3 歩合給に割増賃金を支払わないのは違法です

 【問い】入社以来、残業・深夜手当というのをもらったことがありません。会社に聞くと、歩合給に割増賃金なんてないと言われましたが…?

 【答え】賃金形態のいかんにかかわらず、割増賃金を支払う義務があります。

 このほど厚生労働省はサービス残業是正の通達を出しました。これは、とりもなおさずサービス残業(ただ働き)が横行している証拠です。働いたらその分の賃金をもらう――この当たり前のことも労働組合が権利として要求しなければ、ごまかされてしまいます。
 労働基準法は労働時間を1週40時間、1日8時間に制限しています(32条)。それを超えて働かせる場合には、使用者は2割5分以上の割増賃金を支払わなければなりません(37条、休日労働は3割5分以上)。
 ところが残業しても割増賃金が払われず、労働者も昇進や雇用への不安から時間通り請求できずに結局ただ働きになるケースがあまりに多いため、先の通達がだされました。
 タクシーの場合には歩合給が主体ですので問題はいっそう深刻で、割増賃金が一切支払われないという職場さえ、まれではありません。

 歩合給の割増賃金 

 歩合給の場合、労働時間を延ばせば水揚げも増えるのだから割増賃金は要らないと強弁する経営者もいますが、とんでもありません。割増賃金は賃金形態のいかんにかかわらず払う義務があります。
 計算方法は、
 歩合給総額÷総労働時間×0.25×残業時間(または深夜時間)
 となります。
 例えば、月に50時間の残業を含め224時間働き歩合給が20万円だったとすると、割増賃金は、
 20万円÷224時間×0.25×50時間=1万1150円
 となります。
 さらに、この中に20時間の深夜労働が含まれていたとすると、深夜割増は、
 20万円÷224時間×0.25×20時間=4460円
 となります。


 割増賃金を規定した判例

 (歩合給に割増賃金を含める〉支払方法が適法であるためには、歩合給の中のいくらが割増賃金に当たるかをそれ以外の賃金部分と明確に区別することができ、その割増賃金相当部分を控除した基礎賃金(これが通常時間の賃金に当たる。)によって計算した割増賃金の額と右割増賃金相当額とが比較対照できることが必要であるといわなければなら〈ない。〉
(89・8・10 高知地裁昭和62年ワ第666号割増賃金等請求事件)

 「歩合給に割増賃金を含む」という規定は… 

 「歩合給は割増賃金を含めて50%」などという規定をしておいて、50%に割増も入っているので、さらに追加して払う必要はないという会社がありますが、このようなあいまいな規定は違法で、割増賃金を支払ったことにはなりません。
 労働省の通達によれば、「割増賃金相当部分と通常の労働時間に対応する賃金部分とに区分することができ、かつ、割増賃金相当部分が法定の割増賃金以上支払われている場合は、労働基準法第37条に違反しない」「割増賃金相当額がどれほどになるのかが不明であるような場合および労使双方の認識が一致しているとはいい難い場合については、労働基準法第37条違反として取り扱う」(平成12.3.8基収78号の2)とされています。
 「歩合給は○%、うち△%を割増賃金とする」というように定め、その△%が実際に時間通り計算した割増賃金より高くないと違法ということです。
 この通達の基礎となったのは、高知地連高知県観光労組が89年にかちとった判決です(囲み内参照)。




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