自交労働者No.986、2024年8月15日


ライドシェアは断じて許さない

シェアリングエコノミー協会・デジタル庁前で宣伝

7・10 RS解禁阻止中央行動

デジタル庁へ向かってシュプレヒコールする仲間たち
デジタル庁へ向かってシュプレヒコールする仲間たち

 自交総連は7月10日、「7・10 ライドシェア解禁阻止行動」を実施しました。
 今回は、公に対してライドシェアの利便性だけを広め、その裏の危険性をひた隠しにして全面解禁を主張している推進派へ抗議の意を表明するために集まりました。
 午前10時から、シェアリングエコノミー協会前(ザ・パークレックス平河町)で街頭演説を行いました。
 庭和田裕之中央執行委員長が口火を切り、協会の代表理事である石山アンジュ氏が危険性を伏せてライドシェアはとにかく便利であるから導入すべきとTV番組でアピールしていると批判。続くコ永昌司副中央執行委員長は、シェアリングエコノミーは貧困ビジネスの温床となっており、ライドシェアも含めて社会問題化していると強調し、通行人へ訴えかけました

公共交通を守ることに目を向けろ

 11時から開始したデジタル庁前(ガーデンテラス紀尾井町)での宣伝行動には約70人が集結し、横断幕を何枚も掲げました。通行人にビラを配布しながら、宣伝カーから「ライドシェア解禁を推進するな」と河野太郎デジタル大臣へ訴えました。


 ▽庭和田裕之中央執行委員長 「コロナ危機によって一部発生したタクシー不足を補うためにはライドシェアだ」と強硬に主張しているのが、河野太郎デジタル大臣たちです。タクシー業界が弱ったのであれば、白タクではなく公共交通を守ることに政治は目を向けるべきです。自交総連は、どのような形態であってもライドシェアは駄目だ、と強調し、断じてライドシェアは許さないという反対の声を今後も上げていきます。
 ▽内田大亮常任執行委員 世界中で白タクは再規制されており、「ライドシェアは危ない」ということは立証されています。なのになぜ今、日本に入れようとしているのか。河野太郎デジタル大臣に強く抗議します。ライドシェアに対する渡航の注意喚起をしたのは当時外務大臣だった河野氏自身であるにもかかわらず、デジタル大臣になったらライドシェアを導入しようとするなど大いなる矛盾です。私たちはライドシェアを阻止するまでたたかい続けます。
 ▽冨松達也常任執行委員 ライドシェア全面解禁を推進する河野太郎デジタル大臣、小泉進次郎衆議院議員、そして黒岩祐治神奈川県知事、彼らはみな神奈川県出身です。神奈川県三浦市で実証実験されている「かなライド」はほとんど乗車する人はいません。しかも今、県全域でタクシー乗務員は非常に増えており、タクシーが足りないという話はすでに終わったことだと言えます。ライドシェアなんてものを入れる必要はありません。
 ▽コ永昌司副中央執行委員長 河野太郎デジタル大臣へ「ライドシェアは必要ない」という声を皆さんと共に届けたいと思います。ライドシェア解禁は日本のIT企業がビジネスチャンスとして狙っているだけです。彼らは明確な根拠も示さずタクシーが足りないと声高に叫び白タク導入を進めています。河野大臣には国民とタクシー乗務員の怒りの声を真摯に受け止めていただきたいと思います。

ライドシェア新法なんていらない

市民・観光客に訴える

京都・労組共同闘争 ライドシェア全面解禁阻止宣伝

ライドシェアの全面解禁阻止を横断幕でアピールする仲間=7月26日、京都・市役所前
ライドシェアの全面解禁阻止を横断幕でアピールする仲間=7月26日、京都・市役所前館

 【関西】7月26日、「ライドシェア全面解禁阻止」の一点共闘で始めた「京個・労組共同闘争」は5回目となり、JR京都駅烏丸口と京都市役所前でライドシェアの問題点を宣伝カーから市民・観光客に訴えました。
 今回の共同闘争には、京都の個人タクシー6団体で組織される京都個人タクシー団体協議会(会長=洲見雅義・個人タクシー互助協組理事長)と、全自交京都地連(櫻井邦広委員長)、自交総連京都地連(松田隆司委員長)、そして京都総評の柳生剛志事務局長や建交労京都本部の早田さんなど総勢20人が応援に駆けつけました。
 京都市役所前で組合側は、全自交京都地連の櫻井委員長が弁士を務め、道路運送法第78条の趣旨を説明したうえで、「国・国交省は4月から2号・3号をねじ曲げ、日本版ライドシェアと称して新たな運用を始めた。米国型ライドシェアの全面解禁を阻止するためだとのことだと思うが、第1種免許に旅客輸送をさせるのは問題であると同時に、このとりくみは後世に残る汚点だ」と糾弾し、「安全な京都、公共交通を守るため、皆さんのお力をお借りしたい」と呼びかけました。
 続いて、自交総連の松田委員長が「市民の皆さん、どうかライドシェア推進論者や一部の族議員が推し進めようとしている利用者の安心・安全を脅かす『ライドシェア新法』などいらない、市民・利用者が求めているのは安心・安全なタクシー、バスであるとの声を上げていただきたい」と訴えました。


