2015.1.16 |
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国土交通省は昨年末、改正タクシー特定地域特措法にもとづく特定地域の指定基準案を公表し、1月25日までパブリックコメントを受け付けるとしました。この指定基準案はきわめて不十分なもので、自交総連は1月16日、以下の評価と意見を発表、パブリックコメントの意見も送付しました。
2015年1月 自交総連
1 国土交通省は昨年12月26日、「特定地域の指定基準案について」を公表した。自動車局旅客課は、同日から意見公募(パブリックコメント)手続きを開始し、締め切りは今年1月25日(必着)、制定・施行は1月中(予定)というスケジュールで作業を進めている。
指定基準が確定し、153の準特定地域の中から各種指標にもとづく指定基準をクリアする候補地域が抽出されれば、地域協議会の意思確認(同意)と、運輸審議会(国土交通大臣の諮問機関)の審査を経て、今春から夏ごろにかけて特定地域が決定されるとみられる。
【特定地域(供給過剰である地域)の指定基準案】
<2つの前提条件>
○ 適正車両数の上限値を上回っている準特定地域
○ 日車営収が2001(平成13)年度と比べて増加していない営業区域
<6つの基準(指標)>
以下@〜Eのすべてに該当していること。
@ 実働実車率が2001年度と比べて10%以上減少
※実働実車率(%)=実車率(%)×実働率(%)÷100
A 赤字事業者の台数の合計が営業区域内の2分の1以上
B 人口30万人以上の都市を含む営業区域
C 総実車キロが前年度比で5%以上増加していない
D 日車営収又は日車実車キロが2001年度と比べて10%以上減少(あるいは、法令違反件数又は事故発生件数の直近5年間の平均値が、全国平均値を上回っている)
E 準特定地域における協議会の合意
注)国土交通省「特定地域の指定基準案(概要)」をもとに作成
2 改正タクシー特定地域特措法の目的は、13年秋の国会審議でも明らかなように、特定地域制度の欠陥部分を補い、“強制減車”や営業方法の制限命令が合法的に可能となる仕組みや地域協議会の権限を高める方策の導入などにより、一日も早く供給過剰を解消し、運転者の労働条件改善及び安心・安全輸送の確保、事業の健全化を促進することにあった。
さらに、事業者団体等が重視していた4課題(@独占禁止法との関係、A減車における事業者間の公平性の問題、B下限割れ運賃の未解消、C特定地域指定解除後への不安)も、賃金アップを中心とする労働条件改善に寄与するものと位置付けられ、その問題の解決が期待されていた。
しかるに、特定地域の指定基準等のこれまでの策定過程にみられるように、その実状は、法改正本来の目的に適っているとは言い難い。特に、規制改革会議の圧力に屈し、“実効性のない名ばかり制度”に変質させてしまうやり方は異常であり、断じて容認できない。
仮に、仙台市、東京都特別区・武三や大阪市域など多くの矛盾を抱えている大都市部が恣意的に指定されないのであれば、法改正をした必要性が疑われることは必至であり、行政不信はおろか事業の健全な発展にとっての悪影響さえ生じかねない。また、指定されたとしても6つの指定基準のいずれかに該当しなくなった場合、指定の解除が即時行えるのであれば、労働条件改善の担保は無きに等しい。
3 自交総連は、「タクシー特定地域特措法の施行に伴う運用基準等の策定に関する要請書」(2013年12月18日付、国土交通大臣宛提出)で指摘しているように、「供給過剰の解消対策等に際しては、あらかじめ供給過剰の定義を明確にし、かつ判断基準については、変動する数値ではなく、『標準的な実働率(90%を基本)のもとで、実車率が50%を下回っている場合』など絶対的指標にもとづくべきもの」と考えている。
また、「運送収入が、安全輸送の根幹をなす適正な労働条件を担保するに足りる水準となっているかどうかも考慮される必要がある」ことは、再三、指摘してきた通りである。
国土交通省は、これらの指摘を真摯に受け止め、運用基準策定の在り方そのものの見直しをはかるべきである。
4 “労働条件改善の実効性が担保されない”など極めて問題の多い現状にある最大の要因は、結局のところ、“規制緩和政策失敗の反省をふまえ、必要な規制強化を基本とする根本的な解決策の方向を探る”という姿勢が欠如しているからに他ならない。
また、改正前タクシー特定地域特措法(旧称=タクシー適正化・活性化特措法)のもととなった交通政策審議会答申(08年12月)は、「タクシー事業をめぐる諸問題の対策として、現時点で必要と考えられる対策の考え方をとりまとめたもの」で、不十分さをもっていた。
