自交労働者No.990、2024年12月15日

RS全面解禁を何としても阻止

国交省・厚労省・全タク連と交渉

11・7中央行動

 交運共闘は11月7日、憲法改悪阻止、戦争法・共謀罪法廃止、国民本位の交通政策実現、規制緩和反対、交通運輸労働者の労働条件改善を求めて、11・7中央行動を実施し、全体で約300人が参加しました。

全国から集めた請願書を提出=11月7日、東京・厚生労働省前
全国から集めた請願書を提出=11月7日、東京・厚生労働省前
参加人数

 交運共闘は、午前10時から国土交通省への請願行動を開始しました。城議長による主催者あいさつに続いて、全労連の秋山議長、日本共産党の仁比参議院議員が連帯あいさつを行いました。
 参加者一人ひとりが請願書を国交省の係官に手渡しする中、自交総連の内田常執は「ライドシェア全面解禁に向けて動こうとしている議員が国会には大勢いる。何としても阻止しなければならない。国交省は全面解禁させないために日本版RS・公共RSの規制改革を進めているが、車両台数が増えればタクシー労働者の賃金に影響が出ないわけがない。午後から国土交通省と交渉をするが、そこで労働者を守るための支援をするように訴え、必ず労働条件改善に繋げたい」と決意表明しました。
 鈴木書記次長(建交労)、木副委員長(検数労連)、横内副委員長(国土交通労組)が続き、堀井書記次長(自交総連)によるシュプレヒコールを行った後、厚生労働省、経済産業省にも署名を提出しました。
 自交総連は、午後1時から中央行動で提出した個人請願書の内容について、国交省、厚労省、全タク連と要請交渉を行いました。


タク保護に税金を

 【国土交通省交渉】
 自交総連は冒頭、「タクシー事業者以外の者を参入可能とするライドシェア導入は認めないという立場に変わりないか」と国交省へ確認。そして、道運法第78条2号・3号を活用した自家用車活用事業などの規制緩和をこれ以上進めないように要請しました。
 これに対して国交省は、「RS新法は必要ない」として従来姿勢に変わりないと強調しました。しかし、自家用車活用事業については「交通空白の解消に向け、安心・安全の確保を前提に、日本版RSのバージョンアップを行い、全国への普及を進めていく」とかわした回答をしました。
 さらに、秋田県横手市が主体となって実施している許可・登録を要しない運送に関しては「実費の範囲を超えて人件費が支払われていれば問題」と回答。「税金を使って民業を圧迫するのではなく、タクシー保護に使うべきではないか」と組合が質すと、「そのとおり」と頷き、東北運輸局に実態を確認するとしました(2面に関連記事)。
 また、タクシー運賃改定時の賃金引下げ問題や、貸切バス運転者の労働条件改善について、関係省庁と連携しながら、各事業者への指導を強めるよう求めました。


労基法解体にNO

 【厚生労働省交渉】
 自交総連は、労働基準関係法制研究会において議論されている、集団的労使関係コミュニケーションについて「労働基準法が解体されようとしている」と厚労省を強く糾弾し、職場に適合した改善を要請しました。
 また、クレジットカードの手数料や事故時の賠償金・修理代などを労働者に負担させる制度について、「経費を労働者の同意なく賃金から一方的に引き去ることのないよう監督を強化すること」、「手数料等を歩合給の計算時に営業収入から引き去るなどの脱法的手法を認めないこと」を求めました。
 厚労省は、「事業に要する経費を労働者に負担させる制度の是正については、国交省で進めていると承知しているが、必要に応じて厚労省も協力する」と回答しました。
 タクシー労働者の労働条件改善についての監督強化・違反是正の応答では、@手待ち時間を労働時間から除外するなどの労働時間のごまかしを許さないこと、A歩合給が最低賃金以下になる者を「低営収者」として退職強要させないこと、B最低賃金の支払いを要求する労働者や組合に対して、解雇や事業所閉鎖など脅して要求を取り下げさせる不当労働行為を許さず、指導することを要求。
 厚労省は、「関係法令違反が判明した場合には、労働局や労働基準監督署にて啓発指導を行うと共に、適切に是正指導を行う」としました。


