多くの組合が闘争継続中
運賃改定で明暗分かれる
2023春闘とりまとめ
抗議の座り込みを行う仲間たち=4月17日、東京・参議院議員会館前 |
自交総連2023春闘は6月8日現在、96組合が要求を提出、うち34組合が回答を引き出し(回答率=35・4%)、31組合が妥結・了解(解決率=32・3%)しています。
いまだ闘争継続中の組合も多く、要求を提出しても回答がゼロであったり、運賃改定の対応については実施後の営収などの状況を見てからと回答を先送りにされた地方もあります。
要求獲得と政策闘争の観点から23春闘についてとりまとめます。
定昇や一時金などかちとる
要求獲得では、宮城の稲荷タクシー支部、石川の冨士ハイタク労組で運賃改定時のノースライドの回答をかちとりました。
一方で、東京の荏原交通労組や飛鳥交通労組は賃下げ提案を受けました。これらの組合については、関東運輸局へ告発状を提出するなど地連としても対応をすすめています(3面に関連記事)。
さらに静岡の浜松タクシー労組では、「ノースライド」「免許返納割引の負担撤廃」の2点を要求しましたが、会社から納得のいく回答が得られず、議論は持ちこしになるなど、各職場で明暗が分かれています。
賃金関連としては、福島の福自交馬陵分会では、定昇500円と奨励金3万円の獲得があり、福岡の庄内観光分会では賃率が60万円以上60%、34万円以上50%、34万円未満42%へ改善、東京の吉祥寺交通労組で乗務員負担の撤廃、事故罰課金内容見直しの成果がありました。また東京の日本交通労組では、業績評価一時金の増額を獲得しました。
その他には、現行賃金体系維持を基本として、高速帰路会社負担拡充、福利厚生、施設改善、職場要求前進、政策合意などの回答がありました。
バス部門では、大阪・佐野南海交通労組の物価対策一時金5万円支給や、福岡・甘木観光労組の精勤手当て増額などをかちとることができました。
自交総連は引き続き交渉をすすめて、要求獲得をめざしてとりくんでいきます。
新たな規制緩和の動向注視
政策闘争では、統一行動として2・1宣伝行動、3・2中央行動を実施しました。
中央行動においては国土交通省・厚生労働省への個人請願行動で約300人を集め、代表による国会議員要請行動、省庁への要請・交渉を行いました。
また、共通の全国的な重点課題と位置付けて、住民の自由な移動を保障する持続可能な地域公共交通をめざす「タクシー労働者の生活保障と地域公共交通維持を求める請願書」にとりくみました。
この署名活動は9月末まで引き続き運動を継続します(下記事参照)。
新たな規制緩和として急浮上したタクシーの協議運賃制度の創設問題、5月に導入されたダイナミック・プライシング問題に対しては、それぞれ4月に反対声明を公表しました。
とくに協議運賃制度については、法案審議中の参議院会館前で4月17日に東京地連、神奈川地本と交運共闘の仲間と共に緊急の抗議の座り込み行動を行うなど強く問題視しており、自交総連として今後の制度の運用を注視していきます。
3年ぶりに情宣活動を再開
乗務員負担は顕著に増大
大阪地連
駅待ちの乗務員へビラを渡す=5月29日、大阪・JR新大阪駅前 |
【大阪】関西・大阪地連は運賃改定が間近に迫る5月29日、梅雨前線と台風2号の影響もあり雨脚が強まる中、宣伝行動を行いました。
JR新大阪駅を皮切りに、阪急・三番街、JR大阪駅、南海・難波駅府内の主要ターミナルやタクシー乗り場前で、自交産業ではたらく労働者の労働環境改善に向けた情宣活動を3年ぶりに再開。タクシー労働者にビラを配るとともに「食える賃金署名」への協力や市民・利用者にも業界の現状打開に向けた運賃改定への理解を求めました。
新大阪駅では、宣伝カーのマイクを握った福井委員長は、「4月18日の未組織宣伝で、新大阪駅で待機する仲間の皆さんにも協力いただいた『職場の実態アンケート』を京都や滋賀でも行った。その結果は、残念ながら未だに事故を起こせば全額負担や高額負担を労働者に課す事業者がいる。さらに、今回の調査で、キャッシュレス決済の手数料を受益者負担として課している事業者が顕著に増えていることが判明した」と告発しました。
続けて、「タクシー業界はいつまで当たり前のように違法な乗務員負担を続けるのか事業者は麻痺しているのではないか。例えばスーパーやコンビニの店員に『使いやすい新しいレジを設置したから経費を払って』などない。タクシー業界だけがこんなバカげたことをしているから業界に人が入ってこない」と糾弾しました。
最後に福井委員長は、「いま全国的に利用者にも喜ばれる地域公共交通を守るため『食える賃金署名』を行っているので協力して欲しい。また、職場で困っていることがあれば一人で悩まず相談して下さい。良い答えを得るために一緒に努力していく。そして明後日から運賃が改定されるが合理化を許さずともにたたかおう」と呼びかけました。
