賃が5月から実施されると報道があった影響で不安との声も出され、前回よりも多い34名が参加しました。今回は2月に開催されたタクシー利用に関する交流会・タクシー1で出された課題を整理して解決策を探るという内容で行われました。
 高城書記長は、自交総連の紹介とライドシェアの危険性、変動運賃、自動運転について解説と問題点の説明を行い、前回の交流会でタクシー運転者の接客接遇問題とタクシーが少なく利用しづらいことから運営協議会でライドシェアを容認する意見も出されているとの発言をうけて、具体例をあげライドシェアの危険性を強調しました。
 また、障がい者割引を嫌がる運転者が多いとの指摘については、運転者負担が背景にあると説明し、接客接遇については、運転者の良質な人材を確保するためにも、タクシー運転免許の法制化を進めていることを報告しました。福祉タクシー券から愛のタクシーチケットへの転換や3月27日から導入された有料道路料金割引など活発な意見交換が行われました。

石木ダム建設に反対

座り込み行動に参加

長崎地連

周りを土砂で囲まれた山上の座り込み現場=4月17日、長崎・石木ダム県道付け替え工事現場
周りを土砂で囲まれた山上の座り込み現場=4月17日、長崎・石木ダム県道付け替え工事現場

 長崎地連は4月17日、組合員4人で石木ダム建設反対運動の座り込みに参加しました。
 当日は寒くもなく穏やかな天気でしたが、車の中は太陽のおかげで気温もあがり熱くなりました。
 第1座り込み現場(石木ミニ記念館前)で挨拶を交わして、山上の座り込み現場に到着。土砂埋め立て現場にはバックホー(油圧ショベル)があり、墓地に行くためへの迂回道路の橋脚2基が完成していました。話し合いを行わず、既成事実をつくるために工事はすすんでいます。河川工事も行われていました。本来なら、水没地域の河川工事はしませんが修復していました。それは、大型ダンプカーを通行させるためにしたのでしょう。
 また、山上の座り込み現場手前には、座り込み現場が新たに設置されていました。座り込み現場は、周りを土砂で囲まれて前回来た時よりますます風が通らなくなっており、雨水が貯まる状況になっていました。このような現場環境ですが、高齢者が反対運動に連日奮闘しています。
 現在の長崎県大石知事は、当選したときには話し合いで解決していくと言っておりましたが、言動がまったく異なっていることが露呈していると感じました。(長崎地連・松永利秋書記長より)

運賃改定とタクシー運転者

【3】国も認めた労働条件改善の正当性

通達の趣旨に従わない 賃下げ・手数料負担NO

 運賃改定時の運転者の労働条件改善の正当性は、国が認めたものです。ここでは、通達などの裏付けを解説します。



改善が不十分なら運輸局が指導

 ノースライドを求める自交総連の長年の運動が実って、2007年3月28日、国土交通省は「一般タクシー事業における今般の運賃改定申請の審査等の取扱いについて」(国自旅第325号)という通達を出しました。
 この通達は、運賃改定の際、ノースライドで賃金が増える分をあらかじめ見込んで運賃を査定し、改定率を決めるという内容で、まさにノースライドの正しさを国が認めたといえる通達です。事業者に賃上げを守らせるために通達内では、(1)事業者は運賃改定時に労働条件改善をすること、(2)改定後に労働条件改善が不十分なときには地方運輸局が指導をすることを明記しています。
 ノースライドを前提に査定して運賃改定率を決めているのですから、「労働条件改善の原資がないからノースライドはできない」などという経営者の言い訳は一切通用しなくなりました。不当なスライド賃下げをねらう経営者がいたら、運輸局・支局に申告して指導を求めることができます。


運輸局は事業者へ指導方針を公表

指導
 上の文書は、13年の運賃改定公示にあたり、東北運輸局が事業者に対して指導するとして公表したものです。
 ●歩合率や足切り額を変えるのはダメ
 「実績における運送収入に対する運転者人件費の割合(歩合率)を維持させること」というのは、運賃改定前と改定後の賃率(歩合率)を変えてはならないということです。
 当然、歩合の率だけでなく足切り額や歩合率が変わる刻み目の額を変えることも許されません。
 ●事故等の運転者負担はなくすべき
 「実質的な労働者負担の軽減や手当て類の創設等これに関連して講じた措置」の公表というのは、車両の設備費や交通事故のときの修繕費など、本来、事業者が負担すべき費用が運転者負担となっている例が多いことから、そのような負担を軽減するべきだという意味です。
 設備投資や企業活動の結果生じたリスクは事業者が負担すべきで、運賃改定の機会に改善せよということです。

賃下げに対して抗議行動を実施

 運賃改定の際にこのような方針を運輸局がわざわざ公表するのは、運賃が上がったら増収分を独り占めするために運転者の賃金を下げる会社があるからです。
 特に今はコロナ危機による経営難を理由に持ち出す事業者が多くみられます。
 今回の運賃改定でも、東京の会社で賃下げを実施もしくは提案したケースが実際に発生し、地連は関東運輸局に告発状を提出し抗議行動を行っています。
 通達の趣旨に従えば、運賃改定後に足切額を上げたり、歩合率を下げたりするスライド賃下げは許されません。賃金支給条件を変えないノースライドを実現し、確実に賃金をアップさせましょう。