白タク=ライドシェアは許さない
この一年間の自交総連の白タク=ライドシェア解禁阻止闘争 |
自交総連は、この一年間、白タク=ライドシェア解禁阻止闘争にとりくんできました。
どのような形態であろうと、利用者・乗務員を守る観点から断固としてRSに反対し、危険性を訴え続けてきました。
中央本部では、政界・財界で動きがあるたび、街頭宣伝や国会内集会、議員要請行動、反対署名など7度の中央行動によって幅広く運動を展開しました。
各地方では、毎月第一週統一行動として宣伝カーによる音源流しや街頭宣伝、他団体との一点共闘、大量のビラ配りを定期的・継続的に実施。利用者や乗務員からの反応も良好で、「がんばってほしい」「反対の声を上げているのは自交総連だけ」「署名に協力したい」など数多くのエールを受けとりました。
確信もってNOの声を出す
政府・財界のメンバーは、来年の通常国会でのライドシェア法制化をめざし、策動を活発化させています。
規制改革推進会議の地域産業活性化ワーキンググループでRSの議論が進む中、7月29日には非公開の『準備会合』が設置されており、今もっとも警戒が必要です。その委員であるLINEヤフー社の川邊会長は、安心・安全を捨て置き、規制をなくせと繰り返し発言してきました。
自社の利権のために、死傷者が出てもいいと思っているに等しい主張です。
現在の世界に誇れる安心・安全な日本のタクシーは、過去の事故犠牲の反省があった上で存在しています。
誇りを胸に、確信をもって「白タクは必要ない」という私たちの主張を広め、来たる国政選挙でNOの声をつきつけなければなりません。
これからも引き続きがんばりましょう
公平性なき委員選出に警鐘
内閣府・国交省へ緊急要請
自交総連の本部代表は8月27日、衆議院第2議員会館会議室で、内閣府・国土交通省に対し要請交渉を行いました。
ブラックボックス化の危険
内閣府との交渉では、日本共産党の高橋千鶴子衆議院議員(国土交通委員)同席のもと、道運法第78条の自家用有償旅客運送の緩和や、ライドシェア新法の拙速な策定について追及。「事務局として意見は受け止める」と内閣府は通り一遍の回答に終始しました。
さらに、非公開の『準備会合』(右記事参照)を設置した意図については、「タクシー事業者以外が行うRS事業に関して、少人数での専門的・技術的観点からの議論促進のため設置に至った」との回答がありました。
それに対し自交総連は、「構成員には法律に詳しい弁護士が3人も入っており、新法策定に向けた議論をブラックボックス化しようとしている」と批判。この交渉の後に、国交省から『準備会合』の委員選任について、「我々は交通学者などを提案したが、彼らはタクシー業界を守る立場で活動しており適当でないと却下された」との情報提供があり、委員選任の公正性に大いに問題があることが明確になりました。
アプリ事業者の参入は阻止
国交省との交渉では、自交総連がライドシェアの定義について確認すると、国交省は「定義は定まっていないが、新しいものは必要ないという観点から『公共RS』『日本版RS』という言葉を使っている。それ以外のものは必要ないと考えており、やらない」と回答。RS新法は不要で、タクシー事業者が雇用を行う自家用車活用事業を推進するという国交省のポジションを改めて示しました。
自交総連はさらに、斉藤国交大臣が言及したRS導入による労働条件低下について、労働者保護や対策を国交省として検討しているのか質問しました。
国交省は、「『日本版RS』などで賃金・労働条件の低下が生じる状況になるとは考えていない。移動の足が確保されれば、制度の枠組みは残るが、使われなくなる」とし、「問題意識としては共有するが、現在のところ労働者保護や対策などは考えていない」としました。
そして、「我々は利益のみを追及するアプリ事業者の参入を阻止すべきと考えている。安全の確保のため、雇用契約によらない働き方を認めないという自交総連の考えに同意する」と頷きました。
横手市の事例に議論集中
第10回東北自主経営交流会を開催
(上写真)各地の状況を報告し合う参加者、(下写真)問題事例があったJR横手駅 |
【東北】東北地連は、9月3日から4日にかけ、横手市わいわいプラザにおいて、第10回自主経営交流会を開催し、東北地連と本部から10名が参加しました。
交流会では、本部の城書記長がライドシェアをめぐる情勢について報告。ついで、東北地連の石垣書記長が地域公共交通を守る闘いについて問題提起を行いました。
各地からの報告では、共通の問題として、労働者の高齢化と減少、そして事業の継続の問題が指摘されました。
地域公共交通の問題では、横手市が、「道路運送法の許可または登録を要しない運送に関するガイドライン」を悪用した事例について議論が集中しました。
その内容は、市の再任用職員にワゴン車を運転させて、秋田空港とJR横手駅の間を300円で送迎する輸送を開始したというものです。
今後、横手市の市職労への申し入れや、東北運輸局への指導の要請をするなど、とりくみを強化することを決定。
そしてこれからも、この交流会を継続していくことを確認しました。
最賃下回ってないか確認を
16都道府県で1000円越えも地域間格差
2024年度 地域別最低賃金
2024年度の地域別最低賃金の答申が公表されました。改定額は、10月1日から11月1日までの間に順次適用となります。(都道府県別一覧表)