宣伝を終えた松原伸一副委員長は「雨だったので署名はダメだったが、ビラの受け取りは良く、みんな読んでいた。現場に情報がないのが良くわかる。今後も継続的に宣伝し、署名活動も拡げていきたい」とコメントを寄せました。
安心・安全は労働条件改善でこそ
秋田駅では100人以上の署名が集まる
東北地連
通行人へ訴えかける=5月27日、宮城・仙台市役所付近繁華街 |
【東北】東北地連は5月27日、仙台市役所付近の繁華街において、宮城交運共闘の仲間とともに、「安心・安全な地域公共交通・物流の維持は、労働条件の改善でこそ」宣伝行動にとりくみました。この行動に9人が参加しました。
東北地連では、「タクシー労働者に食える賃金を保障しろ」の横断幕やのぼりを掲げて、チラシを配布し、署名を集めました。
宣伝カーから、交運共闘の議長でもある本間地連委員長が、「地域公共交通も物流でも労働者不足が深刻で、このままでは維持できなくなってしまう。新自由主義にもとづく規制緩和を推進してきたことが根本原因であり、この間のコロナにより矛盾が一気に噴き出してしまった。今、必要なことは、再規制であり、労働者に対する支援だ。タクシーの署名にぜひ協力してほしい」と訴えました。
その後、建交労宮城県本部の役員や東北地連役員が、次々と訴えを行い、通行人が足をとめて聞き入る姿もありました。
東北地連では、秋田駅でも署名活動を行っています。タクシー労働者・市民から100人以上の署名を集めており、快く署名してくれる方が大半でした。
より多くの声を国会に
「食える賃金署名」9月まで延長
自交総連は、5月16日に開催した第3回闘争委員会で「タクシー労働者に食える賃金を保障しろ 労働者の生活保障、地域公共交通維持を求める請願書」運動のとりくみを9月末日まで延長することを決定しました。
会議では、ダイナミック・プライシング(変動運賃制度)やタクシーへの協議運賃制度(届出運賃)創設など、タクシー産業全体に関わる問題が新たに浮上したことを討議。
当初、「食える賃金署名」のとりくみは4月末日に集約し、5月中に紹介議員を通して国会に提出することを予定していましたが、情勢の変化に加えて、未組織労働者も含めたより多くのタクシー労働者の声を国会に届けたいという結論に至りました。そして、@「食える賃金署名」の最終集約を9月末日に変更し、秋の臨時国会に提出すること、A署名活動委員としてコ永昌司副委員長を置くことを確認しました(下にコ永署名活動委員よりメッセージ)。
あわせてオンライン署名も期限延長となります。組合員・家族・知人のみならず、未加盟・未組織のタクシー労働者、タクシー利用者など広範な人々を対象に呼びかけるなど、引き続き総力をあげて署名活動にとりくんでいきましょう。
署名活動委員就任にあたって
コ永署名活動委員 |
第3回中央闘争委員会(第7回中央執行委員会)は、「食える賃金署名」活動を9月末まで延長し、とりくみを強化して目標達成にむけて奮闘することを決定しました。
そして、署名活動推進委員に私、コ永昌司副委員長が任命されました。今後は、各地連・地本へ電話などの聞き取りにより実情把握と推進にあたらせていただきます。あらたな規制緩和が推進されるなかで、地域公共交通を維持させるため「食える賃金署名」の活動を職場内のみならず、駅頭での対話や宣伝行動など積極的なとりくみをお願いします。組織の減少に歯止めをかける意味でも、組織拡大にむけて目に見える活動が重要です。そのため本部は各地連・地本と連携を図りながら活動をすすめていきます。
また、県労連や地域労連にも署名活動の要請をお願いします。秋の臨時国会へ集約した署名を提出しますので、1枚でも多く署名を集めようではありませんか。
自交総連がいかにタクシー労働者のために奮闘している労働組合なのか示すチャンスでもあります。共にタクシー労働者の生活保障、地域公共交通の発展をめざし、がんばりましょう
闘争体制を敷いて増収分を獲得
年内には68ブロックで運賃改定の見込み
全国的に乗務員の労働条件改善を理由の主としたタクシー運賃改定がすすみ、22年には8ブロックで実施され、23年には30ブロックでの実施が公表されています。→運賃改定の直近の動き
また、事業者の申請率が7割に達し、すでに手続きを開始しているのは38ブロックとなり、23年内には68ブロックで運賃改定が実施される見込みです。_
こうした動きは、自交総連の23春闘にも大きく影響し、「合理化」として増収分を少しでも多く懐に入れようとする会社と、運賃改定の趣旨を掲げてノースライド+アルファを求める労働者との交渉が多くの職場で行われました。
