自交労働者No.977、2023年11月15日

地域公共交通を守ろう

自交産業全体で課題にとりくむ

ライドシェア阻止の特別決議を採択

第46回定期大会

自交総連第46回定期大会=10月17〜18日、東京・全労連会館
自交総連第46回定期大会=10月17〜18日、東京・全労連会館
参加者数

 自交総連は10月17〜18日、東京・全労連会館で、「ライドシェア解禁阻止、地域公共交通を守ろう」をスローガンに第46回定期大会をZOOM併用で開催しました。
 来賓として、全労連の小畑雅子議長、交運共闘の山崎正人副議長、顧問弁護団の菅俊治弁護士と中村優介弁護士、日本共産党の高橋千鶴子衆議院議員が会場へ駆けつけ、激励あいさつをしました。
 質疑討論を行った後、2023年度運動方針や大会宣言、ライドシェアの解禁を阻止する特別決議を満場一致で決定しました。
 自交総連は今後これに沿って、秋季年末闘争を皮切りに、毎月第一週に「ライドシェア解禁阻止」の宣伝行動を全国各地で実施し、危険性を利用者、国民に訴え理解を求めるとりくみを進めていきます。

庭和田委員長あいさつ


庭和田新委員長
庭和田新委員長

 やはり『ライドシェア反対』について言わなければなりません。
 唐突に『神奈川版ライドシェア』などと言い出した黒岩知事や菅前首相、河野デジタル大臣などが一斉に声を上げており、いま本当に危ない状況にありますが、労働団体も事業者もアクションが遅すぎます。
 そんな中でアクションをしているのが私たち自交総連です。10月10日には、急きょ神奈川県庁前に神奈川や東京の仲間が集まり、100人が大きく『ライドシェア反対』のタオルや横断幕を掲げました。この抗議行動については、黒岩知事も直後の会見で触れざるを得ず、全国の労働組合から反対の声が上がっていると述べました。
 私たちは県庁の担当者と意見交換しましたが、説明を聞けば聞くほど、現行法の枠内でできるものを、なぜ『神奈川版ライドシェア』としてわざわざやろうとしているのか理解できませんでした。
 「タクシーが足りないからライドシェアだ」ということがしきりに叫ばれ、マスコミも偏向報道をしています。
 私が大きく怒りを感じるのは、タクシーや観光バスなどの業界を苦しい状態に追いやったのは誰なのかということです。そして自分たちの失政のツケを、また私たちに払わせようとしているのです。
 10月20日に臨時国会が召集されて、そこでこの問題について、法律を変えるのかどうか議論されると思われますが、しっかり注視していかねばなりません。その上で、いまタクシーを使ってくれている人たちへ、ライドシェアが解禁されればタクシーの代わりとして使おうとする利用者に危害が及ぶことを周知させ、支援を得るという課題を、自交総連のみならず自交産業全体でとりくむことができるかどうかがこの先の命運を分けます。
 また、労働組合ってなんのためにあるんだろう、ともう一度問い直さなければならない事態になってきています。自分たちの問題だけ解決すればよいのではなく、社会全体が良くなるように考えていくことが労働組合としての責務であるのではないかと強調したいと思います。


来賓あいさつ


共にRS解禁阻止の運動拡げる

小畑議長
小畑議長

 全労連・小畑雅子議長 庭和田委員長の強い怒りを私も共有したいと思います。ライドシェア解禁阻止の課題はタクシー労働者の皆さんにとどまらず、国民の安心・安全な交通手段の確保の課題でもあります。全労連としても自交総連と力を合わせてライドシェア解禁阻止の運動を拡げていきたいと思います。



国が支援するとりくみが重要だ

山崎副議長
山崎副議長

 交運共闘・山崎正人副議長 国民の移動する権利を守るために公共交通は必要不可欠です。タクシーは鉄道やバスが行き渡らない地域をカバーするような交通の毛細血管の役割を果たす、なくてはならないものです。その労働者がちゃんとした賃金を得られるように国が支援するとりくみが重要だと思います。



世界ではRS再規制の流れに

菅弁護士
菅弁護士

 顧問弁護団代表・菅俊治弁護士 海外では一度ライドシェアが導入されても、結局ドライバーに労働者性があるということで再規制がされています。そういう意味では、世界ではすでにライドシェアについての大勢は決しており、日本でいま行われている議論はもう何年も遅れた話だと私は考えています。



自家用有償旅客運送拡大を危惧

高橋衆院議員
高橋衆院議員

 日本共産党・高橋千鶴子衆院議員 政府は自家用有償旅客運送を拡大しようとしています。地域制限をなくすことで無制限にやろうというものです。ある業者からは「自家用有償旅客運送は未来のライドシェアだ」という声もあり、こちらの動向を危惧する必要があります。




