2016.5.20 自交総連情報タイトル

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自家用有償運送拡大の必要性はない
[特区法改正審議]
髙城委員長が意見陳述

髙城委員長
意見陳述する髙城委員長

　国家戦略特区法改正案を審議している参議院内閣委員会で５月19日、自交総連髙城委員長が参考人として意見陳述しました。髙城委員長は、外国人観光客の輸送を名目にした自家用有償運送を拡大する法改正の必要はなく、危険なライドシェアに道をひらくものであること、タクシードライバーは公共輸送を担う責任をもって仕事をしていることを述べました（下記参照）。

　労働者を代表する意見陳述は、内閣委員の日本共産党山下芳生議員の尽力で実現し、当日は自家用有償運送問題に限って山下議員に代わり辰已孝太郎議員が質問を行いました。

タクシーの安全規制、ライドシェアの危険性を確認

　意見陳述を受け辰已議員は、白タクがなぜ禁止され、タクシーにはどのような規制があるのかと質問。政府委員は、「白タクを認めると無免許営業につながり免許制度が崩壊するとの最高裁判例がある」「改善基準告示で労働時間を規制し過労運転の防止、安全を確保している」（国交省自動車局持永審議官）、「乗客の急な要求にも応えられる高度な運転技術が求められるため二種免許がある」（警察庁井上交通局長）などとし、タクシーの規制は乗客の安全と利便のため「必要かつ適切な規制」（持永審議官）だと述べました。

　辰已議員は、規制緩和の失敗の反省からタクシー活性化法ができた経緯を示し、ライドシェア合法化などの規制緩和は許されず、安全を経済効率の犠牲にしてはならないのではないかと聞くと、石破地方創生担当大臣も「それで結構です」と答えました。ウーバーなどが行っているライドシェアでどのような問題が起きているかを聞いたのに対し、持永審議官は「ライドシェア企業は運行管理、車両などに責任を負わず管理が不十分、事故の際の賠償も不十分で利用者を保護できない」と答え、ＩＬＯが各国内の運送業者と同じ規制の枠組みを適用するよう決議していること、アメリカ、インドで乗客に対する暴行事件が起きていること、ドイツや韓国で禁止の司法判断が出ていることなどを明らかにしました。

　こうした危険なライドシェアを認めることはないですね、との確認に石破大臣は「乗客の安全が確保されないものを認めることはない」と答えました。

特区で自家用有償輸送をやる立法事実（必要性）はない

　辰已議員は、特区法改正で実施しようとしている自家用有償観光旅客等運送事業について、現行の自家用有償運送制度も昨年の改正ですでに住民以外も運送できるなど緩和されている点を指摘したうえで、旅行者を乗せたら「乗客から急な停車や行先変更などの要求があり得るのではないか」と質問。持永審議官が「ないとはいえない」答えたのに対し、それならなぜ一種免許でいいのかと問うと、審議官は「講習を受けることで認めている」としましたが、講習は何日やるのかとの確認に「１日で修了する」と答え、十分な技術や安全が確保されない実態が明らかになりました。
辰已議員
質問する辰已議員

　このような制度を特区でやる必要があるのか、現行法でもできることを特区でやる立法事実があるのかとの質問に、石破大臣は「今後、外国からの旅行者を増やしていかなければならない。タクシーもないところで、新たな需要が生まれていく」と答えました。
　現行の自家用有償運送と新たな観光旅客等運送の違いについて持永審議官は、「現行制度は住民の足を確保するために発動する制度、今回の制度は観光客の足がない時に発動する制度」などと答えましたが、辰已議員は、制度を発動する際の必要性の判断が違うと指摘、従来は地域協議会で判断していたのを今回は特区区域会議が判断することになっているとして、バス・タクシー事業者と協議をしても合意を条件としていないが、協議が整わなければやらないのかと確認しました。石破大臣は「合意が得られるような状況をつくっていくことが重要で、反対を押し切って決めることを企図してはいない」と答えました。

　また、特区で実施した結果、観光客が増えて利益が出るようになり、タクシーが進出してきたときは、この制度は誰がストップするかとの質問に、石破大臣は「観光客が増えれば大変結構なことで、その時は区域会議が改めて判断する。タクシーでできるようになれば制度は必要ない」と答えました。

住民の足を守る乗合タクシーへの支援拡充を

　改めてライドシェアの問題に戻り、総務省が実施した消費者アンケートの結果を尋ねると、同省富永総括審議官が「自家用車による旅客運送を利用したい、してもよいと答えた人は22.9％、利用したくない理由で安全などに不安があると答えた人が64.0％」と答えました。辰已議員は、８割の人が利用しないと答えているようにライドシェアのニーズはないと指摘しました。

　観光客を乗せるというなら、二種免許を持ったタクシードライバーが運転することがふさわしいとして、髙城参考人に質問しました。

　辰已　オリンピック開催で需要が増える、これに向けて規制緩和をしようとされているが、実際、昭和39年の東京オリンピックの時の需要はどうでしたか？

　髙城　先の東京オリンピックでは、オリンピック増車が3567台と交通渋滞などの影響もあり需要は伸びませんでした。結果、経営が悪化し、免許返上する事業者も相次いだと聞いています。