徹底的に新法反対

要請書を手渡す庭和田委員長(写真左)=11月7日、東京・自動車会館
要請書を手渡す庭和田委員長(写真左)=11月7日、東京・自動車会館

 【全タク連交渉】
 全タク連は、ライドシェア新法について、「徹底的に反対していく」とし、「石破政権が少数与党となり、法律案を国会に出せるのか疑問だ。出されても野党の反対で成立しないと捉えている」と見解を示しました。
 また、自治体が行う低額運送については、「地域のタクシーへ悪影響を与えるものだ。調査のうえ、行政などに対して必要な処置を行ってほしい」と自交総連が求めると、全タク連は調査をすると回答しました。
 さらに、事業者への対応として、最低賃金法違反を根絶し、最賃の確実な支払いを指示するように要望しました。
 全タク連は、「法令順守を会員事業者に啓蒙する。最賃を支払わない事業者は告発してほしい。最賃も支払えない地域は、車が多いか運賃が適正でないと考えており、対策が必要」と答えました。

「ライドシェア全面解禁阻止」へ統一行動、運輸局要請を実施

 自交総連は、今年度、「ライドシェア全面解禁阻止」を掲げ、各地連・地本で統一行動を行っています。自交総連第47回定期大会終了後、さっそく京都と東北で諸行動が実施されました


8度目の共同闘争

 「ライドシェア全面解禁阻止」の一点共闘で始めた「共同闘争」は第8波となり、京都の個人タクシー6団体で組織される京都個人タクシー団体協議会と、全自交京都地連、自交総連京都地連の仲間が10月28日に集結。京都総評の柳生剛志事務局長と全国一般の仲間も駆けつけました。
 JR京都駅烏丸口と京都市役所前で各弁士が訴える中、総勢20人で横断幕やプラカードを掲げ、市民にアピールしました。
 京都市役所前でマイクを握った京都地連の松田委員長は、ライドシェアについて、「労働者性と地域公共交通の破壊が進み、市民の足がなくなっていくことが重大な問題である」と強調し、「労働者性を破壊するライドシェアは、まさに現代版奴隷制度といえ、労働者が無権利にされる。さらに利用者が困った時に運賃が高くなるダイナミック・プライシングは『ぼったくりタクシー』であり、ライドシェアは市民の皆さんにも大きく関わる問題。断固反対の声をあげてほしい」と呼びかけました。


労働条件改善を

要請書を提出する池田副委員長(左)=10月29日、宮城・東北運輸局会議室
要請書を提出する池田副委員長(左)=10月29日、宮城・東北運輸局会議室

 東北地連の組合員10人は10月29日、東北運輸局への要請行動を実施しました。
 池田副委員長は「安心・安全なタクシーの確立と労働者の労働条件改善を求める要請書」を東北運輸局の係官へ渡し、7つの要請項目について交渉を行いました(詳細)。


運法における許可または登録を要しない運送

タクシーに悪影響 自治体の低額運送

ガイドライン

 「道路運送法における許可または登録を要しない運送に関するガイドライン」は、今年3月1日付で国土交通省から発出されました(以下ガイドライン)。
 ガイドラインは、複数の通達が存在する「許可・登録を要しない運送」を一つの通達にまとめ、考え方を整理したものです。

横手市の件指導を要請

 秋田県横手市の事案は、再任用職員にワゴン車を運転させて、秋田空港とJR横手駅の間を300円で送迎するものです。横手市はガイドラインを盾に「問題はない」と主張しています。しかし、人件費の取扱いや地元タクシー会社と事前の話し合いを行わなかったことなど運用に関わる問題が多数あります。
 自交総連は、横手市の事案に限らず、自治体による低額運送は地域のタクシーへ悪影響を与えるものと捉えています。この間、東北地連を先頭に、関係各所へ要請・問い合わせを行いました。
 東北運輸局は、自交総連の指導要請に対し「利用者から受け取っている対価は実費の範囲内。ただちに問題になるとは考えていない」と回答(10月29日)。
 国土交通省からは「実費の範囲を超えて人件費が支払われていれば、許可・登録が必要。東北運輸局および横手市に確認を取る」、全タク連からは「タクシーと競合する問題。調査を行う」という回答を引き出しています(11月7日)。

皆で相談と解決を

相和交通支部決起集会を開催

神奈川地本

決起集会で直接意見交換を行った=11月26日、神奈川・相模原商工会議所
決起集会で直接意見交換を行った=11月26日、神奈川・相模原商工会議所

 神奈川地本へ、相和交通労組(相模原市中央区)より加盟相談があったのは、今年の10月頃のことでした。
 当初、職場には労働組合自体がなく、親睦会的な組織としてやっていました。これまでは36協定の締結を会社が選んだ労働者代表で調印してきた経緯があります。
 そして6月、就業規則や賃金協定等がまったくない状況を不満に思う乗務員が、新たに労働組合を立ち上げました。単独では心もとないとの判断で、10月に上部団体への加盟を模索。自交総連への加盟を決めたようです。
 11月26日には、神奈川地本の執行部が現地に出向き、相和交通支部の立ち上げ決起集会を開催しました。
 執行部は相和交通支部のメンバーと直接面談し、問題点の打開に向けて今後の方針について意見交換を行いました。
 現在、組合には会社内の3割程度が加入しています。まず周囲の仲間に理解を求め、過半数組織となることが急務であると執行部は伝えました。
 相和交通支部からは「何をするか、何を始めるかがわからない状況である」との意見が出ましたが、「皆で相談、皆で解決」が労働組合の本分であるとアドバイスしました。年明けに「要求書」を作成し、神奈川地本の役員も一緒に、団体交渉を実施する予定です。(報告者=神奈川地本・佐藤弘朗書記長)