「世論を味方にしていく」

ZOOM含めて10地方13人が発言

大会討論

職場の権利闘争を拡げる

1 吉根さん
1 吉根さん

 1 北海道・吉根清三さん 権利闘争にご支援いただきありがとうございました。職場の権利闘争なくして労働者への求心力はないと思いますので、これからも色々な政策闘争と合わせて権利闘争を拡げていきたいです。さらにもっと積極的に政治を変える闘いを前面に打ち出していきたいと思っています。



乗務員負担の改善に成功

2 月村さん
2 月村さん

 2 東京・月村隆浩さん 東京地連は23春闘においてノースライド+アルファに力を入れてとりくんできました。結果としてほとんどの職場で乗務員負担を改善させることができ、営収も増加しました。全国で拡がる運賃改定がこの東京のような結果につながることを祈っています。



RS抗議行動繰り返すべき

3 山本さん
3 山本さん

 3 神奈川・山本聖一さん 県庁前における抗議行動は事故もなく一定の成果を感じられました。ライドシェア解禁は根底から安心・安全を奪うものであり、論点は「タクシーに乗れない」という意味不明なものです。今後もSNSでの発信も課題とし、抗議行動を繰り返すことが必須であると考えています。



運賃改定後の影響を精査

4 松田さん
4 松田さん

 4 静岡・松田健一さん 9月に一部の静岡地区で運賃改定が実施されたました。やむを得ないといった反応で乗り控えは感じませんが、今後の営収への影響も含めて精査していかなければならないと思っています。



インボイス廃止へ今後も闘う

5 秋山さん
5 秋山さん

 5 東京・秋山芳晴さん インボイスの廃止を求めて議員事務所に相談し、9月に日本共産党の田村議員らと共に直訴を行い、記者会見も開かせてもらいました。「なぜ差別的な取扱いが起こるのか」と訴え、多数の報道関係者から取材を受けることになりました。今後も廃止に向けたたかっていきますので、ご支援ください。



コロナ手当どう決めてるか

6 松永さん
6 松永さん

 6 長崎・松永利秋さん 会社が累進歩合制度になる賃金体系を提案してきました。私はそれを拒否しましたが、会社は「社労士が大丈夫だと言っている」の一点張りで撤回しようとしません。そして本日、会社に労基署が監査に入り、後日陸運局も来るでしょうから営業停止は免れないと思われます。今後も動きを注視します。



電動KBの安全性を問題視

7 岸田さん
7 岸田さん

 7 東京・岸田正勝さん 10月より電動キックボードの規制緩和が行われました。安全性に問題がある件に対して地連の道対部は警察庁・警視庁と交渉を行いましたが、あいまいな回答しか返ってこない状況です。毎度のことながら国は労働組合や国民の意見を聞かず、重大な事案が発生しないと動かないように感じられます。



全国の仲間に学び組織拡大

8 守重さん
8 守重さん

 8 山口・守重正一さん 山口地連は現在首の皮一枚でつながっているような状態になっています。組織拡大にとりくもうとした矢先にコロナ危機が起こってしまいました。全国の仲間の闘いに学び、これから山口地連は全力で組織拡大にとりくんでいきます。



RS阻止へ一緒にたたかう

9 杉原さん
9 杉原さん

 9 鹿児島・杉原良二さん コロナ危機もだいぶ緩和され、街に人が戻ってきました。営収も回復している状況です。需要が増えてきてお客さんに対応できないという状況も出ています。鹿児島でもライドシェアについては危惧しているので皆さんと一緒にたたかいたいと思っています。



これからも裁判へご支援を

10 中村さん
10 中村さん

 10 福岡・中村朗さん 福岡地連は長期争議を5件抱えていました。なるべくなら裁判は避けたいと考えていますが、事業者は確信犯的に平然と法律を無視しています。事実を明らかにするためにやむを得ず裁判をしている状況です。これからも争議へのご支援を願います。



3人が総括討論

組合員の3倍の署名集まる

11 斎藤さん
11 斎藤さん

 11 東北・斎藤哲也さん  この間の東北地連のとりくみと今後の闘いについて報告します。地連では23春闘で「食える賃金」署名のとりくみを強化し、秋田・山形・福島・仙台の各駅で横断幕を拡げ、多くの労働者と対話し、組合員数の3倍の署名を集めることができました。対話の中で、「労働組合がなく情報が入らぬまま最賃も支払われず生活が苦しい」などの切実な声が寄せられました。
 また運賃改定問題では、ノースライド+アルファを求める闘いを展開しました。この秋闘でも、引き続き要求していきます。また、若い人が入るように固定給のある賃金体系を求めてきましたが、ひとつの職場で検討することが決定しました。これを確実なものにしながら、全体へ拡げていきたいと思います。