交通行政ねじ曲げる旅客輸送はNO

安心・安全の姿勢を改めて問い質す

 自交総連は、交通行政をねじ曲げた旅客輸送はライドシェア全面解禁の歯止めになるどころか後押しするものになると考えています。8月27日に本部代表による要請交渉を実施し、内閣府と国土交通省へ安心・安全への姿勢を改めて問い質します。


規制改革推進会議でRS議論を再開

 規制改革推進会議は7月29日、地域産業活性化ワーキング・グループの会合を再開しました。
 通常WGは秋口から再開されますが、来年の通常国会での「ライドシェア新法」の法案成立をもくろむ政府・財界の推進派の求めによって前倒しされたものです。
 会合では、@自家用車活用事業等のモニタリング・検証・評価について、A自家用車活用事業等のバージョンアップについて、B法制度を含む事業のあり方に係る今後の進め方について議論が行われました。
 審議の中で、河野太郎・規制改革担当大臣は、すべての地域で移動の足不足が解消されなければ新法に移行するしか手立てはないとして次のステップを強調。自家用車活用事業等のバージョンアップについては、昨今の酷暑や新幹線の停止・運休などの例をあげ、「熱中症を避けてタクシーに乗りたいというニーズにはすぐにも対応すべき」と電車トラブル等の課題を述べました。
 また、「日本版ライドシェア」「公共ライドシェア」という呼称を国土交通省が好んで使い始めたことに対して、委員から混乱を招く可能性があると異論が示されました。

非公開のWG設置

 さらに、「ライドシェア新法」を含めた事業のあり方の議論を行うものとして、規制改革推進会議委員・専門委員で構成する準備会合(サブWG)の設置を決定しました。
 メンバーは川邊健太郎LINEヤフー社会長を始めとした全面解禁派で占められており、非公開で会合を行うとしています。


「交通空白解消本部」を立ち上げる

 国土交通省は7月17日、新たに「『交通空白』解消本部」を立ち上げ、第1回会議を開催しました。
 この解消本部のもと、自治体・交通事業者と共に、全国各地で「交通空白」の解消に向けたとりくみを進めるとしています。本省の局長級、地方運輸局長などでメンバーが構成されています。
 初会合で、斉藤鉄夫本部長(国土交通大臣)は、「昨年来のライドシェア国内解禁論議の本質は、タクシー等を利用できない状態を解消することだ」と訓示。全国の自治体や主要な交通結節点での移動の足不足解消に向け、「日本版ライドシェア」等のバージョンアップを進め、具体的な課題ごとに今年9月、12月を目途として自家用車活用事業の拡大を進める考えを示しました。


「ライドシェア自体が目的化」と指摘

 国土交通省は、安全性に問題があるとしてタクシー事業者以外へのライドシェア全面解禁反対の立場をとっています。
 7月25日、全国個人タクシー協会定時総会後の懇親会で、国交省の鶴田浩久物流・自動車局長は、「本来、ライドシェアは手段として提案されるべきなのに、それを行うこと自体が『目的化』している。目的とは移動の足を確保すること。さまざまな議論があった結果、国交省は『日本版ライドシェア』と『公共ライドシェア』の2つがあれば、この目的は達成できるという考えで議論を進めてきた」とこの1年間のライドシェアをめぐる大きな流れを振り返りました。
 さらに、7月29日の規制改革推進会議の地域産業活性化WGにおいて、委員は「需給調整を技術とデータで行うのがシェアリングエコノミーとしてのライドシェアだ。日本版・公共というのは計画経済そのもの」と国交省を批判(上記事)。
 それに対し鶴田局長は、02年のタクシー規制緩和が大失敗に終わったことを例にあげ、「個別事業者が個々の最適を図った結果、全体として共倒れに近い状態になった」と説明。そして、「国交省も規制をしたいからしているのではなく、全体最適の解の1つが道運法78条3号(日本版ライドシェア)だ」と反論しました。

