2013.6.10 |
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自交総連埼玉地連八千代交通労組は、不当解雇を撤回させて職場復帰した組合員の有給休暇請求権を争ってきましたが、地裁・高裁での勝訴につづき最高裁でも2013年6月6日、会社側上告が棄却され、有給休暇の請求権があるという判決が確定しました。
八千代交通労組のAさんは07年5月に不当解雇されましたが、09年7月に解雇無効の判決をかちとり、9月に職場復帰しました。復職後に有給休暇届を提出したところ、会社は受理せず、休んだ日を欠勤扱いとしてきました。
有給休暇の請求権は労基法で前年の出勤率(出勤日数/全労働日)が8割以上の場合に発生するとされていますが、会社は、労働省の昭和33年の通達等を根拠に、解雇中の期間は全労働日に算入しない、労働日が0となる場合は有給休暇請求権は発生しないと主張していました。
11年3月23日にさいたま地裁、同年7月28日に東京高裁で、不当解雇中の期間は全労働日に算入し、かつ出勤したものと扱うべきとの判決を得ていました。
最高裁判決は、労基法が出勤率8割以上としているのは、労働者の責任による欠勤率が高い者を除外する趣旨で定められたものであるとしたうえで、無効な解雇による労働者の責めによらない不就労日は、使用者の責めに帰すべき事由による不就労日であっても、出勤日数に算入すべきものとして全労働日に含まれるものとすべきであるとしています。
これは、事実上、厚労省に行政解釈・通達の変更を迫るものといえます。
関連する行政解釈(労働省通達)◎昭33.2.13基発90号、昭63.3.14基発150号(要旨)年次有給休暇算定の基礎となる全労働日の日数は就業規則その他によって定められた所定休日を除いた日をいい、各労働者の職種が異なること等により異なることもあり得る。 なお、次に掲げる場合については全労働日に含まれないものとする。 一 使用者の責に帰すべき事由による休業の日 ◎昭27.12.2基収5873号(要旨) 懲戒解雇の日より会社の解雇の取消の日迄の間は使用者の責に帰すべき理由により労働することができなかったものと解すれば解雇の取消により復帰した労働者についての法39条第1項の全労働日の算定にあたつては、1年の総日数から就業規則により定められている年間の休日数の外懲戒解雇の申渡により労働することができなかった日数を差し引き計算すべきものと解する。 労働日が零となる場合は、前年に労働日のあることを前提とする法第39条の解釈上8割以上出勤するという法定要件を充たさないから、年次有給休暇の請求権は発生しない。 |
最高裁第一小法廷 平成23年(受)第2183号 2013.6.6言渡 金築誠志裁判長
担当=横山(法)横山佳純弁護士他
【主 文】
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
【理由の要旨】
1 本件は、解雇により2年余にわたり就労を拒まれた被上告人が、《解雇が無効との》勝訴判決が確定して復職した後に、5日間の年次有給休暇の請求をして就労しなかったところ、労働基準法39条2項所定の年次有給休暇権の成立要件を満たさないとして上記5日分の賃金を支払われなかったため、上告人を相手に、年次有給休暇権を有することの確認並びに上記未払賃金及びその遅延損害金の支払を求める事案である。
本件では、被上告人が請求の前年度において年次有給休暇権の成立要件を満たしているか否かが争われた。
2 《事実関係の概要=略》
3 《上告人の》論旨は、使用者の責めに帰すべき事由により就労することができなかった日は法39条1項及び2項にいう全労働日に含まれないと解すべきであり、《解雇中の》期間は全労働日から除くべきであってこれを出勤日数に算入する余地はなく、請求の前年度における全労働日が0日となる被上告人は年次有給休暇権の成立要件を満たしていないから、本件係争期間中の労働日を全労働日に含めた上でその全部を出勤日として取扱《う》とした原審の判断には法令の解釈の誤りがあるなどというものである。
4 法39条1項及び2項における前年度の全労働日に係る出勤率が8割以上であることという年次有給休暇権の成立要件は、法の制定時の状況等を踏まえ、労働者の責めに帰すべき事由による欠勤率が特に高い者をその対象から除外する趣旨で定められたものと解される。このような同条1項及び2項の規定の趣旨に照らすと、前年度の総暦日の中で、就業規則や労働協約等に定められた休日以外の不就労日のうち、労働者の責めに帰すべき事由によるとはいえないものは、不可抗力や使用者側に起因する経営、管理上の障害による休業日等のように当事者間の衡平等の観点から出勤日数に算入するのが相当でなく全労働日から除かれるべきものは別として、上記出勤率の算定に当たっては、出勤日数に算入すべきものとして全労働日に含まれるものと解するのが相当である。
無効な解雇の場合のように労働者が使用者から正当な理由なく就労を拒まれたために就労することができなかった日は、労働者の責めに帰すべき事由によるとはいえない不就労日であり、このような日は使用者の責めに帰すべき事由による不就労日であっても当事者間の衡平等の観点から出勤日数に算入するのが相当でなく全労働日から除かれるべきものとはいえないから、法39条1項及び2項における出勤率の算定に当たっては、出勤日数に算入すべきものとして全労働日に含まれるものというべきである。
5 これを本件についてみると、本件係争期間は、出勤日数に算入すべきものとして全労働日に含まれるものというべきである。したがって、被上告人は、年次有給休暇権の成立要件を満たしている。
《裁判官全員一致》
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