その中でも、昨年11月に東京の特別区・武三地区で運賃改定が実施され、東京地連では運賃改定の趣旨を守らせる運動構築をしてきました。
22年9月には国土交通省へのレクチャーを行い、改定に対する考え方と姿勢を確認、加盟組合へ「改定の増収分は確実に労働条件改善に充当すること」とした確認書を発出しました。これに基づいて各組合で労使協議が行われ、その結果、多くの組合でノースライド+アルファを獲得した一方で、賃金支給率引き下げを提案する会社もおり、交渉は難航。地連は当該組合と共闘して実行を食い止める運動を実施しています。
賃下げを提案した会社については、すでに関東運輸局へ告発状を提出し、局としての見解と対応を求めましたが、いまだ指導には至っておらず、次の対応を弁護士を交えて協議しています。
組織拡大につなげていく
自交総連内でも、春闘において運賃改定実施に先んじてノースライドを約束した地方もあれば、会社から納得のいく回答を得られず、議論が先送りになった地方もあります。
地連・地本は粘り強い闘争体制を敷いて、納得いく実利・実益のある決着をめざしていく必要があります。
また、本部に運賃改定の対応について未組織地域からの相談が寄せられています。
会社から一方的な「合理化」提案をされて、困っている職場の相談にのることも重要です。こうした相談から組織拡大へつなげていくとりくみも強化しましょう
潜在的需要があるのか疑問
ダイナミック・プライシング反対 ビラ配布運動を実施
長崎地連
乗務員へビラを配布し、説明を行う=5月17日、長崎・西浜松駅付近 |
長崎地連は5月17日、西浜町駅付近でダイナミック・プライシング反対のビラ配布運動を組合員4人で行いました。
当日は朝から晴れ渡り、昼頃からは暑かったので、水分補給と休憩を取りながら、皆でがんばって乗務員へビラの配布と説明をしました。
ダイナミック・プライシングについては連日テレビや新聞などで報道されていましたが、「こんな田舎で潜在的需要があるのか疑問」「田舎の70歳以上の高齢者が配車アプリを使うことができるのか」「高齢者のスマホ利用率を国土交通省は知っているのか」という反応でした。
そして5月18日に松永書記長は、第5回長崎交通圏タクシー準特定地域協議会に参加しました。
そこで、ダイナミック・プライシングの事前確定運賃申請の届けが出されているのか質問すると、長崎陸運支局の課長は「九州運輸支局にはまだどこからも申請は出されていません」と回答。
それを聞いて松永書記長は、「高齢者はスマホを持っていないです。また、若い人はスマホを持っていますが、バス・電車を利用します。高齢者は病院等に行くためによく乗ってくれます」と発言し、このような現状では意味があるのか不明だと主張しました。【長崎地連・松永利秋書記長より】
全労連「労働組合入門 わくわく講座(2023年)」 開講中!
受講を悩むあなたのために学習方法・内容を解説します
6月、全労連「労働組合入門 わくわく講座」が今年も開講しました。
「名前は聞いたことあるけど…」「難しい内容なんじゃないの?」「労働組合のことを今更学ぶのもなぁ」と受講を悩む方のために、学習方法や内容をポイントを踏まえて解説します。
どうやって学ぶ?
具体的な学習方法は、まず専用のテキストを使い、1か月で1章の読了をめどに、全5章を独習します。
テキストには、労働組合について理解してほしいことがコンパクトに書いてあり、コラムや漫画、全国でがんばっている青年の生の声「仲間からの手紙」が掲載されています。
また、インターネット上の受講生サポートシステムを活用し、パソコンやスマホから、テキストの閲覧、任意のチェックテスト、学習促進用のビデオ講座の視聴や質問、意見などを問い合わせることができます。
なにを学ぶ?
学ぶ内容について説明します。
第1章では、人間らしく生き、働くことと労働組合との関係、そして労働組合の機能と役割について学びます。
第2章では、「労働者・労働組合の権利」の基本を、日本国憲法及び労働基準法と労働組合法にもとづいて考えます。
第3章では、労働組合の基本的性格、労働組合の基本的運営について。
第4章では、賃金や労働時間など労働者・労働組合の基本的な要求と重点課題ごとに、現状と課題、基本的な権利についてそれぞれ学習します。
最後の第5章では、ナショナルセンター・全労連について、その運動と組織の特徴について学んで終了となります。
申し込みは本部へ
申し込みは所属する組合を通じて、地連・地本もしくは地方組織から自交総連本部へお願いします。
講座内容のさらなる詳細については、全労連へお問い合わせください。