2013.7.11 自交総連情報タイトル

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 自交総連は7月11日、第5回常任中央執行委員会で、タクシーの行政規制を違法とする判決が続いていることについて、以下の見解をまとめました。

相次ぐタクシーの行政規制を違法とする判決について
――安全より営業の自由を上に置くことは許されない

2013年7月11日 自交総連

 1.大阪地裁は7月4日、ワンコイングループが訴えていた裁判で、大阪市域交通圏における日勤の最高乗務距離規制を違法とする判決を出した。6月27日には、東京地裁がロイヤルリムジンの増車申請を却下した国の処分を違法とする判決を出し、5月31日には、名古屋地裁が名古屋エムケイの訴えを認めて名古屋交通圏の最高乗務距離規制を違法とする判決を出している。

 最高乗務距離や運賃、増車、車両停止などの行政処分を違法としてタクシー企業が国を訴えている行政訴訟は全国で30件(東京交通新聞2013年5月20日付)あり、今後、国側敗訴の判決がさらに増えることも予想される。

 タクシーの規制を強化する方向で行われた国の行政のあり方が、裁判によって相次いで違法とされていることは異常な事態であり、タクシーの適切な規制の正当性に疑念を生じさせかねない。問題の本質を分析し、タクシーの安全と労働者の労働条件を守る立場から見解を示しておきたい。

 2.一連の判決に共通するのは、道路運送法や運輸規則、タクシー活性化法など法令の定め自体を違法とするものではなく、国が行った行政処分や規制が、法律等で定められた裁量の範囲を超えて、行き過ぎたものになっており、「営業の自由」を侵害しているという判断である。

 これは、2009年のタクシー活性化法施行の前後に相次いで強化された規制が、規制緩和によって生じた事業の混乱、とりわけ運転者の労働条件の劣悪化による安全・サービスの低下という異常な状況を収拾し、正常な事業環境を取り戻すために実施されたという大きな背景を見ない判断である。

 当時は、多すぎるタクシーによる交通渋滞や住民生活への悪影響、交通事故の増加と高止まり、運転者の健康破壊、生活困窮化など規制緩和による弊害が目に余るものになり、危険な長距離走行・長時間労働、乱暴運転、その背景にある供給過剰と低運賃競争を解消することが急務とされていたのである。一連の判決において、そうした状況が考慮されずに、「営業の自由」が「安全」や「労働者の健康」よりも優先されるかのような判断がなされていることは承服できるものではなく、上級審において改めて適切な判断が求められるものである。

 また、一連の裁判のうち約半数はエムケイタクシーやワンコイングループが訴えているものであるが、両社は、リース制や名義貸しで可能になった低運賃政策をとる会社であり、運転者の長時間労働は業界では知らぬ者のない存在である。規制緩和に乗じて全国に進出し、限られた需要を略奪して、地域の混乱を拡大した企業が利己的な経営政策の邪魔となる規制を取り払うために訴訟を提起しているのであり、その意図を容認するような判断となっている点でも、理解しがたいものといわなければならない。

 被告とされた国は、こうした点を立証して規制の正当性を主張しなければならないところ、訴訟対応に不十分で稚拙な点があったのではないかとの疑念もぬぐえない。

 3.同時に指摘しておかなければならないのは、2009年前後のタクシー規制強化の際の国の態度は、タクシーの規制緩和という誤った政策を取ったことに根本的な反省を欠き、需給調整と運賃の規制を放棄した道路運送法の改悪を元に戻すことなく、小手先と指摘されかねない通達等の改正で規制の強化に転じ、タクシー活性化法も、特定の地域・状況に限定した法律であったということである。

 自交総連は、タクシー活性化法が国会で成立した2009年6月、規制強化を歓迎しつつ、「誤った規制緩和を行った政治の責任を追及し、構造改革・規制緩和路線からの完全な決別」を求める声明を出した。ここで指摘したように、国は、規制緩和したこと自体は悪くなかったとして、その責任を回避し、道路運送法の再改正には手を付けないままだった。

 実施された各種の施策は、実質的に規制を強化するものであり、労働者・利用者の利益に適うものであったが、その規制の法的裏付けの不徹底さが、一部の企業が主張する「法的根拠もなく営業の自由を不当に制約する通達行政」などの理屈につけ入るすきを与えたといえる。

 4.一連の判決によって、タクシーの規制強化を敵視し、規制緩和に戻そうとする勢力が勢いを増すことは間違いない。しかし、これまでに出された判決は、タクシーの規制自体を違法としたものではなく、あくまでそれを運用する手法を違法としたものである。こうした判決を理由として、規制緩和を再来させることは許されない。

 むしろ国は、これまで不十分だった規制緩和政策への根本的な反省を行い、需給調整規制を放棄した道路運送法の再改正も含め、しっかりとした法的根拠をもつ規制強化策を進めるべきである。

 同時に、自交総連が主張している「タクシー運転免許」による新たな規制を真剣に検討し、タクシーの安心・安全、利用者利便向上のため、運転者の労働条件の抜本的改善がはかられる政策を実施するべきである。

以 上

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