2014.1.21 自交総連情報タイトル

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実効性のない「名ばかり制度」は極めて問題
特定地域指定基準について評価と意見

 自交総連は、このほど「特定地域の指定基準等」(通達案)に関する評価と意見をまとめ公表しました。

 タクシー特定地域特措法の特定地域の指定基準は近く策定される予定ですが、昨年出された通達案のパブリックコメントは、特定地域の指定を限定するもので、法律の実効性をなくして「名ばかり制度」にしてしまう危険が大きいものです。その問題点を指摘し、改めて法の目的に適う行政を求めました。


「特定地域の指定基準等」(通達案)に関する評価と意見

自 交 総 連

  国土交通省は2013年12月21日、改正タクシー特定地域特措法等の施行に伴う各通達案を公表した。その内、「特定地域及び準特定地域の指定基準等を定める通達の制定」については下記の内容が示されている。

 ただし、どの指定要件も、「一定の数値」については明記されておらず、今後の各地方運輸局長公示で最終的に確定するものとみられる。

 【準特定地域(供給過剰となるおそれがある地域=注1)の指定基準】

  現行の特定地域の指定要件と同じ内容(=日車営収又は日車実車キロが2001年度と比較して減少等)

 【特定地域(供給過剰である地域)の指定基準】

 以下@〜Dのすべてに該当していること。(人口30万人以上の都市を含む営業区域の場合)
 @ 準特定地域として指定されていること(注2)
 A 日車営収又は日車実車キロが一定の数値に比べてより低下(2001年度と比較して○○%以上下回っている等が想定される)
 B 地域内全体の経営収支状況がより悪化(一定の数値を上回る)
 C 地域内の総実車キロ(総需要)がより低迷(一定の数値を下回る)
 D 地方公共団体の長の合意があること

  改正タクシー特定地域特措法の目的は、国会審議でも明らかなように、(改正前の)特定地域制度の欠陥部分を補い、“強制減車”や営業方法の制限命令が合法的に可能となる仕組みや地域協議会の権限を高める方策の導入により、一日も早く供給過剰を解消し、運転者の労働条件改善及び安心・安全輸送の確保、事業の健全化を促進することにある。

 しかるに、現在進行している基準策定作業の実状は、法改正本来の目的に適っているとは言い難い。特に、特定地域指定のハードルを恣意的に高め、かつての緊急調整措置と同様の手法で、“実効性のない名ばかり制度”に変えてしまう式のやり方は極めて問題がある。

 仮に、仙台市、東京都特別区・武三や大阪市域など多くの矛盾を抱えている大都市部が指定されないのであれば、改正をした必要性が疑われることは必至であり、行政不信はおろか事業の健全な発展にとっての悪影響さえ生じかねない。

  2013年12月18日付で国土交通大臣宛に提出した「タクシー特定地域特別措置法の施行に伴う運用基準等の策定に関する要請書」で指摘しているように、供給過剰の解消対策等に際しては、あらかじめ「供給過剰」の定義を明確にし、かつ判断基準については、変動する数値ではなく、「標準的な実働率(90%を基本)のもとで、実車率が50%を下回っている場合」など絶対的指標にもとづくべきと考える。(注3)

 また、運送収入が、安全輸送の根幹をなす適正な労働条件を担保するに足りる水準となっているかどうかも考慮される必要がある。

  “実効性が担保されない”など極めて問題の多い現状にある最大の要因は、結局のところ、“規制緩和政策失敗の反省をふまえ、必要な規制強化を基本とする根本的な解決策の方向を探る”という姿勢が欠如しているからに他ならない。

 国土交通省は、これらの指摘を真摯に受け止め、実効ある運用基準として通達化できるよう努力すべきである。加えて自交総連は、新たな実効ある制度としてタクシー運転免許の新設を提言しているが、国土交通省は改めて検討の場を設け、実現への道筋を探求すべきである。

 (注1) 改正前の特定地域は、「供給過剰である地域」(供給過剰=供給輸送力が輸送需要量に対し過剰であることをいう)と定義されていたが、改正法では、「供給過剰となるおそれがある地域」を準特定地域として創設し、「供給過剰である地域」を(新)特定地域としている。特定地域は、新・旧ともに「供給過剰である地域」という点で同じようにみえるが、指定基準には雲泥の差があり異質のものである。

 (注2) 改正前における現行の特定地域の指定は155である。この特定地域が改正法施行と同時に一旦、すべて準特定地域に移行。その後、5月にはその中から新しい指定要件をクリアーしたところが(新)特定地域に指定される。

 (注3) 規制緩和実施後、供給過剰の解消をめぐる手法として採用されてきた地域指定制度、すなわち緊急調整地域と特別監視地域に始まり、さらに特定特別監視地域・準特定特別監視地域・特別重点監視地域の新設、そしてタクシー特定地域特措法の制定に伴う特定地域、加えて今回の(新)特定地域・準特定地域へと続くその指定要件において、いまだに絶えず変動する数値をもって判断する指標とするなどは、行政の責任逃れ、実効性軽視の対応としか言いようがない。

以  上

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