組織拡大リーフレット配布

12 坪倉さん
12 坪倉さん

 12 東京・坪倉秀樹さん 東京では昨年11月の運賃改定を機に労働条件改善をめざしましたが、一部事業者に改定の趣旨を逸脱した「合理化」の動きがあり、当該組合と共に告発行動などを行い、現在奮闘しています。
 また、この間に獲得した成果を記した組織拡大リーフレットを作成し、駅頭で配布し、コロナ禍で失った仲間を迎え入れる運動にとりくんでいます。



早急にRS阻止署名運動を

13 黒井さん
13 黒井さん

 13 関西・黒井真司さん ライドシェア解禁問題は切羽詰まった状況であり、早急にネットも含め署名運動を行う必要があります。いまが瀬戸際、最終決戦のような気持ちでやっていかなければならないと考えています。ここで守り切れなかったら本当にタクシーは壊滅的なダメージを受けることになります。私たちの労働環境だけの話ではなく、市民の安心・安全な交通手段が失われることになります。これがライドシェアの一番の問題点です。組合員の間で情報を共有し、世論を味方にしていくことが大事だと思います。


ライドシェア解禁阻止は最終決戦

請願署名にもとりくむ

執行部答弁

城書記長
城書記長

 13人から発言がありました。北海道からは、継続的な職場での権利闘争で勝利した報告。東京の個タク労組は、インボイス制度導入を強要される中で、マスコミを活用した反対運動の結果、チケット換金中止を継続させる成果を得たと報告がありました。運賃改定では、実施後運送収入が上がっているところと、依然として山口、鹿児島からは厳しい状況が続いていると報告がありました。
 ライドシェア解禁については、最終決戦の位置づけで組織の力を総動員してたたかわなければなりません。秋闘から毎月第一周に宣伝行動を全国で実施してライドシェアの危険性を利用者・国民に訴え、理解を得る行動にとりくんでいきます。その際に活用できるよう宣伝カーから流せる音声も作成していきます。また新たに「ライドシェアではなく、地域公共交通の維持を求める」請願署名にもとりくんでいくこととします。後には引けない闘いということを意思統一して奮闘していきましょう。

今がタクシー産業の分岐点

 岸田文雄首相は10月23日、召集された臨時国会で所信表明演説を行いました。
 その中で、『デジタル行財政改革』として「子育て、教育、介護などの分野でのデジタル技術の活用を、利用者起点で進める」とし、「地域交通の担い手不足や、移動の足の不足といった、深刻な社会問題に対応しつつ、ライドシェアの課題にとりくむ」と述べ、自ら現場で奮闘する各分野の方々の生の声を聞きにいくと視察の意向を示しました。

連日ライドシェア議論

 この岸田首相の所信表明を受け、国会ではライドシェアについての議論が連日行われています。
 10月25日の代表質問では、日本維新の会の馬場信幸代表が「ライドシェアに注目が集まっている。自由民主党、業界団体、国土交通省の抵抗が強く先行きが不透明。規制緩和を強力に推し進めてほしい」と岸田首相へ述べました。
 さらに10月27日に行われた衆議院予算委員会で、自民党の小泉進次郎議員が「現在のタクシー不足感をいかに解消していくか、前に勧めていくかが必要である」と詰め寄りました。
 それに対し河野デジタル担当大臣は、「10月11日よりデジタル行政改革会議を立ち上げ、16日から議論をスタートさせている。同会議では、自動運転、タクシーの規制改革、ライドシェアについて検討され、年内に報告を行う」と答弁しました。
 国土交通省の現状のスタンスとしては、斉藤鉄夫国交相は10月27日の定例会見において、過疎地にとどまらず都市部、観光地など地域特性を踏まえ利用者の移動需要に交通サービスが応えられるよう早急にとりくむとしています。
 記者からのバス・タクシーが中心で自家用車のライドシェアは補完なのかとの問いに対しては、バス・タクのドライバー不足と地域の自家用車・ドライバーの活用双方の視点を持つと述べました。

利用者に危険性伝える

  タクシー産業にとって、今年の臨時国会と来年の通常国会が事実上の分岐点となることが確実です。
 自交総連は、「タクシー不足」を口実に白タク=ライドシェア解禁への道が開かれようとしていることに強い危機感を抱いており、断固反対の運動を進めていきます。
 安心・安全な地域公共交通としてのタクシーとそれを担う労働者の雇用を守るために、ライドシェアの危険性をつまびらかに伝えて、国民と利用者を巻き込んだ幅広い闘争の強化を行わなければなりません。