自交総連は、現状改善の実効ある方策の一つとして「タクシー運転免許の新設」を提言している。国土交通省は、タクシーが抱えている諸問題の根本的解決にむけ、規制方式の在り方を含む検討を開始すべきである。
2015年1月 自交総連
(対象部分)
全体
(意見)
公表された特定地域の指定基準案は、法の趣旨を実現するには全く不十分であり、標準的な実働率(90%を基本)のもとで、実車率が50%を下回っている場合など絶対的指標にもとづき、かつ、運送収入が安全輸送の根幹をなす適正な労働条件を担保するに足りる水準となっているかどうかを考慮した基準に改めるべきである。
(理由)
「特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化に関する特別措置法」は、「(一般乗用旅客自動車運送が)地域公共交通としての機能を十分に発揮できるようにする」(第1条)ために、その機能を発揮することが困難となっている供給過剰地域を「特定地域として指定」(第3条)するというものである。その目的は、議員立法として法改正案が提案された際に、「供給過剰地域で、供給過剰を効果的に解消するとともに、運転者の労働条件の改善やタクシーのサービス水準の向上などを実現し、利用者にとってさらに安全で、安心して利用できる公共交通機関として進化させる」(法案提出者 金子一義衆議院議員)と趣旨説明されていた。
しかるに、指定基準案は不適切に厳しい要件を設けることで、指定されるべき地域が指定されず、供給過剰の解消がなされないことになる。法の趣旨を実現するために、指定基準は、運転者の労働条件を改善するにふさわしい実効性を伴うものとするべきである。
平成26年12月 自動車局旅客課
T.背景
本年1月に施行した特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化に関する特別措置法等の一部を改正する法律(平成25年法律第83号)に基づき、特定地域の指定基準を制定するものです。
U.概要
1.特定地域の指定
国土交通大臣は、適正車両数の上限値を上回っている準特定地域のうち、次の(1)から(6)のいずれにも該当する営業区域を特定地域として指定するものとする。ただし、日車営収が平成13年度と比較して増加している営業区域については指定しないものとする。
(1) 実働実車率が平成13年度と比較して10%以上減少していること。
(2) 次の@又はAのいずれかに該当すること。
@ 当該営業区域内の営業所に配置するタクシー車両の台数の合計のうち、タクシー事業に係る営業収支率が100%を下回る事業者が当該営業区域内の営業所に配置するタクシー車両の台数の合計が占める割合(以下「赤字事業者車両数シェア」という。)が1/2以上であること。
A 赤字事業者車両数シェアが1/3以上であって、前年度と比較して赤字事業者車両数シェアが10ポイント以上増加していること。
(3) 人口30万人以上の都市を含む営業区域であること。
(4) 総実車キロが前年度と比較して5%以上増加していないこと。
(5) 次の@からBのいずれかに該当すること。
@ 日車営収又は日車実車キロが平成13年度と比較して10%以上減少していること。
A 当該営業区域における走行100万キロ当たりの法令違反件数の直近5年間の平均値が、全国における走行100万キロ当たりの法令違反件数の直近5年間の平均値を上回っていること。
B 当該営業区域における走行100万キロ当たりの事故発生件数の直近5年間の平均値が、全国における走行100万キロ当たりの事故発生件数の直近5年間の平均値を上回っていること。
(6) 準特定地域における協議会の同意があること。
2.指定期間等
1.の指定は、原則として毎年1月1日を目途に3年を超えない範囲で期間を定めて指定するものとし、指定の延長は原則として1回に限って行うことができるものとする。ただし、指定期間中であっても、1.(1)から(6)に掲げる基準に該当しなくなった場合、国土交通大臣は指定の解除を行うものとする。
また、指定を解除する営業区域又は指定の延長を行わない営業区域にあっては、準特定地域として指定するものとする。
なお、当該指定及び指定の解除は告示により行う。
3.その他
平成25年度の各種指標に基づく特定地域の指定は、2.に定める期日にかかわらず、指定するものとする。
V.今後のスケジュール
制定:平成27年1月(予定)
施行:平成27年1月(予定)
◎リンク パブリックコメントの募集要項(受付期限の1月25日を過ぎると意見は送れません)
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