白タク反対の声上げていく
激励を力にこれからも奮闘
2024春闘とりまとめ
シュプレヒコールをあげる自交総連の仲間=6月5日、東京・国会議事堂前 |
自交総連2024春闘は7月5日現在、72組合が要求を提出、うち45組合が回答を引き出し(回答率=62.5%)、35組合が妥結・了解しています(解決率=48.6%)。
政策闘争と要求獲得の観点から24春闘についてとりまとめます。
RS阻止闘争手ごたえあり
政策闘争では、ライドシェア解禁阻止闘争として、毎月第一週の宣伝行動と署名運動にとりくみました。
1月30日のライドシェア解禁阻止1日行動を皮切りに、100人超規模の中央行動を3月・5月・6月・7月にそれぞれ行いました。
国会議事堂前での宣伝や内閣府・警察庁への要請交渉、デジタル庁前での抗議行動などを実施。ライドシェア全面解禁(法制化)へ待ったなしの情勢の中、国会議員へ「安心・安全な地域公共交通を守る請願書」を提出し、規制改革推進会議のメンバーへ抗議のFAX送信をいっせいに行うなど、組織の総力をあげて白タク阻止へ声を上げました。
また、各地連・地本においても、北から南まで連日のように宣伝行動と宣伝カーでの音源流しを実行しています。タクシー運転者やバス運転者、通行人の反応はこれまでになく良好で、「署名に協力させてほしい」「反対の声を上げているのは自交総連だけだ」「がんばってくれ」と驚くほど多くの激励をもらっています。
こうした手ごたえを力にして自交総連は春闘以降も阻止闘争を強めていきます。
「RS新法をつくるな」と訴え
6月5日実施のライドシェア解禁阻止行動では、朝10時から衆議院第2議員会館の周囲を「ライドシェア反対」の看板やプラカードで横一列に埋め尽くしました。
庭和田裕之中央執行委員長による主催者あいさつの後、日本共産党の高橋千鶴子衆議院議員、全労連の清岡弘一副議長、交運共闘の横内義幸国土交通労組副委員長、全労働の南和樹副委員長が連帯のあいさつを行いました。
続いて、東北・東京・東京個人タクシー労組・神奈川・静岡・福岡の代表者が各地の状況を交えながら決意表明し、国会議事堂へ向けて「ライドシェア新法はつくるな!」と参加者全員でシュプレヒコールを行いました。
7月10日は、デジタル庁前で抗議の中央行動を実施しました。
営収上昇も交渉は長期化
要求獲得では、神奈川の芙蓉交通支部が1万7500円の基本給増を獲得しました。
背景に運賃改定での大幅増収があります。
全国的に営収は上昇傾向にありますが、会社が賃上げに消極的で納得できる回答を引き出せず、交渉が長期化しています。4月からは、いわゆる「日本型ライドシェア」の運行が各地で始まっており、この影響が運転者の賃金にどのように表れるか見極めていく必要があります。
その他には、現行賃金体系維持を基本として、賃率引き上げ、解決金支払い、高速帰路会社負担拡充、福利厚生費支給、施設改善、交通費改善、正月手当・無事故手当改善、職場要求前進、ライドシェア阻止の共同合意などの回答がありました。
顧みられぬ安心・安全
5月31日公表の「規制改革推進に関する答申」では、意見別紙として、「デジタル技術を徹底的に活用した真のライドシェア事業を実現する法律制度等について(骨格案)」が盛り込ました。
規制改革推進会議の中でも、とくにライドシェアの全面解禁を強行に求める委員らの意見を丸呑みにしたものです。
今回「骨格案」で示した「ライドシェア」という輸送方法の導入は、タクシーと同じく公道を走り利用者を有償で目的地まで運ぶものでありながら、まったく異なる規制を並立させるものです。
安心・安全を顧みず営業の自由を優先した白タク=ライドシェア事業は、公共の福祉に資するものではありません。
ライドシェアは、タクシー業界を破壊し、利用者利便を悪化させます(例=営業区域の自由・変動運賃・利用者の選別・業務委託契約によるドライバー確保など)。
問題点を整理する
1 責任の 所在があいまい
「骨格案」では、運行管理の外部委託を可能とする規定と、その受託者に行政上の責任を負わせることを求めています。
外部団体を事業に噛ませることにより、民事・刑事上の法的な最終責任があいまいになる懸念があります。
2 交通弱者を配車拒否?
