2013.7.11 自交総連情報タイトル

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 自交総連は7月24日、来年度の地域別最低賃金の目安を審議している中央最低賃金審議会に宛てて、最低賃金の大幅な引上げを求める意見書を提出しました。


2013年7月24日

中央最低賃金審議会
 会 長 仁田 道夫 殿
 委 員 各 位

全国自動車交通労働組合総連合会(自交総連)
中央執行委員長 城 政利

最低賃金の大幅引き上げを求める意見書

 1.私たちは、全国でタクシー・ハイヤー、自動車教習所、観光バス労働者を組織している労働組合です。組合員のうちタクシー労働者が9割以上を占めています。労働条件が劣悪で最低賃金に抵触することも多いタクシー労働者の立場から、最低賃金を大幅に引き上げることを求めます。


 2.タクシー労働者の2012年の全国平均の年収は254万円です(厚生労働省「賃金センサス」)。とりわけ賃金の低い大分、徳島、高知県では、図1のように、統計上の所定内給与の時間額が当該年度の地域別最低賃金を下回るという異常な実態にあります。岩手以下の10道府県でも、所定内給与の時間額は800円を下回り、最低賃金との差もわずかとなっていて、これらの地方では大半のタクシー労働者が日常的に最低賃金に違反した状態で働いているということです。その他の都府県でも最低賃金法違反は非常に多くなっています。

 このためタクシー業界では、本来は労働時間である客待ち中の停車時間を休憩時間扱いにして総労働時間を短く見せかけ、賃金の時間額を高く偽装することで最低賃金法違反を免れるということさえ、少なくない事業者で行われています。こうした違法・脱法行為は、最低賃金法の趣旨を損ない、事業者間での不公平を拡大して公正な競争を阻害するものであり、きびしく摘発して是正させることが必要です。

 そのうえで、全体の底上げとなる最低賃金の引き上げが求められます。


 3.最低賃金を引き上げることは、相当数のタクシー労働者の賃金を直接引き上げる効果をもつだけでなく、低賃金を補うために長時間労働となり、交通事故の発生が誘発されるという事態を改善し、公共交通機関としてのタクシーの使命である輸送の安全を確保することにもつながります。

 ところが、タクシー経営者のなかには最低賃金の大幅な引き上げに反対する意見が強く、経営者の全国組織である全国ハイヤー・タクシー連合会は、本年7月4日に貴審議会に対して、地域別最低賃金の目安を示すにあたっては「慎重の上にも慎重にご審議を」との要請を行い、「賃金の引上げは、生産性が向上して初めて可能であり、決して先行するものではない」と主張しています。

 こうした意見は、経営者としての自覚と責任に欠けるものといわざるを得ません。

 現在、タクシーの職場では、賃金が低すぎるために、運転者の大半が60歳以上で占められるようになっています。全国の平均年齢は59歳、全国で一番平均賃金が低く年収166万円の高知県では平均年齢は全国最高の65歳となっています(前出、賃金センサス)。都市部においても、図2のように60歳以上の運転者の占める割合が、東京では50%、大阪では62%となっており、65歳以上も各々26、34%となっています。

 これは、タクシー運転者の収入だけで家族を養って暮らすことが困難なので、年金を受給しながら働く高齢者が大半になってしまったということです。若年者ならば、結婚も子育てもできず、将来設計も描けないという状態で、職場には、20〜50代の者がごく少なくなってしまいました。新しい若い労働力の流入がないまま、高年齢化は年々進行しており、このままで数年が推移すれば、もはやタクシー運転者として働く人自体がいなくなってしまいます。

 経営が苦しいから、最低賃金を引き上げないでくれというのは、低賃金に依拠して経営を維持している現状に安住し、労働者の生活の安定・向上、事業の将来展望をかえりみないものといわなければなりません。


 4.タクシー事業を取り巻く環境が厳しいのは事実ですが、その原因は、需要(乗客数)に対して供給(タクシー車両)が過剰であるにもかかわらず、減車がいまだに不十分な規模にとどまっていることに一因があります。それは、減車せず過剰な車両を保有していても一定の利益が得られてしまうということであり、利益を生み出しているのは、労働者の低賃金にほかなりません。すなわち、賃金が低すぎることが、経営者に生産性向上の努力を怠らせる結果となっているのが実情です。

 経営者は、減車等については事業者間の協調的とりくみが法的に困難であるということを最低賃金引き上げ反対のひとつの理由としていますが、最低賃金の引き上げこそ、すべての事業者に公平・平等に作用を及ぼし、引き上げられた最低賃金に見合う生産性の向上(減車)を促すことになります。低賃金・低コストに依拠して消耗的な競争を続けるのではなく、労働者に適切な賃金を支払ったうえで、経営者としての創意工夫を発揮して生産性を向上させる努力こそが求められるのではないでしょうか。

 誰にでも暮らしていける最低限の賃金を保障することによってこそ、若い労働者が魅力を感じ、将来に希望が持てる産業になるはずです。


 5.以上のことから私たちは、最低賃金を短期間に大幅に引き上げることを求めます。ただし、最低賃金の引き上げが、とりわけ中小企業に対しては経営上に大きな影響を与えることは事実ですから、適切な保護、助成策を設けることとあわせて行われる必要があります。

 一日も早く、全国一律に1000円以上の最低賃金が実現するよう、今年度においても、大幅な最低賃金引き上げと全国の格差が可能な限り縮小される目安が示されるよう、真剣な審議を求めるものです。

以 上

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