2012.7.25 |
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2012年度(10月〜)の地域別最低賃金改定の目安を示す中央最低賃金審議会の審議に向けて、自交総連は7月24日、大幅な引き上げを求める意見書を提出しました。
最低賃金は、生活保護との整合性を確保することなどのため、一昨年までは大幅な引き上げが実現しましたが、昨年は大震災の影響で小幅にされました。さらに今年は、生活保護バッシングで、生活保護の方を引き下げる動きもあります。
全タク連も、最低賃金引き上げを「慎重の上にも慎重に」審議して欲しいという要請をすでに出し、事実上引き上げに反対しています。
いまの最低賃金では、まともに暮らすこともできません。逆流を押し返して、大幅な引き上げを求めていくことが必要です。
1.自交総連は、タクシー労働者を組織する労働組合です。
最低賃金が一日もはやく全国一律1000円以上になるよう、今年度の地域別最低賃金の大幅な引き上げを求めます。
タクシー労働者の賃金は、厚生労働省の『賃金センサス(2011年)』によると、全国平均で年収246万円となっています。年間労働時間は2339時間ですから、1時間当たりの賃金は1060円にしかなりません。これは一時金や割増賃金を含んだ金額で、いうまでもなく最低賃金はそれらを除いて計算するわけですから、最低賃金が1000円以上になれば、相当数のタクシー労働者の賃金が底上げされることになります。
低賃金から、無理をして長時間労働を行い、過労運転から交通事故に至るという危険な現状を改善し、国民の安心・安全を確保することにもつながります。
2.ところが、タクシー経営者の一部には、タクシー労働者の現状の賃金水準が低いことをもって、最低賃金の大幅な引き上げに反対する考えがあり、タクシー経営者の全国組織である全国ハイヤー・タクシー連合会(全タク連)も、本年7月に貴審議会に対して地域別最低賃金の目安を示すにあたっては「慎重の上にも慎重に審議を」望むとの要請を行っています。こうした意見は、経営者としての自覚と責任に欠けるものといわざるを得ません。
全タク連の要請は、「賃金の引上げは生産性が向上してはじめて可能であり、決して先行するものではない」としています。しかし、現状はむしろ最低賃金が低すぎるゆえに、経営者に生産性向上の努力を怠らせているのが実情ではないでしょうか。
タクシー事業というのは、労働者の賃金がほとんど歩合給となっているため、1台あたりの売上げが少なくなると自動的に運転者の賃金も下がり、常に一定の比率で利益が会社に残るという性質があります。このことが規制緩和のもとでの乱暴な増車競争、運賃値下げ競争につながる要因となりました。市場における需要の見積もりをせず、また拡大の努力も怠ったままで増車競争が行われた結果、タクシー労働者の賃金は大きく低下して、ついに地域別最低賃金に抵触する水準にまでなってしまったのです。
この段階に至って初めて、もはやこれ以上賃金は下げられないなかで何とか利益を出す方法を考えなければならなくなり、1台当たりの生産性を向上させる減車をせざるを得なくなったのです。2009年にタクシーの規制を強化するタクシー活性化法が施行され、地域ごとに協調的に減車をする枠組みがつくられ、減車が行われました。
このことをみるならば、「賃金の引上げは生産性が向上してはじめて可能」なのではなく、「賃金の引き下げが可能な限り生産性の向上は後回しにされる」というのが実態であり、「賃金を引き上げれば、経営者はいやおうなく生産性の向上に本気になる」といえます。
企業同士は激しい競争をしているので、1社だけが賃金を引き上げたり、減車をしたりすることは、その会社が競争に敗れてしまうことになり、不可能です。だからこそ、社会のルールとして最低賃金を引き上げれば、不公平がなく、すべての企業が共通の土俵のもとで競争することができるようになります。
賃金コストの安さに依拠して価格競争力で利益を確保するという古い経営モデルから、必要な賃金コストをかけて優秀な労働力を確保し付加価値の高い商品・サービスで利益を生むという先進国にふさわしい経営モデルに転換することこそが日本経済の課題であり、経営者・企業家の責任であるはずです。
3.労働者の低賃金に依拠して利益を確保するという経営手法は、すべての産業に波及して人件費切り下げ競争となり、わが国では労働者の賃金が十数年にわたって連続的に低下するという異常な事態を生んでいます。賃金が下がり、消費が衰え、再び賃金を下げるという悪循環が続いています。
