自交労働者No.824、2013年6月15日

宣伝行動で自交総連への関心高まる

粘り強く闘争継続中

13春闘を中間的総括

第3回中闘

春闘中間総括などを確認した第3回中闘=6月4日、自交共済事務所
春闘中間総括などを確認した第3回中闘=6月4日、自交共済事務所
 自交総連は6月4日、第3回中央闘争委員会(第4回常任中央執行委員会)を都内でひらき、春闘の未決着組合の早期解決をはかることを確認するとともに、現時点での総括を行いました。

 春闘は、例年よりペースが遅く、まだ未決着のところがかなりあり、不当な乗務員負担の改善など引き続き粘り強くたたかっています。

 解決したところでは、解決金等の獲得、職場要求前進や政策課題での合意などをかちとっています。また、各ブロックで宣伝行動がとりくまれ、自交総連への関心が高まり、個人加盟組合への加入や既存組合での組合員増など成果も出始めています。

13春闘解決状況(6月11日現在)

 中間的な総括として、統一行動への結集の弱さや幹部交代で団体交渉のやり方や要求書、合意確認の文書がきちんとできないなど、弱点も直視して改善していく必要性が強調されました。

 名古屋地裁の最高乗務距離規制が違法との判決について見解(別項)を確認しました。

タクシーの最高乗務距離規制を違法とした名古屋地裁判決についての見解(要旨)

2013年6月4日 自交総連

1.名古屋エムケイが国を相手取りタクシーの最高乗務距離規制の妥当性を争っていた裁判で、名古屋地裁は5月31日、国が2009年に名古屋交通圏を新たに指定地域とし、最高乗務距離を定めた規制は違法とする判決を出した。最高乗務距離規制を違法とする判断は、タクシーの安全と乗務員の健康を無視した非常識な判断であり、極めて不当な判決といわなければならない。

2.タクシー運転者の賃金は歩合給であり、運送収入(売上げ)を増やそうとして無制限に走行すれば、スピードアップと長時間・過労運転となり、安全が失われてしまう。このため、乗務距離の上限が定められて規制されているのである。

3.エムケイタクシーの経営形態は「エムケイシステム」といわれる独特のもので、運転者に車両をリースしてリース料を徴収するシステムである。運転者は、リース料を超えた運送収入が自分の賃金となるために、自主的に長時間労働を行う傾向が強く、同地域の他社と比べて著しく長時間・長距離の運転をしている。

4.こうした危険な長時間・長距離運転が各地で広がる中で、国土交通省が指定地域の拡大と日勤勤務の場合の限度を定めたのが、今回裁判で問題となっている2009年の最高乗務距離の改正だったのである。
 名古屋においては、隔日勤務360km、日勤勤務270kmという最高乗務距離が定められた。名古屋市の法人タクシーの1日1車当たりの平均走行キロは188km(2011年度)であり、高速道路を走行した場合の距離は控除されるので、日勤270kmという限度を超えることは通常ありえず、むしろ長すぎるくらいのものである。
 この距離が、乗務員の労働する権利を制限するとか、自由な営業を制限するというエムケイの主張は、まったく自分勝手なもので、乗務員を危険な長距離運転・長時間労働に駆り立てている自らの経営手法に合わせて規制を緩めろと言っているのに等しい。

5.それを裁判所が事実上、容認する判断を出したことは、極めて問題が大きい。交通機関の安全、運転者の健康よりも営業の自由を上に置くかのごとき判決が許されないことは明白である。国は控訴して、改めてエムケイ等の実態も示して十分な主張を行い、控訴審で適切な判断が示されること、適切な規制が維持されることを強く求めるものである。

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受け取り良く職場訪問も効果的

宮城・岩手で宣伝、労働者ホットライン

東北ブロック

テレビ局2社も取材に入った電話相談=5月30日、いわて労連事務所内
テレビ局2社も取材に入った電話相談=5月30日、いわて労連事務所内
 【宮城】宮城地連は、5月21日の岩手宣伝にひきつづき、22〜27日には、宮城県内12か所で未組織宣伝行動を行いました。