 →情報電子版24

労働条件改善を

22年度 全国営収1兆円超え

法人タクシーの輸送実績

 →情報電子版23

相談から組織拡大へ

2023年は77ブロックで改定

タクシー運賃改定の実施結果

 コロナ禍以降、全国的に労働条件改善を理由としたタクシーの運賃改定が進み、23年には77ブロックで実施されました(一覧)。
 値上げによる乗り控えの影響は少なく、概ねどのブロックでも、改定後は乗務員の1時間当たりの賃金支給上昇率は10〜20%となっています。
 東京都特別区・武三地区(22年11月)の実施結果では、運賃改定による賃金支給上昇率は32・6%で、260社のうち243社が上昇し、17社が低下しました。
 具体的な労働条件改善状況をみていくと、脳ドック等各種検診に係る補助、社内施設の新設・改修(24社)、手当類の創設・拡充(7社)。労働者負担制度の廃止及び軽減が32社となりました。
 全体的に労働条件が改善されている一方、賃金が低下したケース(17社)も存在します。改定後に増収率がマイナスとなったのは5社だけであり、少なくとも12社は増収分を労働条件改善に当てていないことになります。
 自交総連内でも、飛鳥交通など賃下げを強行された職場では闘争を続けています

未組織から相談

 本部にも、運賃改定の対応について未組織地域からの相談が寄せられています。
 会社から一方的な「合理化」提案をされて、困っている職場の相談にのることも重要です。こうした相談から組織拡大へつなげていくとりくみも強化しましょう。

対話と学びあいを文化に

コ永副委員長が発言

全労連大会

ライドシェア阻止闘争について発言するコ永副委員長=7月26日、東京・砂防会館
ライドシェア阻止闘争について発言するコ永副委員長=7月26日、東京・砂防会館

 全労連は7月25〜27日の3日間、東京・砂防会館で第32回定期大会を開催しました。自交総連からはコ永副委員長と城書記長ら5人が参加しました。
 大会では、小畑雅子議長があいさつし、「生活できる賃金への大幅引き上げを実現する運動をさらに大きくすることが求められいる。対話と学びあいを全労連運動の文化にする」と強調しました。
 その後、議案提案を受けて討論が行われ、コ永副委員長がライドシェア解禁について、阻止闘争の報告と危険性を訴えました。3日目にすべての議案が賛成多数で採択されました。
 24〜25年度役員選挙が行われ役員全員が信任、新たに秋山正臣新議長となり、黒澤幸一事務局長が再任されました。自交総連は、城書記長が幹事に再任されました。(報告者=城政利


新加盟のなかま 

(873) 福岡・福自交永楽交通分会

不当労働行為に対抗

 福岡県福岡市の永楽交通株式会社で働くタクシー労働者が6月10日、11人で労働組合を結成し、福自交永楽交通分会として自交総連に加盟しました。
 加盟のキッカケは、未払い賃金請求訴訟を進める中で、弁護士から自交総連を紹介されたことでした。
 会社からは、割増賃金の未払い請求から端を発した不当労働行為も行われており、対抗するために労働組合を立ち上げました。

危険な白タク=ライドシェア

C 白タク・ビジネスが引き起こす諸問題

人柱を前提にしたシステムは本末転倒です

ライドシェアの定義

 ※ここでは、ライドシェアの定義を左のとおり扱います。
 今回は、@安全確保・A利用者の利便性・Bドライバーの労働者性という三つの観点から、白タク・ビジネスがどういった問題を引き起こすかをまとめます。



輸送の安全確保ができない

ライドシェア導入国の事例

 ライドシェアは、ドライバー・車両に対する法規制が不十分で、交通事故・恐喝、強盗、性犯罪などの事件が多発する危険があります。
 中国では、乗客への凶悪事件を受け、裁判所による業務停止命令が出ました。
 これに対し、日本国内のライドシェア推進派はインターネット上の評価システムや通報システムで早期対応ができると主張しています。
 しかし、犠牲者が出たのちに事後的に担保される安全は本末転倒でしかありません。人柱を前提にしたシステムが安全確保のための法規制の代わりになるという考えは暴論です。


利用者利便にはマイナス!

 ライドシェアは、変動運賃制や交通弱者の配車拒否によって利用者利便を悪化させます。
 2014年にアメリカで暴風雨によって公共交通機関がストップしたとき、ライドシェアの運賃は通常の3.8倍に急騰したことで強く批判されました。15年には、介助犬を連れた視覚障がい者の乗車を拒否し、介助犬をトランクに閉じ込めたとして、障がい者団体がウーバーを訴える訴訟が起きました。

ドライバーの労働者性なし

 ドライバーは、労働時間を管理され、諾否の自由はなく、事業者の指揮命令を受ける立場にありながら、労働者としての一切の保護や権利が奪われた劣悪な環境です。
 ドライバーとライドシェア事業者の間に雇用関係があるかについては判断が分かれていますが、フランスやイギリスでは法廷闘争の末、一定の労働者性が認められつつあります。