最低賃金の引き上げは、この悪循環を断ち切る道です。売上げを増やして、生産性を高めることで利益を出すという、まっとうな企業経営の道に経営者を立ち戻らせる道なのです。それによって、最低賃金に抵触しているような低賃金の労働者の賃金が上がれば、それはほとんどすべてが消費に回って、景気の回復にもつながります。賃金が上がって、消費が拡大し、さらに賃金の引き上げが可能になるという好循環が生まれます。
賃上げが景気に好影響を与えるというのがわかっていても、企業間競争の中では、1社だけが賃金を引き上げるというのは不可能です。すべての企業に平等に影響を及ぼす最低賃金の引き上げこそが、わかっていてもできなかった賃上げを実現し、賃下げ競争ではなく生産性向上を競いあう市場をもたらします。
タクシーは規制強化によって一定の減車が進んだとはいえ、その効果はいまだ不十分で、労働者の労働条件を改善するまでに至っていません。その要因は、長期的に利用者が減少し、規制緩和前の水準にまで台数を戻しても、なお需給バランスが均衡しないところにあります。需要の拡大には、景気の回復が不可欠です。最低賃金の引き上げは、タクシー事業にも好影響を与えるものといえます。
タクシー労働者が、適正な労働時間で、安全運転で働いて、生活できるだけの賃金が確保できるように、委員各位の真剣な審議・検討を求めるものです。
地域別最低賃金額改定の目安審議について(要請)
謹啓 平素はタクシー乗務委員の労働条件の改善に種々ご配意を賜り厚くお礼申し上げます。
さて、厚生労働大臣におかれては、去る6月26日、平成24年度地域別最低賃金額改定の目安について貴会に諮問された旨伺っておりますが、地域別最低賃金は、近年、経済実勢とかけ離れて大幅に引上げられており、極めて憂慮しております。すすなわち、近年の我が国経済は低迷の一途を辿り、賃金及び消費者物価は低下ないし横ばいの状態にありますが、地域別最低賃金だけは、平成19年度以来、東日本大震災が発生した昨年度を除き、全国過重平均で2桁の引上げとなっております。
もとより、賃金の引上げが実現され、経済が成長するとともに国民生活がより豊になることは国民が均しく願うところであり、当業界におきましても強く願望するものでありますが、賃金の引上げは生産性が向上して初めて可能であり、決して先行するものではないと考えております。
ところで、タクシー業界は、長期的に利用客が減少し、需給バランスに均衡を書くとともに乗務員の労働条件が著しく悪化したため、現在、平成21年6月に制定された「特定地域における一般乗用旅客自動車運動事業の適正化及び活性化に関する特別措置法」に基づき、減・休車を進めておりますが、同法が定める減・休車は事業者の自主的努力に委ねられており、また、事業者間の協調的取組みも法的に困難なため、労働条件を改善するまでには至っておりません。加えて、本年度は社会保険料や介護保険料が引き上げられ、タクシー事業を取り巻く経営環境はなおいっそう厳しさを増しております。
つきましては、貴会におかれましては、地域別最低賃金の原則を定めた最低賃金法第9条の趣旨になおご斟酌を賜りますとともに、経済状況は業種によって大きく異なること、さらには社会保険料の引き上げが企業経営に及ぼす影響などにご理解、ご配意を賜り、目安を示されるにあたりましては慎重の上にも慎重に審議を頂きますようお願い致します。謹白
最低賃金法
(地域別最低賃金の原則)
第9条 賃金の低廉な労働者について、賃金の最低額を保障するため、地域別最低賃金(一定の地域ごとの最低賃金をいう。以下同じ。)は、あまねく全国各地域について決定されなければならない。
2 地域別最低賃金は、地域における労働者の生計費及び賃金並びに通常の事業の賃金支払能力を考慮して定められなければならない。
3 前項の労働者の生計費を考慮するに当たつては、労働者が健康で文化的な最低限度の生活を営むことができるよう、生活保護に係る施策との整合性に配慮するものとする。
最低賃金の方が生活保護より低いのは11地方
中央最低賃金審議会に提出された厚生労働省の資料でも、11地方で、最低賃金の方が生活保護より低いとされました。昨年の3地方から拡大しています。実態に合わせて計算すれば、ほとんどの地方で、最低賃金の方が低いことは明らかで、生活保護を下げるのではなく、最低賃金を上げて、整合性をとるのが当然です。
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