ライドシェア反対の記者会見行う

「ライドシェア反対」の記者会見を実施=10月31日、東京・衆議院第1議員会館
「ライドシェア反対」の記者会見を実施=10月31日、東京・衆議院第1議員会館

 自交総連は衆議院第1議員会館で10月31日、コ永副委員長ら4人が出席して「ライドシェア反対」記者会見を行いました。
 城書記長は、ライドシェアは白タク行為であり、過疎地域で運行している自家用有償旅客運送とはまったく違うものと述べ、混同するような発言を繰り返す政府や推進派、誤解を招く報道をするマスコミを批判しました。
 また、海外で数多くの事件や事故を起こしているライドシェアが日本で導入されれば、地域公共交通を担うタクシー労働者の収入は減り、タクシーの崩壊につながると指摘しました。利用者の移動する権利を守るのは国の責務であり、補助金の増額と共に、安心・安全な地域公共交通を支える運転者の労働条件の改善が急務だと訴えました。

「神奈川版ライドシェア」に反対

黒岩知事へ抗議の要請書を提出

「ライドシェア反対」のタオルを掲げる参加者=10月10日、神奈川・県庁前
「ライドシェア反対」のタオルを掲げる参加者=10月10日、神奈川・県庁前

 自交総連は神奈川地本の仲間を中心に10月10日、神奈川県庁前で抗議宣伝行動を実施しました。
 神奈川40人、東京53人、本部から庭和田委員長、城書記長、石野常執(埼玉地連委員長)の他、神奈川県労連山田事務局長、高橋由美弁護士、はたの君枝前衆議院議員、大山奈々子・木佐木忠昌県議会議員が駆けつけ、全体で100人以上の行動となりました。
 行動は昼休みの時間帯に焦点を当て、埼玉、東京の仲間とともに庁舎の南北二つの出入り口に分かれ、本部で作成した「ライドシェア反対」のタオルを掲げて通行人に訴えました。
 庭和田委員長は、「ライドシェアは、世界的に問題や事件を引き起こしている。自家用有償旅客運送でできることをライドシェアでやるのか分からない」と訴え、「観光地でタクシーが不足していると言及しているが、オーバーツーリズムの対処など国が考え解決させなければならない」と強調しました。
 抗議行動の後、庭和田委員長、神奈川地本冨松委員長、同佐藤書記長、城書記長、神奈川労連山田事務局長は、「神奈川版ライドシェア」推進の撤回を求める要請書を提出しました。
 同日に行われた定例記者会見で黒岩知事は、先月と本日(10月10日)に全国的なタクシー労働組合から抗議文が提出されていることを公表。その内容は「ライドシェアを推進することは、利用者等の命を危険にさらすのみならず、公共の福祉に反する」ものと紹介し、「神奈川版ライドシェア」は、海外ライドシェアと異なり、タクシー事業者の協力を得て、タクシー不足を解決するものと説明しました。

神タク協と意見交換

 神奈川地本・冨松委員長、佐藤書記長と本部城書記長は10月19日、神奈川県ハイヤー・タクシー会館で、神奈川県タクシー協会の三上弘良専務理事と今般の「神奈川ライドシェア導入」について意見交換を行いました。
 三上専務理事は、「ライドシェアという名称の付いたものでは議論できない。運輸局も同様の考えと聞いている。タクシー会社に協力が求められているが運行管理や事故対応等をする場合、責任も課せられる。どれだけの採算性があるかが課題となる。需要が少ないのであればタクシー会社が直接オーダーを受け配車した方が効率的だ」と述べました。
 組合は、「夜の時間帯にタクシーがいないとされている。導入要因を払拭できる体制を早急に組むことが重要であり、シフト変更や計画配車などオーダーに応えられる体制を費用かけても取ることが必要」と求めました。
 同専務理事は、「オーダー、キャンセル数などのデータを開示してもらうことで、近隣事業者に何台配置要請するのか決まってくる」と回答しました。
 また、「現在、新規採用者も増加傾向にあり、少し時間をいただければ乗務員の確保などが改善されると展望を持っている。話題となっている2種免許の緩和については、取得期間を短縮してほしいが、安全面からも1種免許で良いとは考えていない」と述べました。

地域公共の維持求めて

食える賃金署名 賛同した議員らへ手渡す

笠井亮議員(写真一番左)へ署名を手渡す=10月31日、東京・議員事務所
笠井亮議員(写真一番左)へ署名を手渡す=10月31日、東京・議員事務所

 自交総連の代表は今年1月からスタートした「タクシー労働者に食える賃金を保障しろ! 労働者の生活保障、地域公共交通維持を求める請願書(通称・食える賃金署名)」を10月31日に、趣旨に賛同した議員らへ手渡しました。紹介議員によって衆議院・参議院の議長へと提出されます。
 署名にとりくんでいただき、ありがとうございました。