利用者を選別するものとして、「事業者に対して運送引受義務を課さない」という規定が明記されています。
そもそも車イス対応の車両が運用されるのかも不透明であり、これでは高齢者や障がい者などの交通弱者の配車拒否を誘導しかねません。
全日本視覚障害者協議会(全視協)の藤野総務局長は、自交総連の中央行動で「電車やバスと並んで、タクシーは私たちの外出になくてはならないもの」と語りました。誰もが平等で安心・安全に利用できる乗り物が公共交通です。
3 都市部に車両が集中
自家用車活用事業=「日本型ライドシェア」を引き合いに、ライドシェアの法制化に当たっては、地域的制限を設けるべきでないとしています。
海外の事例からも、需要の高い地域に車両が集中し、必要な地域の不足状態が発生することは明らかです。そもそもの目的である全国的な移動の足の確保は果たされません。
4 利益追求だけの施策
「骨格案」では、ライドシェア・ドライバーを自由かつ柔軟な働き方だと謳い、あたかも独立した個人事業主のように位置づけています。
しかし実態は、厳格化する労働関係法令の規制を逃れるための方便であり、ワーキングプア層を増加させるだけのものです。
また、ドライバーの収入増につながるとして、ダイナミックプライシングで需給調整を行うことを推奨しています。「ドライバー確保」を口実にして、ライドシェア事業者に都合のよい利益のみを追求した施策を通そうとしています。
抗議のFAXいっせい送信
自交総連は6月、こうしたライドシェアの全面解禁を強行に求める規制改革推進会議の委員へ以下の抗議文をいっせいにFAX送信しました。
規制改革推進会議の地域産業活性化ワーキンググループの有志委員は5月15日開かれた規制改革推進会議に「ライドシェアの法制度に係わる論点についての意見」を提出した。
「意見」では、一部で一時的に発生した、タクシー乗務員不足の現状につけこみ、白タクビジネスを解禁するための利己的な論法が展開されている。タクシー労働者と利用者の安心・安全の観点から、「意見」に異議を唱え満身の怒りをこめて抗議するものである。
ライドシェアなる輸送方法は、タクシーと同じく公道を走り、利用者を有償で目的地まで運ぶとされているが、その内容は似て非なるものである。タクシーに厳しい規制がかけられているのは、地域公共交通の役割を果たし、誰もが平等で安心・安全に利用できるようにするためである。しかしライドシェアは、全国的な移動難民の解消を理由としながらも、当初から定義を曖昧にし、人命よりも「営業の自由」を上に置こうとしているにすぎない。
「意見」では、自由な働き方を推奨して都合のよい労働者を集めて事業を行おうとしているが、利用者を選別するものであり、公共の福祉に値するものではない。
02年タクシーへの規制緩和やコロナ禍、そして大規模自然災害にあっても、タクシー労働者は被害をうけながら、今日まで地域公共交通を支えてきた。その役割を認識せず、大企業が空前の利権を獲得するライドシェアの法制度を求めるとは言語道断である。
タクシーに限らず、規制緩和の害悪は多くの産業分野に及んでいる。
わたしたちは規制緩和を進める政治と決別し、自動車交通労働者の権利と利用者・国民の利益が等しく守られる地域公共交通を実現させるため行動し、今後も白タク・ライドシェアに断固反対していく。
回数重ねる毎に拡がる連帯
ライドシェア全面解禁阻止へ
京都・共闘宣伝
マイクを握る庭和田関西地連書記長(中央) |
ライドシェア阻止へ共闘の横断幕を掲げる |
【関西】ライドシェア全面解禁阻止の一点共闘で始めた「共同闘争」は6月26日で、4回目となりました。
今回はJR京都駅烏丸口と京都市役所前で街宣を行い、両所での司会を洲見会長が務めました。
総勢30人以上となり、京都の個人タクシー6団体(みらい京都、市個人、協京、昌栄会、互助、楽友)で組織される京都個人タクシー団体協議会(会長=洲見雅義・個人タクシー互助協組理事長)と、全自交京都地連(櫻井邦広委員長)、自交総連京都地連(松田隆司委員長)、そして初参加の私鉄関西ハイタク労連(阪急)の仲間も駆けつけました。
そして、大阪タクシー協会の坂本篤紀(東宝・日本城タクシーG代表)副会長や京都総評の柳生剛志事務局長も参加しました。
はじめに、全自交京都地連の成田次雄書記長が「2種免許を持たない素人ドライバーが片手間で行うのがライドシェア。事故に遭った場合に補償も含め利用者は守られるのか」と指摘し、「こんなものに家族の命を預けることができるのか」と問題提起しながらライドシェアの危険性を訴えました。