最高額は、東京都の1163円で、次に神奈川県の1162円、大阪府の1114円と続きます。全国で1000円を越えたのは、16都道府県でした。
最低額は、秋田県の951円で、東京と比較すると212円もの差があり、地域間格差は相変わらず解消されていません。
今回、50円〜84円の引上げとなり、物価上昇を反映する過去最高の引き上げ幅となりました。
タクシー業界は、今でも最賃違反が多い現状にあり、50円以上の引き上げとなれば違反がさらに増加することは明白です。
もし月十数万円という賃金だった場合、最賃法違反かどうか計算してみる必要があります。
表を参考に、自分の賃金が最賃を下回っていないか時間額に換算して確認してみましょう。
核兵器なき世界へ
東京・関西・福岡の仲間が参加
原水爆禁止2024年世界大会
「No Nukes(核兵器反対)」と訴える=8月4日、広島・県立総合体育館大アリーナ |
原水爆禁止2024年世界大会が8月4〜6日に広島県で開催され、自交総連の東京地連・関西地連・福岡地連の仲間が参加しました。
今年は、世界的な平和への逆流と岸田政権の危険な暴走にストップをかけ、「核兵器のない」世界と日本の核兵器禁止条約への参加実現をめざす大会となりました。1日目の開会総会終了後には自交総連の産別交流会がひらかれ、仲間同士で平和を願い交流を深めました。
「タクシー不足」は空論
日本版RS実施地域で供給過剰
準特定地域の需給状況・適正車両数
2024年度の準特定地域の需給状況・適正車両数が各運輸局より8月末に公示されました。
こちらは、『日本版ライドシェア』実施地域のデータを抜粋したものです。準特定地域の指定基準となる乖離率(※2)の数値はプラス、増車可能車両数(※1)はマイナスとなっており、タクシーが供給過剰状態にあることがわかります。
ライドシェア推進勢力は、「保有車両はあるのに運転者の減少により動かせず、タクシーの供給不足が発生している」とし、配車アプリのマッチング率が低いことを根拠に『日本版ライドシェア』を実施しました。
しかし、準特定地域の必要車両数は、前年度の実車率や実働率などを勘案し、算出されています。駅の乗り場や流しのタクシー利用を加味していないマッチング率よりも、タクシーの需要と供給の実情を反映している指標といえます。
指定基準の見直しはしない
今年度は、「新規参入の準備期間を設けるため」という規制改革推進会議の求めに応じ、前倒しして7月に準特定地域の指標となる速報値が公表されました。
データを見る限り、大半の地域で準特定地域の指定解除にはならない見通しです。
しかし自交総連は、こうした規制改革推進会議の動きから、指定基準そのものの見直しが行われる可能性を懸念しました。
そこで、8月27日の要請において国交省へ交渉し、「準特定地域の指定基準について不適切に厳しい要件を設けるような改悪はしない」という回答を引き出しました。
今後も、「タクシー不足」という空論を理由に、白タク=ライドシェアを拡大しようと狙う策動に断固として対応していきます。
危険な白タク=ライドシェア
Dこれからの地域公共交通
持続性と安全性を両立するためのコストを
4回の連載で、白タク=ライドシェアについて、日本の現行制度、導入国の制度比較・問題事例を解説しました。
白タク=ライドシェア制度導入は、公共交通の空白を大義名分としています。
しかし、安心・安全を顧みず営業の自由を優先する事業は、とうてい公共の福祉に資するものではありません。
最後に、持続性と安全性を両立した地域公共交通確保の課題を考えます。
交通政策は、住民の移動需要や地形、道路状況等の違いに応じて、街づくりとの整合性を考慮し、適切に調整していくことが重要です。
また、障がい者、高齢者、要介護者をはじめ通院や妊婦、保育園送迎、乳幼児同伴について、とくに手厚く保障する必要があります。
乗合タクへの補助金増額
地方における交通問題は年々深刻さを増しています。
鉄道・路線バスが廃止されてしまった上、高齢者の交通事故増加で運転免許証の返納が奨励され、ますます移動困難者が増加しています。
こうした過疎地域では、公共交通の再整備のために、国が地方自治体と共同で、路線バスやコミュニティバス、デマンド交通、乗合タクシーへの補助を行っています。
とくに、自治体と事業者の共同による過疎地型の乗合タクシーは、全国で4259コースあり、住民の移動を支えています(2022年度末時点)。
一方で乗合タクシーへの補助金は申請(要望)額の半分以下となっています。
補助金の大幅な増額が不可欠として、自交総連は要請書を国土交通省へ毎年提出しています。
タクシーは足りています
都市部における交通問題は、一部の観光地で時間帯によってタクシー利用が集中してしまうオーバーツーリズム(観光公害)を取り上げているに過ぎません。
実際に、準特定地域の需給状況(上)をみるかぎり都市部のタクシーは供給過剰状態にあります。
しかし、タクシー運転者の離職が続いた場合、流しのタクシー営業は減少し、街でタクシーを捕まえられないという不満が高まる可能性があります。
職責に見合う労働条件に
持続性と安全性を両立した地域公共交通確保のためには、バス・タクシーなどのプロドライバーには、職責に見合った労働条件を保障することがなにより肝心です。
安全な地域公共交通の維持には一定のコストがかかることを理解し、交通政策を見直すべきです。