2013.6.5 自交総連情報タイトル

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 自交総連は6月4日、第3回中央闘争委員会(第4回常執)で、名古屋地裁が5月31日に出したタクシーの最高乗務距離規制を違法とする判決について、以下の見解をまとめました。

タクシーの最高乗務距離規制を違法とした名古屋地裁判決に
ついての見解――安全より営業の自由を上に置く不当な判断

2013年6月4日 自交総連

 1.名古屋エムケイが国を相手取りタクシーの最高乗務距離規制の妥当性を争っていた裁判で、名古屋地裁は5月31日、国が2009年に名古屋交通圏を新たに指定地域とし、最高乗務距離を定めた規制は違法とする判決を出した。この判決はマスメディアでも数多く報道され、社会的な関心を呼んでいる。名古屋交通圏における新たな規制に限定したものとはいえ、最高乗務距離規制を違法とする判断は、タクシーの安全と乗務員の健康を無視した非常識な判断であり、極めて不当な判決といわなければならない。

 2.旅客自動車運送事業運輸規則では「運輸局長が指定する地域」で「乗務距離の最高限度を超えて」「運転者を事業用自動車に乗務させてはならない」と定めている(22条)。タクシー運転者の賃金は歩合給であり、運送収入(売上げ)を増やそうとして無制限に走行すれば、スピードアップと長時間・過労運転となり、安全が失われてしまう。このため、乗務距離の上限が定められて規制されているのである。
 この規制は、1958年に東京など当時の6大都市が指定されて以降、長い間見直されていなかったが、2002年にタクシーが規制緩和され、運転者の労働条件の悪化が進行、新規参入して長時間・長距離運転を容認する危険な会社が増えたことから、2009年に規制強化の一環として見直され、名古屋をはじめとする大都市が新たに指定された。
 同時に、従来の規制は都市部のタクシーに一般的な「隔日勤務」(2暦日にまたがる連続勤務で最大21時間拘束)という勤務形態に合わせて1乗務の最高乗務距離(都市ごとに異なり350〜370km)を定めていたのを、新たに増えてきた「日勤勤務」(1日で最大16時間拘束)に合わせて1日の上限距離(250〜280km)も規制されるようになった。

 3.エムケイタクシーは、もともと京都で営業していたタクシー会社で、規制緩和に合わせて名古屋をはじめ各地の大都市に進出した。その経営形態は「エムケイシステム」といわれる独特のもので、運転者に車両をリースしてリース料を徴収するシステムである。運転者は、リース料を超えた運送収入が自分の賃金となるために、自主的に長時間労働を行う傾向が強く、同地域の他社と比べて著しく長時間・長距離の運転をしていることは業界では周知の事実である。
 また、エムケイは、隔日勤務を採用せず、大都市部では異例な日勤勤務を採用している。日勤勤務ならば、どんなに長距離を走ったとしても隔日勤務の規制(京都の場合、2日分の上限が350km)を超えることは、まずありえない。
 今回の訴訟と類似の訴訟を各地で起こしているワンコインタクシーのグループも、リース制類似の経営で、日勤勤務を採る会社である。
 エムケイやワンコインなどの会社は、規制緩和を機に各地で新規参入し、他社より「安い運賃」を武器に拡大してきた。運賃を安くできるのもリース制ゆえで、運転者に課すリース料で常に一定の収入が得られる会社にとっては、運賃を低く設定しても収入が減ることがないのである。

 4.こうしたエムケイなどの危険な長時間・長距離運転が各地で広がる中で、国土交通省が指定地域の拡大と日勤勤務の場合の限度を定めたのが、今回裁判で問題となっている2009年の最高乗務距離の改正だったのである。
 名古屋においては、隔日勤務360km、日勤勤務270kmという最高乗務距離が定められた。名古屋市の法人タクシーの1日1車当たりの平均走行キロは188km(2011年度)であり、また高速道路を走行した場合はその距離は控除されるので、日勤270kmという限度は、決して短すぎるものではない。通常これを超えることはありえず、むしろ長すぎるくらいのものである。
 この距離が、乗務員の労働する権利を制限するとか、自由な営業を制限するというエムケイの主張は、まったく自分勝手なものであり、リース制によって乗務員を危険な長距離運転・長時間労働に駆り立てている自らの経営手法に合わせて規制を緩めろと言っているのに等しい。1日270kmを超えるような長距離運転をすれば、運転者には肉体的・精神的疲労がたまり、安全運行に悪影響を及ぼすことは明らかである。

 5.それを裁判所が事実上、容認する判断を出したことは、極めて問題が大きい。判決は、当時の名古屋交通圏では「無理な運転をしてまで乗務距離を伸ばす傾向があったとは言い難い」などと述べているが、エムケイは現にこの距離を超える運行をして処分されたのであり、リース制が必然的に長時間労働を促すこと、長時間労働・長距離運転が安全に及ぼす影響などが果たして適切に検討されたのか、重大な疑念を持つものである。
 交通機関の安全、運転者の健康よりも営業の自由を上に置くかのごとき判決が許されないことは明白である。国は控訴して、改めてエムケイ等の実態も示して十分な主張を行い、控訴審で適切な判断が示されること、適切な規制が維持されることを強く求めるものである。

以 上

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