2014.7.31 自交総連情報タイトル

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高齢化が深刻なタクシー事業
低賃金に依拠した経営モデルの転換を

 今年10月からの最低賃金引上げの「目安」を決める中央最低賃金審議会での審議が行われています。自交総連は、最低賃金ギリギリで働く労働者が多いタクシーの実情と、その結果、若い労働力が確保できなくなっている事態を示して、最低賃金を大幅に引き上げるべきとの意見書を7月22日に提出しました。



2014年7月14日(22日提出)
中央最低賃金審議会
 会長 仁田 道夫 殿
 委 員 各 位
全国自動車交通労働組合総連合会(自交総連)
中央執行委員長  城 政利

最低賃金の大幅引き上げを求める意見書

 1.私たちは、全国でタクシー・ハイヤー、自動車教習所、観光バス労働者を組織している労働組合で、組合員の9割以上はタクシー労働者です。その実情を紹介して、最低賃金を大幅に引き上げることを求めます。

 2.現在の地域別最低賃金額は、低額すぎて普通の社会生活を営むことができないといわれますが、タクシーでは、この最低賃金の水準に実際の賃金がはりついている地方が少なくありません。
 厚労省の2013年度の賃金統計(賃金センサス)によれば、タクシー労働者の全国平均の年収は261万円で、これ自体大変に低いですが、地方ごとにみると、所定内給与の時間額が最低賃金を下回っている地方が山口、徳島、長崎と3地方存在し、時間額が800円未満となっている地方が15地方もあります(図3参照)。
 これらの地方では、歩合給であるタクシー労働者の賃金を通常通りの〈営業収入×〇%〉という形で計算すると、最低賃金未満となってしまうことが多く、その場合、使用者に遵法意識があれば最低賃金との差額を補てんして最低賃金と同額が賃金として支払われることになります。もっとも、この業界では遵法意識のない使用者も多く、摘発されない限り最低賃金法違反の賃金支払いで済まされてしまう場合も多々あります。
 いずれにせよ、最低賃金の水準を一応の底として、この前後に実際の賃金がはりついているような状態ですから、最低賃金を引き上げることは、実際の賃金の引き上げに直接つながり、大きな影響を及ぼします。

図1
図2

 3.最低賃金法違反が恒常化している例として徳島県をあげると、図1のように、2007年以来7年間連続で、タクシー労働者の所定内賃金の時間額が最低賃金を下回っています。あまりにひどい実態であり、同県のタクシー業の最低賃金法違反の実態を精査して、早急な是正が求められるところですが、このような状況となっているのには、タクシー事業の営業収入自体が低いという背景があります。
 同県のタクシー事業の実績を示したのが図2ですが、みてわかるように、総営業収入が48億円しかないところに、1140台のタクシー、1401人の運転者がいて、運転者一人当たりの営業収入は344万円にしかなりません。これでは、まともな賃金を支払うこと自体が困難であることを認めざるを得ません。
 しかし、だからといって、「支払い能力がないので、最低賃金の引き上げは慎重に」という事業者の意見に与することはできません。収入に見合った設備・人員で事業を経営するのは事業者として当然であるにもかかわらず、徳島では総営業収入が10年間で34%も減っているのに、車両は13%しか減らず、運転者は逆に22人も増えているからです。
 つまり、運転者の賃金が歩合給であるために、営業収入が下がっても賃金も自動的に下がるので会社は赤字にならないというタクシーの特性によりかかって、必要な需要拡大も経営効率化の努力も怠り、規制緩和の時代には逆に車両を増やすことさえしてきた結果が現在の状況を生んでいるのです。仮に最低賃金が据え置きや少額の上昇にとどまれば、その最低賃金水準によりかった非効率経営が継続されることになってしまいます。

 4.現在、タクシー業界では「運転者不足」が大変深刻化していて、特に新たな若年労働者の確保が非常に難しくなってきています。運転者の平均年齢は60歳前後で、大半が60歳以上のもので占められているという状態であり、このままでは、あと数年もすればタクシーを運転するものがいなくなってしまいかねない状態です。
 若い運転者のなり手がいないのは、深夜を含む不規則な長時間労働にもかかわらず、賃金が安すぎることが最大の原因です。低賃金に依拠した経営モデルを根本的に転換することが必要であり、厳しい競争関係から自社のみでの改善を躊躇する事業者の姿勢を転換させるためにも、全国で法律によっていっせいに賃金を底上げする最低賃金の役割はたいへん大きなものがあります。
 中小零細企業の実態は前述のとおりですから、何の手当もしないで最低賃金だけを引き上げれば、多くの事業者で困難が生じる可能性があることから、中小零細企業への十分な経済的支援政策は当然必要です。
 そうした支援策と合わせて、思い切って大幅な最低最賃額の引き上げの目安が示されるよう強く要請するものです。

図3
以  上


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