 つづく28日には、東北ブロックと合流し、岩手県盛岡市での宣伝行動を再び実施、市内タクシー会社など7か所でビラの配布と対話を行いました。宮城地連・石垣書記長は「県労連が事前にタクシー会社を調べてくれて助かった。受け取りも良好で、職場の訪問は効果的だった」と感想を話しました。

 また、30日にはいわて労連において「タクシー労働者ホットライン」を実施し、東北ブロックの仲間といわて労連の5人が、労働者からの電話相談に応じました。タクシー乗務員からは「残業代の請求をしたい」「労働時間に際限がない」などの相談がありました。


会社の暴挙絶対に許さない

富士急東京本社前で抗議行動

石川タク富士宮

会社に向かって抗議する石川タク労組と支援の仲間=5月29日、東京・富士急行本社前
会社に向かって抗議する石川タク労組と支援の仲間=5月29日、東京・富士急行本社前
要請書を手渡す代表者
要請書を手渡す代表者
 【静岡】会社解散・全員解雇とたたかう石川タクシー富士宮労組支援共闘会議は5月29日、親会社の富士急行東京本社前で抗議宣伝行動を行い、支援の仲間約60人が参加しました。

 城委員長、東京地評の木原副議長、静岡県評の林議長が宣伝カーの上から訴え、最後にマイクを握った当該労組の諏訪部委員長は「前例のない乱暴な解雇で、偽装解散の疑いが強いと大学教授も意見している。このような暴挙が許されたら日本の労働者の人権はなくなってしまう」と怒りの声をあげて抗議しました。

 その後、参加者全員で会社に向かってシュプレヒコールを行い、代表者が要請書を提出しました。これまでの行動では受け取りをかたくなに拒んでいた会社でしたが、今回は素直に受け取り、「要請は上に伝える」との返答がありました。


最賃1000円以上に引き上げを

厚労省行動・国会請願デモ

最賃デー

シュプレヒコールをあげる東京の仲間=5月28日、厚労省前
シュプレヒコールをあげる東京の仲間=5月28日、厚労省前

 全国どこでも最低賃金を時給1000円以上に、労働法制の大改悪反対――全労連は5月28日、最賃デーを実施しました。

 朝から新橋駅、霞が関、東京労働局前で宣伝行動を実施。新橋駅前では自交総連の菊池書記次長が、最低賃金違反が続出するタクシーの実態を訴えて、経営者がもっと労働者を大切にしたうえで利益を出すことに努力するよう国が最低賃金を上げていくべきだと訴えました。

 厚生労働省前での行動には東京地連の仲間が多数参加してシュプレヒコールを上げました。日比谷公会堂での集会では、解雇自由化や残業代ゼロなど労働法制の大改悪の危険性が指摘されました。集会後、国会に請願デモを行いました。


適正車両数見直し等要求

運輸支局と交渉

鹿児島地連

要請書を手渡す杉原委員長(右)=5月24日、鹿児島運輸支局
要請書を手渡す杉原委員長(右)=5月24日、鹿児島運輸支局
 【鹿児島】鹿児島地連は5月24日、運輸支局との交渉を行い、地域協議会の早期開催と適正車両数の見直し等を求めました。

 地域協議会については、「九州運輸局の指導のもとにとりくんでいく。地区によって争点が違うので、今までの4地区合同開催を見直し単独開催の方向を模索したい」と回答。適正車両数については、「現在の車両数から引き上げられる可能性もあり、減車にとりくまない事業者についてはひきつづき監査を行っていく」とし、「現在適正車両数と乖離(かいり)があるため、4・13通達にもとづき検討していく」との回答がありました。事業主の違法行為については、「労働局と連携して合同監査を行い、12年度は無通告監査で14件の行政処分を行った」と回答があり、組合側は、乗務員負担金制度についても厳しく指導するように求めました。


疲れたけど達成感でいっぱい

泊り込み教宣学校

東京地連

講師の指導を受けながらパソコンに向かう参加者=5月26日、伊豆・日交伊東荘
講師の指導を受けながらパソコンに向かう参加者=5月26日、伊豆・日交伊東荘
 【東京】東京地連は5月26日〜27日、伊豆・日交伊東荘で泊り込み教宣学校を開催し、講師を含め14組合27人が参加しました。