大タ協の坂本副会長は、ライドシェアを始めた米・カリフォルニアでの実態について「ライドシェアの関係で車の保険料がタクシーの10倍になった、理由は単純に交通事故が多いから。ライドシェアであなたの命をすき間バイトやタイミーに預けて良いのか」などと市民に呼びかけました。
弁士に日個連近畿支部の藤川氏、京都個タク協昌榮会の田中理事長や自交総連関西地連の庭和田書記長が市役所前でも訴えました。
ライドシェア新法の結論時期は言及なし
「骨太の方針2024」閣議決定
政府は6月21日、「経済財政運営と改革の基本方針2024」(骨太の方針)を閣議決定しました。「地方創生及び地域における社会課題への対応」の項では、デジタル行財政改革とりまとめに基づき、「いわゆるライドシェアを全国で広く利用可能とする」と明記されています。
デジタルを活用した全国の移動の足不足の解消に向けて次の二つのとりくみをあげています。
@自家用車活用事業等のモニタリングを進めて検証を行い、各時点での検証結果の評価を行う。
Aタクシー事業者以外の者が行うライドシェア事業について、内閣府及び国土交通省の論点整理を踏まえ、法制度を含めて事業の在り方の議論を進める。
「ライドシェア新法」の結論時期への言及はありませんでした。
結論時期については、「次期通常国会への法案提出も視野に、年末に向けて法案化作業を直ちに開始すべき(規制改革推進会議)」、「結論の期限を設けないということにならないよう与党でもしっかり議論しないといけない(自民党・小泉進次郎議員)」、「ライドシェア新法など必要ない(自民党・渡辺博道ハイタク議連会長)」などと思惑が入り乱れています。
また、全タク連は6月25日の通常総会で、「ライドシェア新法不要」の決議を採択しており、タクシー業界が利用者起点の「国民の足の確保」を推進する中、公共交通を破壊するライドシェア新法は不要としました。
危険な白タク=ライドシェア
B 各国の白タク=ライドシェア制度を比較
タク運転者が危険なものは危険と声を上げる
※ここでは、ライドシェアの定義を左のとおり扱います。
今回は諸外国で導入されているライドシェア制度の概要をみていきます。(参考元=国立国会図書館刊行の「ライドシェアをめぐる論点〜諸外国の制度比較を中心に」)
代表例として、アメリア・イギリス・中国・フランスの比較一覧をまとめました。
いずれの国も、@運転者の犯罪歴チェック・A定期的な車検・B商用保険への加入が義務付けられています。
当局による規制という観点では、アメリカは運行管理上の義務をプラットフォーム事業者にのみ課すことで、運転者の管理を委ねていると言えます。
一方、他の三か国では、運転者自身に登録や車両整備・運行管理を義務付け、営業を行うにあたって交通法規に関する試験を課すなど、当局が運転者を厳しく管理・規制しています。利用者の安心・安全のために、普通運転免許に加えて、独自免許のような許可証の取得を運転者に義務付けているのです。
また、プラットフォーム事業者と運転者の間に雇用関係があるかについては議論が続いています。イギリスでは法廷闘争を経て、一定の労働者性が認められつつあります。
タク運転者の反発でウーバー規制
フランスでは、VTC(運転者付き運送車両)と呼ばれる制度でライドシェアを規定しています。これは、アプリによる事前予約制で、流し営業は禁止されています。個人タクシーの派生型のような位置づけです。
VTCは、2009年にタクシー不足を解消するため、観光目的に限定して導入。14年に観光以外の運送に拡大されることになりました。
ウーバーはこの規制緩和と同時に、許可証のない運転者が自家用車で旅客輸送する「ウーバー・ポップ」という格安サービスを開始し、100人に満たなかった運転者を4000人に増員しました。
これに対してタクシー運転者によるストライキや暴動などの抗議行動が発生し、当局も「これはVTCではなく違法タクシーだ」と反発。ウーバーはサービスの停止を余儀なくされました。
2017年の欧州司法裁判所の判決以降、フランスでは、ウーバー等によるライドシェアはタクシー法規に準ずる形で規制されています。
昨日のフランスは明日の日本?
交通政策上のライドシェアの位置づけは各国で異なりますが、フランスの変遷は日本の白タク・ビジネスの現況を思わせます。
フランスでは、タクシー運転者が大々的に声を上げたことで、既成事実をつくろうとしたプラットフォーム事業者をはね返すことができました。タクシーの補完として導入した制度を突破口としようとするなど、昨日のフランスは明日の日本です。
物事の本質をかく乱する動きに惑わされることなく、危険なものは危険だと大きく抗議の声を拡げていくことが重要です。