　辰已　ということで、需要は増えてないのです。オリンピックでは、安全なタクシーに乗ってもらうことこそ本当のおもてなしではないか。地方ではタクシー事業者も努力していると思うが、乗合タクシーなどの事例を紹介してください。

　髙城　一つの事例ですが、山形県の三川町では、循環バスが定時運行していましたが、１運行で利用者は３～４人が通常でした。そうしたことからコストダウンとフットワークの良さ、加えて車が玄関まで着けるということで、タクシー会社が自治体と粘り強く交渉し、デマンド交通に切り替えたところもあります。町内ならどこでも300円で運行しています。

　辰已議員は、住民の足を守るためには、タクシーをもっと根付かせることが必要だとし、デマンドタクシー等への国の支援が30億円だが、もっと拡充できないのかと質問。国交省蒲生総合政策局公共交通政策部長は「デマンドタクシーの運行で欠損がでた部分を補助している。きびしい財政状況だが、平成26年度は30億円だったのを27年度は33億円に増やした」と答えました。

　最後に辰已議員は、「質疑で、特区法改正を行う立法事実はないことが明らかになった。石破大臣も安全が第一だと答弁された。だったら特区法改正やめるべきだ」と強調して質問を終わりました。

第190国会　参議院内閣委員会での意見陳述
国家戦略特別区域法の一部を改正する法律案（閣法53号）について

2016年５月19日　自交総連中央執行委員長　髙城政利

　自交総連中央執行委員長の髙城です。意見陳述の機会をいただき、大変感謝しております。

　１）まず、国家戦略特別区域法自体、憲法95条との関係で違憲の可能性も含んでいるのではないかと考えております。なぜならば地域指定など内閣の判断、行政の意思決定によって、他の地域と違う基準が当てはめられることになり、特定地方公共団体の住民が持つべき権利を侵害する危険性があります。したがって、特区法による規制緩和が安易に行なわれることは、国民の生命・身体・財産の確保に関わる事項については、より一層の慎重さが求められるのではないかということをまず申し述べた上で、今回の改正案について意見を述べたいと思います。


　２）衆議院での審議では、附帯決議が付されておりますが、厳密に履行されるのかが重要になると思いますのが一点。と言いますのも改正タクシー特措法でも附帯決議が付されましたが、充分には履行されていないというのが実態であるからであります。

　さて、道路運送法78条以下で例外的に認められている自家用自動車有償運送に関し、外国人旅行者等にまで拡張し、同法の特例を認めようとしておりますけれども、自家用有償運送を行なう場合、特定の者のみが有償運送を行なえ、旅客も限定されており、運営協議会による同意制度が義務づけられています。

　今回の改正案では、外国人観光客以外の者の輸送も排除していない。従来の範囲を大幅に緩和し、特区の区域会議で実施を決めれば、都市部においても自家用自動車有償運送を行なうことが可能になってくる危険性を含んでおり、乗客についての制限も無くなっています。これは輸送の安心安全を確保するため、厳格な基準を満たしたバスやタクシーで担われなければならないという原則が大幅に後退させられています。区域会議の構成員には、特定事業の実施予定者を加えるとしていることから、ライドシェア事業者が構成員となり、規制緩和の制度設計に関与していく事態も考えられます。そもそも外国人が多く訪れるような地域には、バス・タクシー事業者がすでに事業展開しているのが一般的で、むしろ供給過多となっています。「観光旅客の移動のための交通手段を主たる目的」として、「自家用有償旅客運送を認める必要性、すなわち立法事実は認められない」と主張します。先月、交通空白地と言われる兵庫県養父市や京都府京丹後市に組織として訪問してきましたが、外国人観光客の姿は無かったと報告されています。また、タクシー会社の無い地域では、制度化されているNPOや地方自治体による有償運送によって住民の移動手段を確保している地域も多く、一方でタクシー会社と地方自治体で協力、運行する乗合タクシーは、既に全国3000コースで運行しております。本改正案は、ライドシェアの全面的な導入に道を開くもので、ライドシェア解禁につながる法律案ではないかと危惧していますことを述べておきます。


　３）ライドシェアは、ＩＴ仲介業者が車両も持たず、マッチングするだけで、すべての責任はドライバー任せにする危険なものであります。ライドシェアは、輸送をしたい人が空いている時間を有効に活用し業務登録するなどと主張もしていますが、タクシー運転者は、道路運送法25条や運輸規則でアルバイト雇用、期間雇用が禁止されており、副業も禁止されています。これらはすべて安全の確保と旅客サービスの改善のためであることを強調しておきます。

　東日本大震災の時には、被災地仙台においてプロドライバーとして、公共交通機関を担う立場で、燃料が切れるまで被災者、住民の足を守り続けました。ライドシェアのドライバーにそういったことが出来るでしょうか。

　最後に、そもそも「ライドシェア企業の取締役であり、自らの利益になるような人が、規制改革によりライドシェアを推進する立場で産業競争力会議や新経済連盟など規制改革推進の中心にいること自体、常識的には許されないことだ。」と思います。最後にライドシェア解禁につながる国家戦略特区法の一部を改正する法律案は、廃案にすべきだとの意見を述べて発言を終わります。

　ありがとうございました。

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