確実に工事が進行

石木ダム座り込み行動を実施

長崎地連

着々と工事は進行=11月25日、長崎・石木ダム工事現場
着々と工事は進行=11月25日、長崎・石木ダム工事現場

 長崎地連は11月25日、組合員4人で石木ダム座り込み行動に参加してきました。
 今年度は、他の団体も定期的に座り込み行動を実施しており、現場は賑わっていましたが、確実に工事も進行していました。
 当日、気温はそれほど下がっていませんが強風がときどき吹いていました。すり鉢の底辺が座り込み現場でしたが、寒くはなく、日差しがちょうどいい感じでした。現場には、何方からかドローンが飛行して来て、座り込み現場上空で旋回確認をして戻って行きました。座り込み現場で、奥さん達から新米おにぎりと自家製漬物をいただき、「おいしい」と言って皆で食べました。次回来る時まで健康に注意してがんばってくださいと言い合いながら帰路に着きました。(報告者=長崎地連・松永利秋書記長)

ライドシェアを取りまく政界・財界の動向

新政権でどうなるRS新法策定議論

 現状、石破政権下では、タクシー事業者以外の者を参入可能とするライドシェア新法策定についての議論は水面下に潜り、道運法第78条2号・3号を活用した規制緩和がさかんに進められています。
 地域住民・観光客の移動の足を確保するとして、さまざまな政策が計画されています。
 しかし、安心・安全の要となる運転者に対して、具体的な就業支援策が検討されていないことは残念でなりません。
 政界・財界のパワーバランスや思惑を注視しながら、ここ1か月のライドシェアを巡る情勢を振り返ります。


新法含めた議論を要望
「骨太の方針2024」

 官民を交えた話し合いの場である規制改革推進会議は、11月12日に本会合を開催しました。
 そこでは、@25年7月を期限に答申をまとめること、A年末を目途に中間とりまとめを行うこと、B既存の5つのワーキンググループを設置することなどを確認しました。
 ライドシェアについては6月に閣議決定された「骨太の方針」(左参照)などを踏まえた検討を進めるとしました。
 全面解禁を求める川邊健太郎LINEヤフー社会長は会議で次のように発言しています。
 訪日観光客数は勢いが伸び続けており、観光地でのタクシー不足が深刻化している。現状の日本版RSでタクシードライバーの減少を賄うのは心許ない。
 現在、国交省がモニタリングの対象としている都市部、主要部の他に、日本版RSの普及していない地方部でも定期的に移動の足不足の実態を検証する必要がある。その検証で、足不足やドライバー不足が解消されないといった結果が出た場合は、安全管理をしっかり義務づけつつ、タクシー事業者以外の参入や営業区域、時間帯制約の見直し、ライドシェアドライバーが好きなときに好きなだけ働けるような労働制度など、新法を含めた法制度の在り方をしっかりと議論していきたい。


手段が目的化している

 全タク連が11月13日に開催した事業者大会で、国交省の鶴田浩久・物流自動車局長が講演を行い、省としてのとりくみや私見を交えた見解を示しました。
 ライドシェアについては、今年10月27〜28日時点で、日本版RSは71地域615事業者5271両、公共RSは628地域769事業者4768両で行われていると報告。「大事なことは安全・安心を確保してサービスを提供していくということだ」とし、大都市部に始まり、観光地や地方都市にライドシェアが広がっていると説明しました。
 さらに、骨太の方針で示された方向性は、石破政権にも引き継がれたとし、「大事なことは移動の足を確保すること。ライドシェアの論議では手段が目的化している傾向がある」と断じました。


日本版RS導入後押し

 11月22日の臨時閣議で決定した政府の「総合経済対策」では、物流・交通分野に関して、交通空白の解消に向け公共RS、日本版RSの導入を総合的に後押しするとしています。
 これを受けて国交省は、関係補正予算の概要を公表し、総額2兆2478億円のうち363億円を「交通空白」の解消や地域交通のリ・デザイン(再構築)を全面展開するために計上しました