 第1教科は、池田教育活動委員長が新聞作成のルールから文章の書き方までを解説。第2教科は、早川副委員長が「被災地支援のために」と題してミニ講演を行いました。その後、生徒2人に対し講師1人がつき、深夜までパソコンに向かって編集作業を行いました。

 2日目は、実際に作った新聞の校正作業を行い、できあがった作品を講評しました。大和王子労組の片岡さんは「明け方近くまでかかってやっと完成しました。疲れましたが、達成感でいっぱいです」と感想を話しました。


この成果を全国に

神奈川・三共自校労組

東京地裁が中労委命令を取り消し

一時金格差は不当労働行為

 【神奈川】三共自校労組は5月23日、組合員に対する賃金差別を不当労働行為と認めなかった中労委の命令を取り消すよう求めていた裁判で、東京地裁において命令取り消しの判決をかちとりました。

 三共自動車学校では、組合員の一時金が根拠なく低く査定されるなどの差別が続いており、10年1月に県労委で格差是正の救済命令が出たものの、11年3月に中労委で地労委命令を全面否定する逆転の不当命令が出されました。会社側の言い分をうのみにした異常な命令でした。

 判決は「一時金差別は組合活動の弱体化を意図して行った不当労働行為」と認定。県労委が差別是正のため平均の支給額との差額を組合員に支給することを命じたことも必要性と合理性があるとしています。

 今回対象となったのは07〜08年の一時金ですが、その後の一時金についても差別がつづいています。


安全運転の収入では生活保護以下

無理をしなければ生活できない実態

13年 安全運転実態調査

 今年の安全運転実態調査がまとまりました。この調査は、労働時間を守って安全運転で走行するテスト車と通常営業とを比較するもので毎年実施しています。

 【解説】今年の調査では、5都市平均でテスト車の運送収入が3万2944円と前年より9・7%増え、通常営業の運送収入も3万3877円で2・6%増えました。差は前年より縮まっています。

 前年より増えたとはいえ、テスト車の運送収入の水準は30年前の1983年の3万2615円と同程度です。規制緩和で大きく落ち込んだ収入が若干は回復したものの、依然として90年代には及ばないことがわかります。

 今年の調査(テスト車)から、安全運転で得られる推定年収を計算し、生活保護基準と比較したのが左の棒グラフです。5地方とも4人家族の生活保護基準に及ばないという結果となりました。特に宮城、大阪、福岡では足切以下で45%の賃率となった場合を想定すると最低賃金を下回ることになります。

 安全運転で、労働時間を守って働いて、生活できる賃金が保障されるのが本来、当然ですが、実態は無理をしなければ生活できない状態になっていることがわかります。


自交労働者と政治(2)

消費税増税 実施するかは選挙結果次第

大幅減収、賃金減の影響深刻

国民から取って、法人税は減税

 消費税の増税法案は、昨年の夏に民主・自民・公明三党の談合で成立しました。来年4月に8%、15年10月に10%にする予定ですが、実施は経済情勢で判断するという条項があり、安倍首相は参議院選挙の後の10月までに判断をするとしています。その判断には選挙結果が決定的な影響を与えます。

 消費税は、自交労働者の暮らしに大きな影響を与えます。

消費不況の深刻化

 97年に消費税が3から5%に上がった時、全国のタクシーの総営収は3年間で3700億円も下がって、運転者の年収は60万円も下がってしまいました(図1)。このとき以来回復することなく低迷が続いています。

 バスや教習所でも利用者が減り、売上げは大幅に減りました。

図1

営収から内税控除

 タクシー運転者の場合は、稼いだ営業収入に含まれる消費税が控除されて賃金計算がされるので大変です。図2のように、引かれる税額は倍になるので、仮に営収が変わらなかったとしても営収40万円なら8658円、営収が1割下がったとすれば2万6840円も賃金が減ってしまうことになります。

図2

 この大増税計画の一方で、法人税は逆に減税され、「世界一企業が活動しやすい国」(安倍首相)めざして、さらに減税する計画です。こうした手厚い保護で、大企業は内部留保を増やし続けています(図3)。

 こういう政治が続いていいのかどうか、国民の選択が問われています。

図3